北の道31 凸凹三人組 Caridad 6/14 ルアルカのHotel La Colmena。6時半に起きて昨日買い込んだもので朝飯。さくらんぼ、コーヒーにサンドイッチ。一人部屋だと何時に起きて音を出そうが明かりを点けようが一切気にしなくていいのが嬉しい。この空間が全部自分一人のものだ。 7時半ホテルを出発。すぐ前の路上に日系ブラジルの女子がいたな。バックパックも背負ってなかったし一人で何してたんだろう、朝飯を食べるようなことを言ってたかな。すぐ急坂の上りが始まりえんやこら。20分上るとやっと町外れになって、そこから見る町の景色も中々のものだった。前にもここを上った筈だけど、そのときは薄暗い中に濃い朝もやが掛かっていたのでこの景色は記憶になかった。上りきるとこの町が谷底だったのが良く分かる。ここからの景色も素晴らしい。そこからは平らな道が続いていた。 今日はCaridadの公営アルベルゲを目指す。Caridadまでは30.5kmで、前回は朝もやを突いて出発したのに上段ベッドしか空きがなかった。今回はそれより遅い出発なので下段は最初から諦めているが、さてどうなるか。 山を降りて平らになった所にバルが2軒並んであった。ここでオランダのマルテンと外のテーブルでコーヒーを飲んだ覚えがあるので写真に撮ってみる。でも入ったのは隣のバル。コラカオ1.3ユーロを頼んで外のテーブルで持参のサンドイッチを食べる。ここに来るまでに腹の虫が鳴り出したのでグッドタイミングだった。 昨日会ったドイツの8人パーティーがバルの前を通りかかったので手を上げて挨拶。先頭は今日も健脚のおば様で、もしかしてこの人が全員を引き連れている添乗員なのかな?でも後ろに亀がいるので全体としたら亀。ドイツ語は3つだけ知っているので、今回も「こんにちは、ありがとう」と言って喜ばれる。私と話すのは今回も英語が喋れる一人だけで、他の人たちはそのやり取りをニコニコしながら見ている。お互いに英語ネイティブじゃないのが話が良く通じて良い。て言うか互いに難しい話できないから通じやすいのが本当のところだ。ドイツ人巡礼とは時々会うのであと幾つかドイツ語を仕入れておきたいな。 舗装路歩きになってきた所で前を行く二人のおばちゃん巡礼がフランス語でひっきりなしに喋っているので抜くときに二言三言話しかけてみる。フランス語は10個くらい単語を知っている。まず言う言葉は「サバ?」これは必ず通じる。二人は英語はまったく喋れなかったので地名くらいしか通じる言葉はない。ボルドーからやって来たことがわかったので、手でワインを(て言うか酒一般)仕草をしたらすぐボルドーはワインの有名産地と言うことが伝わった。日本は酒を飲むときはお猪口でクイッと飲む仕草で伝えるが欧米は小指と親指を伸ばして間の指は閉じたまま親指を口に持ってくとこれが酒を飲む仕草になる。これ簡単に通じるしフレンドリーになれるジェスチャーだ。少し一緒に歩いて先へ進む。 さて、舗装路を歩き続けてオバちゃん達がどのくらい後ろを歩いているのか振り返ると二人の姿が消えていた。え?見通しのいいこの道で消えるかな?てことは私は巡礼路の分岐を見落としたのかと気づく。感覚的に巡礼路が外れるなら左だと先入観があったので左の分岐ばかり気にしていたが、もしかしたら右へ曲がる道があったのかも知れない。地図ソフトを出して凡その方向を見定めると、このまま幹線道路のN-634を行けば先に行って巡礼路と交わるだろうと予測できる。じゃぁこれでオッケーなので車がやかましい道をずんずん歩き続ける。 案の定、次に見えてきたNavia の町で巡礼路に復帰できる。復帰祝いに川沿いのベンチでヨーグルトを2個食べて小休止。先の方を男の巡礼が歩いていたのでやっぱり巡礼路を見失ってこの国道を歩いてきたらしい。みんな同じようなことをやっている。食べ終わり歩き出すと突然子犬が足元で吼えたので、びっくりしてスティックを戦闘モードに持ち替えたら飼い主のおばちゃんが慌てて「大丈夫だからぶたないで!」と言うようなスペイン語と身振りで制した。吼える犬にはリードを付けとけよ。 道路の反対側を昨日のアルベルゲにあぶれたスペインの凸凹三人組が歩いているので手を振って挨拶。私と反対方面へ行こうとしているのでお昼でも食べるようだ。一人が大男でもう一人はとても小柄な男。二人は若く、それに年配の男が加わっていると言う本当に凸凹グループ。昨日、この人たちはどこに泊まったのか興味があるところだが道路を渡って聞くほどのこっちゃないのでそのままバイバイ。 町外れにやってくると大きな橋が現れて、あーこの橋は覚えてるなだった。でも橋を渡り終えて小さな村に入ると巡礼路を見失う。困ったな、分岐なので間違った方へ行ってしまうと修正が面倒だ。村人もいないし家もないので聞くことができない。勘で動くと危険なので運がよければ次の巡礼が来るかな。なんて考えてたら5分で巡礼の兄ちゃんがやって来た。初めて見る顔だ。これどっちかな?と手真似で尋ねるとスマホを出して確認してくれる。直進だった。良かった、感覚的には左折するのかと思ってたよ。ソリさんが良く見ていたようなアプリを入れてる巡礼が時々いるようだ。あれがあれば絶対に道を間違わない。この兄ちゃんは歩くのが恐ろしく早くてみるみる差が開いていく。 兄ちゃんのあとを追って行くと線路を渡るところがあって、ペンキで「A Santiago(サンチャゴへ)」と書かれている。面白いからそこの写真を撮ってみた。巡礼路には線路を渡る箇所が何度も出てくるが、日本のような遮断機を見た覚えがないので本当にスペインには遮断機ってないのかも知れない。「勝手に渡っていいけど跳ねられたら自己責任ね」ってことなんか。今度踏切があったら良く観察してみよう。 2時35にCaridadのアルベルゲ到着~。時間的に上段ベッドしか空いてないだろうと諦めてたが、なんと私が一番の到着だった。こんなこともあるんだな。希望の下段ベッドどころかコンセントが隣にある端っこの一番いいベッドをゲットできた。のんびりシャワー浴びながら洗濯もする。日当たりの良い裏庭に干したので簡単に乾いてくれるだろう。少ししたら町の中で会った凸凹三人組も到着してくる。やっぱり逆に歩いていたのは昼飯を探していたらしい。一番に到着できたのは運が良かっただけのようだ。 シエスタの時間だけど駄目元でスーパーへ行ってみると、これが開いていた。1リットルビールにOicosヨーグルト2、カット野菜、トマト2、りんごに生ハムまで買って4.33ユーロと格安なのが嬉しい。今日の公営アルベルゲが5ユーロで、途中で飲んだコラカオが1.3ユーロ。スーパー4.33なので合計しても今日の出費はたったの11ユーロで済みそうだ。昨日はホテルが20で買い物足すと30ユーロだったが、今日のを合算すると一日の目標経費20ユーロでオッケーかな。 のんびり食事していると、このアルベルゲの前を何人もの巡礼が通り過ぎて行く。あの歩くのが鈍いドイツのグループまで5時過ぎていると言うのにまだ先を行くそうだ。歩くのは鈍いけどすごい体力。さすが鋼のドイツ人だ。仲良くなった人たちが泊まってくれると嬉しいんだがな。みんなをブエンカミーノと言って見送る。 ここのチェックインは7時半なので寝てしまう訳には行かないのが辛い。それでも昼寝をしていたらやかましい話し声で起こされる。まだ7時前だがオスピタレラがやって来てチェックインが始まった。今の時間になってもまだベッドがガラガラなのには驚いた。時期としても3年前とほぼ同じなのだが、年によって日によってこんなに違うのか。 ここはベッドルームとテーブル1つだけの食堂兼談話室みたいのが仕切りなしでひとつに繋がっている。そこで初めて見る顔のスペイン親父二人が大声でずっと喋り続けているので寝ることができない。何しろスペイン語ってのは言葉自体がやかましいしスペイン人は大声で話したがる民族のようだ。そのうち一人が電話でも大声で長々と話し出したのが癪にさわってドアをバーンと勢いよく開け放して外で気分転換する。外のテーブルには凸凹三人組がいたので「ノイジー」と言いながら身振りでもやかましいことを伝えると同意してくれる。この三人組はちゃんと外でお喋りしていたが、巡礼が誰でもマナーを守る人とは限らない。 小柄な男はエドワルド、大柄なのはパウロで年配者はパブロと言った。一字違いなんだよと面白がっている。二人は30歳ほどに見えるが年配のパブロは73歳だった。若い二人は度を越したふざけ具合から同級生のようだ。二人とも面白いカメラを持っていてレンズが4つも付いている。このレンズで立体に撮れるそうだが、撮った写真が見られないので実感は薄い。たまに目にすることがある、見る方向によって見え方が少し違う写真のことかな?日本の住所を書いてくれれば写真を送るよと言うので書いてみるが本当にくれるかな?今度はノートの切れ端に何か書いてくれて、それをライターであぶったら消えてしまった。また冷やせば文字が現れるとのこと。そんな面倒なことしなくていいからちゃんと書いてくれよ。パウロの腕にはウルトラマンのタトゥーがあって、そんなギャグみたいなの大事な体に彫っていいんか!?こっちのタトゥーは可笑しなのがいっぱい。 明日はリバデオなので、リバデオ近くのカテドラレス海岸に行きたいんだと相談すると、電車もあるしタクシーもあることを教わる。日本にいるときから計画してて、カテドラレス海岸まで歩いて行って、そこから巡礼路に復帰する地図も作っては来たが、さてどうなるか。 北の道32へつづく |