北の道37  Tさんが合流 Baamonde

6/20 Vilalbaのアルベルゲを早朝出発し大通りを歩いていると道路反対側から「ウワーッ」と歓声が上がった。振り向くと仲良くなったドイツからの8人パーティーが私を見つけてくれて全員が手を振ってくれている。前日会った時に、「今回のCaminoはこれでお仕舞い。明日はホテルから飛行場に向かう。来年はまたここからスタートしてサンチャゴまで歩く」と話してた。ドイツへ帰るためにホテル前に集合していたら偶然私が通りかかったと言う訳だ。朝のラッシュで車が行きかっているから道路を渡って行くことはしなかったが写真は撮ることができた。あとから写真を見たら、みんなの顔がはじける程の笑顔だった。きっと今回の行程を見事に成し終えた充実感があるのだろう。更に、最後の最後にまた会えて嬉しいのはドイツの人たちも同じだろう。こういうのが後になって得難い思い出だったと分かるんだよなー。中央の赤いジャンバーの女性がいつも先頭でパーティーを引っ張っていた健脚の女性。たしかにそんな顔をしてるでしょ!?


 この通りには3年前にスペイン青年二人と夕飯と朝飯を食べたバルがあり、そこのおかみはカルメンと言う名前だと覚えている。メニューを手にニコニコしている写真もタブレットに保存してあるのでカルメンに再会するのを楽しみにして来たが、結局、店は見つからないまま通り過ぎてしまった。3年も経つと色んなことが変わっている。

 前はこの町の脱出で迷い狂ったことがあったけど、今回は二回目なので注意深く巡礼路への分岐を探す。やっぱり普通に歩いてたんじゃ見落としそうな角が分かれ道で、そこにあった表示もとても心もとないものだった。電柱みたいな柱の上に薄汚れたシールでホタテ貝があるだけ。ホントにここを曲っていいんかなーと心配になるほど。そこを曲っても矢印が出てこないし半ば勘で歩いて行くとやっと連続して現れるようになったのでひと安心。皆こんなんでもちゃんと見つけてサンチャゴを目指すので大したもんだよ。

 今日は最初のモホンに記してあったサンチャゴ迄の距離を覚えておいたので今日の宿泊地Baamondeまでの残り距離が分かる仕組みだ。現在地が118キロちょいなのでBaamonde到着は丁度100キロになる筈。ガリシア州に入るとモホンにはこのようにサンチャゴ到着までの細かい数字が記してあるので、こういう使い方もできるってことだ。今までやったことなかったが、これは使える。

 一度途中のバルでコラカオを飲んだ他は歩き続けてBaamondeのアルベルゲには12時半に到着。アルベルゲの鉄柵は施錠されてて庭にも入ることは出来なかった。先着の巡礼が一人外で待っている。隣のバルからTさん登場。フランスおばちゃん二人組みは8時ころに抜いたが、それ以降は抜かれてないそうなので、二人がバルにでも入っている時に私が抜いたんだと想像する。Tさんの命綱であるGPSの調子が悪いそうだ。これがないと歩けないので、明日から一緒に歩いていいですかとお願いされる。もちのろんです。

 おばちゃんと三人の女性が到着してきたので道端でお喋りする。凄く気さくな三人なのでTさんにカメラを渡して一緒に記念写真を撮ってもらうと、女の子は私の肩に手を回してきた。えっ!初対面なのに随分フレンドリーな女の子だなーと思ったが悪い気はしないのでそのまま。三人もこのアルベルゲに泊まるんだろなとその時は思ったが夕方になって気づくことがあった。

 明日からTさんとは一緒に歩くことになったので、アルベルゲも一緒に泊まることに。Tさん公営アルベルゲ泊まりは初めてと言うのでびっくり!私営は公営の倍の泊まり賃だ。北の道はもう一ヶ月以上歩いていると思うけど、随分と余計な金を使ってたんですね。チェックイン6ユーロ。Tさんに私が公営アルベルゲでやってるテクを紹介する。シャワー待ちがいるときは出来ないけど、シャワーを浴びながら一緒に洗濯もしてしまう技だ。まぁ技と言うほどではないがお湯で洗濯するので汚れの落ちが幾らか違うはず。早速実行している。

 シャワー後に隣のスーパーで1リットルビールにパン1袋、ヨーグルトにチョリソー。ガリシア州のアルベルゲは食器類が一切ないことが多いので、その為用にカップが欲しいからカップラーメンも購入。食べ終わったらこれは持ち歩く。キッチンに食器や鍋釜はなくても不思議なことに電子レンジはあるのでカップさえ持っていればチンしてコーヒーやスープが飲めるしビールもワインも飲むことができる。昨年思いついた生活の知恵だ。こんな小さな店でもカードが使えた。

※お役立ち情報
 固形石鹸で何から何まで洗っています。毎年、石鹸がちびてくると途中2回は買い足してました。今年はスーパーなどで使われているネットを持参して、石鹸はその中に入れる作戦にしました。理由は直接ジップロックなどに濡れた石鹸を入れるとひっついて扱いにくいから。これ、やってみたらすっごく便利です。みんな石鹸がちびてくるとシャワールームや洗面所に置いてってしまいます。オスタルも一緒に経営しているアルベルゲでは新しい小さな石鹸を客にいちいち提供していて、客が一度使った新品同様の小型石鹸が大量に置かれてたりしました。それらをネットに入れて使うと最後まで石鹸は買い足さなくて済んでしまいました。これ役に立たない?きちゃない?

 ここは小さな部屋が1階に3部屋の他、2階には大部屋がある。Tさんと小部屋に一人つずつ入って後から誰も来ないと快適だなーと思っていたら、私の部屋に(私のじゃないけど)自転車の若者カップルが入ってくる。昨日のアルベルゲでも一緒だったカップルだ。自転車なのに歩き巡礼と同じ距離しか走らないって一体どうやって走ってるんだよ、遅乗り競争でもやってるんか?!普通に走れば自転車は歩きの4倍5倍の距離を無理なく走れる筈。私は若いころサイクリングが趣味で山の中を1日200km走ったこともあるから良く分かる。一日20キロしか走らないのは、遅乗り競争はないとしてもきっとデート感覚で止まってお喋りしてる時間の方が長いんだろう。カミーノの楽しみ方は人それぞれだ。

 アルベルゲの外テーブルで飲み食いしているとフランスおばちゃんがやって来たのでビールを一杯飲ませたる。おばちゃん二人はこの小さな町の有名所も押さえてあって、木の祠が有名な教会へ行こうと誘われる。まぁ暇なんで付いていくと途中にお洒落なアイスクリーム屋があったら当然のように入っていく。おばちゃん好奇心の塊。付き合いでアイスクリームを食べる。教会庭の木の洞にマリア様が彫ってあって、これ結構有名のようだ。それを見終わったら今度は綺麗な川があるから行くそうだ。カワ~!?道路を遡って川を目指してる途中に駅があったら、そこも寄っていく。無人の駅だったし小さいのでここはお気に召さないようだ。川は幾ら歩いても出てこないので地元の人を捕まえて教えてもらっているな。ラッフィーはスペイン語ネイティブ並みなので道を聞くくらいはお手の物だ。川は別方向だったことが判明する。やれやれこれで諦めてアルベルゲに帰るだろうと楽観したらやっぱり歩いて行くそうだ。うーん、ここから別行動で帰ったら心証悪いよなと付いていく。ビーサンで出てしまったので余り歩きたくないのだ。川はそっから400mほど歩いたら出てきたのでまぁ良かった。水車小屋とか苔むした中ノ島なんかもあってさすがに綺麗。まぁ嫌々だったけど来て良かったかな。

 アルベルゲ近くまで戻ってきたら、昼間の妙にフレンドリーな女子三人がこれから出発する所だった。え、もう5時過ぎだよ!!驚いてラッフィーに「どこに泊まるんだろね?」と聞いたら「彼女達はキャンピング」と言ったので、ここでやっと2日前に庭でテントを張っていた母子だったと気づく。だから昼に会ったときに妙にフレンドリーだったのか。まるきり忘れていたけど彼女達は私を覚えていてくれたのだ。今晩はきっとあの綺麗な川の辺りにテントを張るのかなと想像する。彼女達がここに到着したのは私より少し遅れたくらいの1時ころだったので、ここで時間つぶしをしていたようだ。テントを張るのはやっぱり夕方からの方が人目に付かなくていいのかも知れない。ワイルドな母子をブエンカミーノと言って見送る。

 おばちゃん二人もスーパーで買出ししてきてTさん交えた4人でアルベルゲのテーブルで食べることになった。隣のテーブルにはソロの男性がいたので誘ったら喜んで合流してくる。メキシコの人だったのでラッフィーとは何不自由なくスペイン語で話すことが出来、英語も堪能そうだ。Tさんは初めてのサンチャゴ巡礼だし、こういう巡礼者同士の交流は縁が薄かったらしく凄く喜んでいる。心を開いてさえいれば巡礼同士はすぐ仲良くなれる。


北の道38へつづく