何ちゃって四国遍路旅1   いざ徳島へ
     2022年10月16日(日)~11月26日(土)



今から50年ほど前、当時の友達が四国遍路と言うものをやったと聞きました。その時から四国遍路と言う未知なる世界が気になっていましたが、一ヶ月以上も歩く旅は自分とは無縁なことと思っていました。やがて定年退職して自由になった身になりましたが、遍路に興味があっても(へっぽこ)カトリックである私が四国の皆さんからお接待という施しを受けるのは筋違いだから、行ってはいけないものと思っていました。だが、サンチャゴ巡礼で出会った日本人の遍路経験者二人は同じ事を言いました。四国遍路は宗派に関係なく誰が歩いても良いのだと。だったら私が歩いても良いようだと考えるようになりました。

四国遍路最大の障害は宿賃が高額なこと。サンチャゴ巡礼は公共の宿を渡り歩くなら一泊数百円で泊まることができます。四国ではそれが平均7000円は必要らしい。全部のお寺を50日で廻るとすると、35万円も掛かってしまい、飛行機代含めたサンチャゴ巡礼の総額ほど掛かります。だが、ことしは全国旅行支援と言うありがたいものがあって、宿賃が40%オフでおまけに宿泊者には平日で3000円、休み前日でも1000円のクーポン券が貰えるそうです。これで遍路最大の障害が取り払われるので行かない手はありません。

宿代以外でも良いことが沢山あるので自分を鼓舞する意味でもリストアップしてみました。
1,日本語が通じて文字も読める
2,郵貯、国民健康保険が使える
3,コンビニ、百均があるので何でも買える
4,犬が繋がれている(これ大事)
5,何かあっても簡単に帰ってこられる
とまぁ、色々な面で良いこと尽くめの気がします。

逆にマイナスな面があるとすれば
1,本物の遍路じゃない引け目があるかな
2,異国文化・外国人との交流がない
3,バルがない、ビールが高い
くらいでしょうか。


10月16日 遍路の旅初日
前橋出発の日。駅までバスで行こうとしていたが、息子が車で送ってくれました。数日前からシコクシコクと言ってたので送ってやろうと考えていたようです。

群馬から徳島行きの直行はないので、バスタ新宿で乗り換えなくてはなりません。前橋から新宿までのバスは予約したけどチケットは当日運転手から買うようなので一抹の不安があったが問題なかった。日本中央バスで新宿まで1800円。早い安い美味い!美味いは関係ないけど節約旅行者の私にぴったりです。


前橋14:20発で関越道練馬19:09通過してバスタ新宿19:45到着。都内に入ったら渋滞に捕まるかと心配したけど問題なかった。ここは熊野古道へ行くときに一度だけ来たことがあったけど、その時はバスから降りなかったので実質初めてのバスタ新宿です。待合室に行くと人がごった返していてワンワンしています。殆どが若者で、私みたいな年配者はいません。普通の年寄りは金持ってるので新幹線利用なんでしょう。

前に来たときはバスの中から眺めただけだったので、こんな賑やかな所とは思わなかった。長距離便の券売機が沢山並んでいて、ひっきりなしに「○○行きのバスが何時に出発します」とアナウンスがあります。ここに来れば特に予約なしでも遠くに行くことが出来そうです。

徳島行きに乗り換えるための待ち時間がそこそこあったので、ワンカップを持ってきたがここには禁酒の張り紙が!なんだ楽しみが無くなってしまったな。夕飯を食べたいけど待合室なので大した店もないことだしコンビニでおむすびを2個買って簡単に済ませました。暇つぶしにWi-Fiがあるかと案内嬢に問い合わせるとフリーのWi-Fiが飛んでいました。とても簡単・便利・無料。


新宿ー徳島はスマイルライナー6000円。新幹線の数分の1です。無職の強みで時間だけは湯水のごとく使えるので到着が遅いのなんか屁のカッパです。
徳島行き21:45のバスに乗り込みいざ出発。バスの予約時に3人掛けと4人掛けシートがあったけど、勿論3人掛けの方が少し高かったので4人掛けにしました。2列シートだと一人旅は2席独占の可能性あるなと期待してたが、ずばり的中。3人掛けより快適なバス旅になりました。


10月17日 遍路の旅2日目
まだ明けやらぬ徳島駅前に到着。バスターミナルは駅前だったので、すぐ駅構内に移動。始発が出る時間なのか、乗客はぱらぱらといました。さて待合室のベンチには菅笠を持った女性が一人。あ、いきなりお遍路さん見っけ。すぐさま話しかけると愛想の良い娘さんでした。区切り打ちで今回で何回目って言ってたかな?やっぱり仕事持ってる人は通しては歩けないよね。お互いにエールを交換してバイバイしました。


まず一番寺の霊山寺に行かなくてはならないので、霊山寺のある板東駅に向かいます。徳島駅からはそこそこの時間を電車に乗って板東駅に到着。さてさてここからは歩き旅の始まりです。小雨なのでバックパックから雨具を引っ張り出していると一緒に降りてきたらしいオバチャンが話しかけて来ました。普通の格好しているのでお遍路とは気づかなかったけど、今日から遍路を始めるので、心細いから誰かいたら着いて行こうと思っていた所に私が現れたと言うことらしい。徳島駅で私が女性遍路と喋っていた所も見ていたそうです。偶然ながら願ってもない出会いでした。

おばちゃんは手際よくこれから数日の宿は確保してあるとのこと。私は何にも用意してなかったので、駅前の公衆電話から取りあえず今晩の宿を確保すべく電話しました(携帯電話もってません)。狙っていた宿坊はダメだったけど、おばちゃんが予約済みの森本屋が取れたので一安心。ついでに翌日の宿を確保しようと11番に一番近い旅館に電話したけど満杯。でも二番候補の宿が取れました。ドミトリーのチャンネルカン。旅割り期待してきたけどどちらも旅割り未対応でした。全国旅割りって全ての宿で使えるモンじゃなかったのか、旨くいかんもんだのー。


板東駅でソロ遍路のご婦人に話し掛けられて、今日はずっと一緒に歩きました。まず1番寺の霊山寺でおばちゃんは遍路道具を揃えるようですが、私は寺を訪問しても写真を撮るだけで何もする気がないので買いませんが、おばちゃんは遍路グッズ一式を買ったようです。納め札、袖無し白衣、蝋燭に線香、納経帳に歩くのに必要な虎の巻まで買って6000円らしかった。その後もずっと一緒に行動して、朝飯はコンビニのイートインコーナーで海苔弁買って並んで食べました。二人とも良い年なので見てくれなんか構わないのが気楽です。

2番の寺ではソロのご婦人が熱心にお参りしている姿を目にしました。おばちゃんと「あの人信心深いんだねー」と感心します。私は寺に着いても写真を撮るだけですが、おばちゃんは遍路道具一式を買ってるので蝋燭に火を付けて線香も上げてます。般若心経は不慣れのようで黙読していました。それが終わるのを私は待ってるだけ。それでも寺に対する礼儀として、山門では最敬礼します。般若心経は唱えようと思ってるけど、そのカンペがありません。寺でくれるかと思ってた。


雑草が生い茂る遍路道もあって、これホントに遍路道なんかねーなんてブツブツ言いながらでも二人だから心強いです。4番の大日寺の帰りにソロで熱心にお参りしていた人とすれ違ったついでに遍路話に花が咲きました。明日以降、この婦人とは数日に渡って一緒に行動することになりますが、今はただすれ違うだけの人です。


5番の地蔵寺に到着。今日はここまでです。朝に予約した宿はこの寺のすぐ前にあるので探す手間がいりませんでした。チェックインは四時にしてくれと言われてたので、どこに行ってものんびりと過ごしました。そうこうしていたら、先ほど立ち話した婦人もやって来たので、ここでまたお喋り。婦人は別の宿を取っているそうで、ここまで迎えに来てくれることになってるそうです。境内にベンチがあったので、ずっと持ち歩いていたワンカップをここで飲むことにしました。バスタ新宿で飲み損なったワンカップですが、やっと出番がやって来ました。寺は酒のことを般若湯と言って飲んでも良いそうなので、私がここで飲んでも一向に構わないと思います(と良いように解釈)。

このご婦人とは明日は同じドミトリーなのが分かって互いに喜びあいました。更にあさっての遍路転がしを一緒に挑戦することになりそうですが、そこまでは約束してません。きっと明日の宿で相談になるでしょう。


二人で森本屋に向かい出すと、門の外に車が停まっていて運転していた人が立っています。あれっと思って「ご婦人のお迎えですか?」と聞いたらそのとおり。ご婦人もすぐやって来たのでグッドタイミングでした。もしかしたら携帯でお寺の到着時間を知らせてあったのかな?私は携帯持ってないので、その辺りのテクニックがどうも想像つきません。

森本屋は個室もあるけど私は急な予約だったのでドミトリーになりました。まぁ安い方が良いのでどんと来いです。それでも二食付けてくれると言うので有りがたいです。初日からコンビニ飯じゃなー。同じドミトリーにはシンガポールの青年と一緒になりました。片言英語で国際交流です。

私は歩いた後にビールを飲まないと気が済まないので、おかみさんにコンビニの場所を教えて貰ってぺたぺたと宿のサンダルを借りて行ってきました。コンビニにはイートインがなかったので、500ml缶を外で飲み干して空き缶はコンビニの空き缶入れにポイ。


夕飯は一カ所に集まっての会食スタイルでした。もっともドミトリーじゃ食べるとこないしね。急な予約にも関わらず、結構なおかずが揃いました。シンガポールの青年が慣れないリュックで肩が痛いとおかみさんに訴えたら、この女将さんはその道のプロでした。痛い所とは関係ない遠くのツボを押すのが不思議でした。



10月18日 遍路の旅3日目

今朝はスタート直後から私たち二人の他に、昨日午後から親しくなった広島の女性がやってきて、少ししたらシンガポール青年のジェームスが追い付いてきました。ジェームスの年齢が想像できないのでY子さんがダイレクトに聞いたら52歳と言うので全員ビックリ。30代に見えたよ。それからずっと4人で歩きました。お遍路って一人でもくもくと歩くイメージだったので、こんな大人数で楽しく歩けることを想像してなかったと言ったら、広島の女性も同感とのこと。

私とY子さんは互いの年齢を発表しあってますが、Y子さんが「K子さんは60代かと思ったけど、仕事してるらしいから定年前かねー?」なんてヒソヒソ言ってます。ところが、数日後にK子さんの年が分かって、定年前どころかまだ49才でした。もちろんそんな余計なことはK子さんには言いません。


途中には歩き遍路の休憩所があってありがたく椅子に座って休ませてもらいました。座布団も山積みになっているので、寝袋で寝ても背中が痛くならないでしょう。所々にこういったありがたい施設があるようです。ただここにはトイレと水が無いのでなぁ。

肩が痛いジェームスの理由は重いバックパックでした。一番の原因はタスキがけにしているズタ袋。これには遍路一式が入っていて、立派な遍路必携本、蝋燭、線香、ライター。それに女性二人が持っている御朱印帳より一回りも大きく立派な装丁の御朱印帳。着ている白衣もご婦人二人の袖無しと違い、高そうな長袖です。きっと言葉が分からない外国人と思って、一番高いのを売りつけられたんだよねと三人でヒソヒソ話しました。勿論、いまごろジェームスに言っても後の祭りなので言いませんが。


こちらはまた別の休憩所です。歩いていると突然あって、これ休憩所だよと言われるまで気が付きませんでした。こっちには自販機やトイレに水まであったと思います。まるで近所の子供のたまり場みたいな休憩所でした。


8番熊谷寺の山門に(写真)バックパックをおいて身軽に参拝するそうですが、本堂まではまだ500mくらいあるので大丈夫かなぁと心配になりましたが、一人だけ担いでいくのも何なんでお付き合いしました。


K子さんが御朱印をもらいに受け付けに行ったので着いて行くと、係の人の前で「いわゆるスタンプラリーですよ」なんて言い出したので、おぃおぃ書いてくれてる人の目の前で、そんな明け透けに言って良いのかいと思ってたら、係の人も気に入らなかったようで何かぶつぶつと言ってました。

全員のバックパックを無事に回収して9番法輪寺13時到着、K子さんは足のマメが痛いそうなので早めの手当てが肝心だよとアドバイス。さっさと傷ばんを貼っていました。次は本日最後の切幡寺へ。参道入り口の仏具屋さんにバックパックを置かせてもらって身軽になって参拝。


長い階段を上って参拝が終わって戻ろうとするとK子さんの金剛杖が間違われていました。握るところの袋が同じ赤だったので、誰か間違えてしまったようです。それ使えばいいんじゃない?と思うけど、K子さんは嫌らしく、お寺に納めようかなんて言い出してます。まぁ少し先になってから考えればいいでしょう。特に明日は遍路ころがしステージなので、杖は絶対に必要と思います。

Y子さん以外の3人は同じ宿を予約してあって、この宿は近くの寺まで送迎してくれるとのことなので、電話して来てもらうことにしました。Y子さんは明日の遍路ころがしは避けるとのことなので、これでお別れになりました。二日間お世話になりました。お陰でスタートから心強かったです。

4時半に茨城のY子さんが近くの別の宿に行き、残り三人は迎えの車で同じドミトリーに向かいました。今晩の宿は10番と11番の中間にあるので、明日は11番藤井寺まで送ってもらえます。明日は遍路最大の山場、12番焼山寺への「遍路転がし」に挑戦なので、少しでも体力温存できると有り難いです。

私とジェームスは6人部屋のドミトリーで、Y子さんのドミトリーは女性一人だったので個室状態でした。チャンネルカン素泊まり3300円。


シャワー後に三人で夕飯を探して町をうろうろ。宿の人に教わった食堂は休みだったけど、近くに昭和の雰囲気の定食屋がありました。親子丼500円と瓶ビール600円。ジェームスは痛風なのでビールは飲めないそうなのでY子さんに一杯飲んでもらいましたが、Y子さんグラスを倒してしまい一騒ぎありました。帰りにコンビニで明日の食料を仕入れて帰りました。

明日はいよいよ四国遍路最大の難所、遍路ころがしに挑戦の日です。無事に越えることができるでしょうか?

何ちゃって四国遍路旅2へ続く