何ちゃって四国遍路旅2 遍路ころがし:まともじゃありませんがな


10月19日 遍路4日目 チャンネルカン

今日は四国遍路最大の見せ場じゃなくて最大の難所「遍路ころがし」です。まぁ何がどうあっても4日目から避ける訳には行かないので挑戦しますとも。有り難いことに、今晩予約した宿「すだち庵」さんが重たい荷物はチャンネルカンまで受け取りに来てくれるそうです。私はどっちみち水のタンクはバックパックに入れて担ぐので、K子さんの水ボトルも私のバックパックに入れていいよってことでいざ出発。まぁスタートはチャンネルカンさんに13番藤井寺まで送って貰えるんですけどね。ジェームスは若いから我々とペースが合わないのが分かったようで後から出発することになりました。昨日買っておいたおむすび2個と飲むヨーグルトで朝御飯済まして7時に藤井寺に送ってもらいました。


藤井寺は朝早いこともあって、遍路の姿は一人しかいませんでしたが、すぐ欧米人の女の子がやってきました。凄いね、言葉も分からないのに一人でお遍路やってるよ。ここからの遍路道が分からないと言うので「おーばであ」と言って教えてあげるとさっさと山の中に入って行きました。

遍路ころがしは藤井寺の脇から始まっており、すぐさま山登りが始まりました。噂に違わぬ険しい道のようです。7時半から歩き始めて9時に水大師、9時半長戸庵。一休みしてまた歩き始めたが、何てことない一本道なので間違えようがない筈なのに迷ってしまう。どこで間違えたのか見当もつかない。それでも254号の舗装路に出たので、これを行けば流水庵で合流できるだろうと歩き続ける。


どのくらいのロスだったか分からないが12時20に無事流水庵に到達。この建物は地元の好意で歩き遍路のために建ててくれたものです。カギは掛かっていないので自由に出入りすることが出来ます。誠にありがたい。板の間に座り込んで残りのおむすびを頂きました。四国に来る前は、この流水庵で泊まる可能性が50%あると思ってましたが、来れば来たで何とかなってしまうものでした。


遍路転がしは6分の6が一番きつかった。上るための石に足を掛けるが、次に足を掛ける石を見極めながら上る有り様。余りに急角度なのでフーッと一休みするときに背筋を伸ばそうとすると仰向けにひっくり返りそうです。登りがそうなら下りも同じです。私は2本スティックなのでまだましだったけど、K子さんは金剛杖一本なので両手で杖を抱えるように体を支えながら下っていました。写真で見ると差ほどに見えませんが、これ岩がごろごろのすっごい急坂なのです。


16:40、二人ともヘロヘロの状態で焼山寺到着。トドメはこの長い石段でした。K子さんは納経してから御朱印もらうので納経所締め切り5時の直前なのでかなりギリの時間です。この寺は大きな宿坊があるそうなので、来る前はここに泊まれたら有りがたいと思ってましたが、今は団体しか泊めないそうです。歩き遍路の団体と言うのはいないので、むしろ此処まで青息吐息で到着する歩き遍路を泊めるべきだと思うのは私だけでしょうか?余計なことだと言われますね、はい済いませんでした。

やっと御朱印もらったけど、それで今日の仕事は終わりとは行きません。これから予約したすだち庵まで歩かなくてはならないんですよ。明るいなら下りの道なので何てことなかったろうけど、山の中なので既に薄暗くなっています。20分程歩くともう真っ暗。私はヘッドライト持ってきたけど、それはすだち庵に運んで貰っているので肝心のところで出番を逃しました。遍路ころがしがこんなハードなのとは想像してませんでした。どう転んでも(遍路ころがしだけに)明るい内に宿まで到達できると踏んでいたのです。

汗で濡れたシャツが冷たくなって来たので乾いたのに着替えて歩きだしたら何か違和感を覚える。あっ、メガネがない!!Tシャツを脱ぐときに一緒に外れてしまったようです。これは一大事、街頭ひとつない漆黒の闇の中でメガネを探しました。唯一の明かりはタブレットの光がたより。白内障で目も良く見えないので真剣になって手探りで路面をなぞり続けた末に、指先に眼鏡が当たった時は嬉しかった~。最悪、踏んづけて眼鏡を壊したらどうしましょうと不安だったのです。

月明かりも届かない山の中なので、本当にうっすらと道路脇の白線が見える程度で下の方に人家の明かりが見えたときはやったと思った。今夜の宿はこの集落に違いないのでそれらしい明かりを探しました。あ、あれじゃない!?うん、確かに部屋の明かりが他の家より多めなのでそのようです。するとそこから一台のライトバンが出発するところでした。もしかしたら我々を捜索に出掛ける所だったのでしょうか?当たりでした。到着が遅いのでK子さんのスマホに連絡を入れてたのに応答が無いので心配になって救助隊が出動するところだったのです。


18時半、なんとか無事に宿まで到着しました。男女別々の家に泊まるそうで、男の方は既にジェームスともう一人の欧米人が下段ベッドに収まっていたので、ヘロヘロ状態の今、上段ベッドは勘弁です。隣の布団部屋でも寝られそうなので、オーナーに言うと簡単にオーケー貰えました。マットレスや敷き布団はないので掛け布団を二つ折りにして簡易寝床の完成。頭がつっかえそうですが、上段ベッドよりは快適です。

シャワー浴びてから母屋に行くと、狭いキッチンでみんなで食べるようです。夕飯はカレーで、ここんちはこれが定番らしい。缶ビール3本買って1本は苦労を友にしたK子さんに進呈。洗濯もしてくれてビール3本込みで8000円だった。ドミトリーに寝て夕食カレーでこの料金は良い値段だな。まぁ重たい荷物は取りに行ってくれたことだし有りがたかったかな。文句を言うどころではないだろう。

キッチンに居たソロの婦人が飲み足りないのか、酎ハイを所望したら食器戸棚から焼酎とレモン汁みたいのでチャッチャと作って、はい450円と出したので、しっかりしてるなと思った。オーナーが続いて箱入りの日本酒を開けだしたので、これは飲ませてくれるんだなと意地汚く期待したが、自分だけ飲んでいたな。もしかして日本酒も一杯幾らで飲ませたかったのかな?


10月20日 遍路5日目 すだち庵

朝御飯はトーストと目玉焼き。値段の割にかなりシンプルです。すだち庵を出発するとき、宿の奥さんが「あ、それはもしや」と私がバックパックに下げていた黄色い矢印に反応しました。奥さんはサンチャゴ巡礼フランス人の道を歩いた人でした。私はスペインで貰った黄色い矢印とフィステラ海岸で拾ってきた小さな帆立貝をバックパックに下げてましたが、これに反応してくれたのは後にも先にもこの奥さん一人だけでした。

歩きだして少し行ったら間違えやすいからと注意されていたにも関わらず道を間違えました。近くにいた地元の人に教わっていると、すだち庵さんが車でやってきました。心配になってきてくれたそうですが、案の定間違えてました。


今日も良い出合いがありました。K子さんと二人で道端の分岐で協議してたら昨日、遍路道を教えて上げたデンマークのお嬢さんがやって来て、それから5時間を三人で一緒に歩きました。お嬢さんは少しだけ日本語が分かって、道ばたに立看があって「公衆トイレ」と書かれていると、トイレは分かるけど「これは?」と聞くのでパブリックだよと教えました。こうやって徐々に知ってる日本語を増やしているのでしょう。K子さんは外国人と話したことが一度もないと言うので、チャンスだから喋ってみなよとけしかけると、何歳ですか?と定番の英語を言ってました。

お嬢さんは通しで88番まで歩くそうです。私もその積もりで臨んでいるので、後でポシャルとも知らずに、私も同じだと偉そうに宣言しています。ジェームスと同じように長袖の白衣を着ているので、やっぱり一番高い遍路グッズを売りつけられたんだと想像しました。


村の雑貨屋でパンやミカンを買って道端に並んで座って食べたり楽しかったです。雑貨屋に栗羊羮があったので6個入りを買って二人に二個ずつ上げました。マリアナは羊羮初体験で、おっかなびっくり歯の先でかじって「おいしい」と言ってくれました。コロンビアの血筋が入ってるとかで、私程度のスペイン語を喋るのも楽しかった。サンチャゴ巡礼の北の道を歩いたことがあると言うのも親近感を感じました。それでスペイン語を覚えたのかな?

話しているとマリアナは私達より3つ先の16番まで歩くのが分かったので先に行くように変な英語で伝えました。三人でバグしてお別れしました。一人で歩きだすとやっぱり早いので、一緒に歩いたときは私たちに合わせてたようです。

後日、マリアナと知り合いの遍路仲間にマリアナのフェイスブックを教えてもらったので友達申請したら5秒でオーケーが貰えました。フェイスブック繋ぎっぱなしなのかな?ずっと後になってマリアナは88番まで歩ききったことをフェイスブックで知りました。


13番大日寺には3時15に到着。ここには写真のような一風変わった観音様がありました。どうやら大きな手を合わせた中に観音様がいるというのがテーマのようですが、私には座禅草にしか見えない。寺のベンチに腰かけている人は昨日のすだち庵で酎ハイを注文した婦人だったが、そう言われるまで気づかなかった。この人は九州は福岡からやってきたY子さんで、明日からは旅友になって行きます。

予約したかどや旅館は寺の隣だったので、今日は早い到着で楽だった。夕食は6時で食堂で食べますが、隣のテーブルの酔っぱらい爺さんが大声で手前勝手で偉そうな持論をずっとぶっぱなしてます。話し相手は宿のおかみさんなので邪険にもできないからイチイチ相槌を打つので益々絶好調になってます。ほんとやかましい。大分遅れてK子さんがやってきたが、止しゃぁいいのにK子さんまで話し相手を始めたので爺さん益々調子に乗り出した。とてもじゃないが付き合いきれないのでさっさと食事を済ませて自分の部屋に避難する。


爺さんは襖一枚隔てた隣りの部屋で、ずーっと独り言を言っている。頭に浮かんだことは全部口に出してしまうようだ。まったくはた迷惑な爺いだ。寝静まったかと思ったら今度はずっと寝言を言っていて、夜中にガチャンッと大きな音がした。なにかひっくり返したらしく、朝起きたら洗濯機に浴衣が掛けてあったので昨夜のガチャンで濡らしたようだ

何ちゃって四国遍路3へ続く