何ちゃって四国遍路旅3  宿は犬小屋サイズ



10月21日(金) 遍路6日目かどや旅館
5時半に起きてパッキングと足のメンテナンス。6時半から朝飯を食堂で食べさせてもらう。おかみさんがずっと話し相手になってくれて、昨日の爺が部屋で迷惑掛けなかったかと心配している。昨日の夕食時は機嫌良く相手しているように見えたが、実際は迷惑してたのか。部屋に行ってからもこうこうこうだったと愚痴をこぼして少し溜飲を下げる。宿代は瓶ビール1本つけても8000円だったので、爺の迷惑料で少し負けてくれたようだ。遅れてやって来たK子さんは夜中のガラガラガッシャンを「夜中に凄い音がしましたね」と気付いていた。同じ何でもK子さんが爺の隣でなくて良かった。話し相手をしてくれた女性がフスマ一枚隔てた隣りに居たら、ヘタしたら泥酔爺にフスマ開けられて訪問されたかも知れない。

7時15出発して8時5分に14番常楽寺。境内が一面ごつごつした岩で覆われている一風変わった寺だった(最初の写真)。ここですだち庵で酎ハイを追加して、昨日の13番でも一緒になったおばちゃんと連れの男性と一緒になる。夫婦かと思ったがソロ同士で一緒に歩いているだけだった。我々も端から見たらそう見えるのかな?それからは連れだってぞろぞろ歩き、15番国分寺に到着。みんなの納経が終わるのを待っていると、昨日の爺が高そうな白い車で乗り付けてきた。なんだ、遍路について偉そうなこと言っといて自分は車で廻ってやがるのか。口ほどでもない爺だ。まぁ私はニセ遍路なので人のことは言えないが。K子さんに、昨日の爺さんが車でやって来たよと伝えたら「あらまぁ」と言う顔をした。


四人でぞろぞろと16番観音寺、17番井戸寺と順調に廻る。井戸寺の遍路グッズ売場が充実していて、欲しいなと思っていた菅笠を数種類売っていたので被ってみる。小だと頭が圧迫されるようなので2500円の大を購入。これで私も何となく遍路に見えるかな。小は2300円なので、その差はたったの200円だった。

井戸寺には有名な井戸があるそうなので、寺の人に聞いて行ってみたが、その謂れを知らないのでただ見ただけだったが、この井戸を覗き込んで顔が写らない人は早死にすると言う物騒なものだった。覗かないで良かった。


我々がワハハとお喋りしていると、ソロの年配女性遍路がやってきた。痩せていて体も小さいからいかにも弱々しい。この人大丈夫なんかなと思ってしまう。話しかけるとこれまた心配になるほど今後の展望がはっきりしてないので、この人大丈夫かなとまた思った。その後、またしても道端で会ったので再度おしゃべりすると、今夜の宿がまだ決まってないそうなので、我々が予約したドミトリーに誘ったら一緒に泊まることになった。もちろんそれからは一緒にぞろぞろと行進する。


町中だけど狭い遍路道を歩いていると地元のご婦人数人が神社で立ち話してたのでどちらともなくお喋りが始まった。そのうちの一人が自宅からドリンクを持ってきて全員にお接待してくれた。初お接待だったのでちょっと感激。実は四国遍路の目的は二つあって、ひとつはお接待文化を体験することがあった。お接待って毎日のようにあるのかと期待していたが、実際には滅多にあるものじゃないのがこの数日で分かった。なので初お接待は尚更嬉しかった。みんな荷物を増やしたくない気持ちは一緒なので、その場で全員がぐびぐび飲んで空き瓶はありがたく返させてもらいました。そうだ、こう言う時には納め札と言うのを上げるんだと思い出し、全員が納め札を取り出す。納め札と言うのは寺を参拝したときに奉納する紙の札で、名前・出身地・年齢が書かれています。お寺の他にもこうしてお接待して貰ったら渡すもののようです。私はプリンタで印刷してきました。遍路の目的もうひとつは内緒です。気が向いたら後で書きます。


男性だけは別の宿を予約してあったが、残りの我々4人は全員が同じドミトリーなので今夜の飲み会を約束してそれぞれの宿を目指す。この写真の構図、ルーブルにある「復活の朝、墓へ急ぐペテロとヨハネ」に似ていると思うのは私だけでしょうか(だけでしょうね)。


17時くらい、本日の宿Hostel PAQに到着~。今回5日目にして初めて旅割りが使える宿です。受付で持参のワクチン接種証明書と身分証明書を見せてクーポン券2千円分をもらいました。本来は平日のクーポン券は3000円だけど、ここんちは宿泊代が2600円と安いのでクーポン券も安いらしい。でないとプラスマイナスでプラスの宿代になってしまうようだ。それでも実質の宿泊代は600円なので夢みたいだ。


ドミトリーは男女別々の階になってました。行ってみると今まで泊まったどのドミトリーより狭いベッドルームと感じる。犬小屋よりは少し広いレベル。まぁ値段が値段だから贅沢は言わないけどベッドが板でかこってあるから圧迫感が凄い。せめてカーテンなら少しは開放的なんだろけどな。サンチャゴのアルベルゲのように、むしろ開けっぴろげのベッドの方が私には良かったな。

シャワーしたけど洗濯乾燥が800円と高額なので洗濯はしないでおく。800円はちょっと高すぎだよ。時間になったので全員で決めておいた居酒屋を目指す。交差点にいたあんちゃんが声を掛けてきたと思ったらずっと付いてくるので気味悪かったが、我々の行き先が決まっているのを知ると姿を消したので、どうやら客を案内して手数料を貰う客引きのようだ。


目的の居酒屋には別の宿に行った男性が既に練習はじめていました。と言うことで本日のご苦労さん会の始まり。全員で名前と出身地を言って自己紹介から始まりました。何時間も一緒に歩いていたのに、みんなそれぞれの名前を知らないんだよね。男性はHさん千葉、すだち庵にいた婦人はY子さん福岡、初日から会っていたご婦人はK子さん広島で、最後に加わったのもK子さん大阪。皆さん年齢も開けすけに発表しています。やっぱり私が最年長でした。


料理の注文は皆さんに任せて、とりあえず生中です。大阪のK子さんの家族は今回の遍路をすごく心配していて、定期的に状況報告してるそうです。難しい状況になったらすぐに車の迎えが来るらしい。取りあえず今晩は大丈夫だよと連絡していました。家で心配している家族も、遍路に出た筈がまさか五人で宴会してるとは思わないでしょうね。その様子を広島のK子さんが珍しい物でも見るような目で見ています。K子さん夫婦はお互いに相手が何をしていようと無関心なので、尚更大阪のK子さんの状況が珍しいのでしょう。みんなが大阪のK子さんはお嬢様らしいと気がついて、「いとさん、いとさん」と呼ぶようになりました。実際に、K子さんの子供の頃は近所では「いとちゃん」と呼ばれていたので、自分はイトと言う名前と思っていたとかいなかったとか。


色々飲んで食べたけど、割り勘になったら幾らもしなかった。もちろん、全員のクーポン券の拠出があってのことですが。クーポン券ありがたいねー。このあと何回お世話になれるかなと期待します。


10月22日(土) 遍路7日目 徳島市のHostel PAQ

ベッドはしょうもないけど、このホステルには朝食が付いてました。トーストに各種飲み物に加え、一人1個茹で玉子までありました。ベッドのマイナス点挽回です。朝食は平均700円前後するので、このドミトリーは完全に無料で泊まれたと言うことになりました。なんて有りがたい。

この日、4日間を一緒に旅した広島のK子さんはチームを離れます。このドミトリーに二泊して整体に掛かりに行きたいとのこと。でも、二日後に我々が泊まる宿まで1日で歩いてしまうそうです。K子さんってそんな健脚だったの!千葉の男性も今日は帰ってしまうので別行動になるらしい。なので我々は今日から三人旅になりました。

国道とおぼしき道を歩いているとY子さんが「サングラスがない」と言い出しました。リュックからずた袋までくまなく探しても見つからないので、仕方ないからどっかで買うと言ってます。こないだ白内障の手術をしたので、眩しいからサングラスが必要だそうです。下を向いたまま探していたY子さんが顔を上げたのを見たK子さんが「それは違いますの?(大阪弁)」と指摘しました。サングラスは既に掛けていたんですよ。サングラス掛けて見える状態が普通だったので、掛けてないと思い込んだようです。サザエさんのマンガの現実版を初めて目にしました。三人で大笑い。


うどんが食べたいねーがこの後の合言葉になっていたところに、理想的なセルフのうどん屋さんが現れました。待ってましたと速攻で入店。セルフうどんはお盆を滑らせながら希望のうどんや天ぷらを載せていくスタイルで、地元群馬の丸亀うどん店でもお馴染みのスタイルでした。うどん320円、なす天150円、あげ120円。合計590円で四国のうどんを満喫できました。


Y子さんが遍路道を外れるけど、弘法大師とゆかりの井戸があるからと少し回り道をしました。昔、この地を訪れた弘法大師が村人に水を所望したところ、この辺の水はしょっぱいので上げられないと断られたそうです。仕返しなのか、弘法大師が杖で地面を一突きすると、付近一体の井戸水が全て塩辛くなって飲めなくなってしまったとか。弘法大師も大人げないことをしたモンです。弘法大師の偉大さを広めるための話なんでしょうが、逆に弘法大師をおとしめる結果になったんじゃないのかな。一年後に弘法大師が訪れた時に村人が井戸水が飲めなくて難儀してると訴えたところ、また杖で地面を一突きしたら元の真水に戻ったとかなんとか。一年も塩水暮らしじゃ生きていけないんじゃないのかな?川の水で凌いだんでしょうかね。て言うか作り話でしょ?

18番恩山寺手前に面白い建物があったので覗いていると千葉の男性H さんが追い付いてきました。今日の午後まで歩いてから千葉に帰るそうです。いつかまた続きを歩くんでしょうか?

この辺りはミカンの産地のようで、どこを歩いてもミカンが鈴なりです。大量に熟したミカンが落ちるがままになってます。これじゃぁこの辺の人は金だしてミカンは買わんわなと思わせる光景が続きます。Hさんが道端の無人販売でミカン一袋を100円で買ったそうで、みんなに2個ずつ配ってくれました。地元で買うとミカンは高いし、ミカンは好物なのでこの辺りに住んでたらミカン食べ放題だなと思った。


歩いていくとまた遍路休憩所がありました。こういうのがあると必ず立ち寄って休んで行きます。この遍路小屋、なにか謂われが有りそうなので後で調べたところ、おどろおどろしい物語がありました。興味がある方はぐぐって下さい。京塚庵とは「お京」と言う女性の名前です。

16:00、19番立江寺に到着~。ここで逆打ちをしているベテラン遍路さんとおしゃべり。やっぱり遍路を何周もしている人でしたが、それを鼻に掛ける風でもなく立派な紳士でした。これから先のお勧め宿を幾つも紹介してくれたので、いちいちメモするが結局これらは一度も利用しなかったな。Hさんはここから千葉目指して帰って行きました。

今日は土曜日で宿が取りづらい日だけど皆さんのお陰で宿坊が取れてます。携帯がないのは普段は不便を感じないけど、今回は宿を予約しながらの旅なのでちょっぴり不便です。それでも今更買う気はありませんが。

今日は今回の旅で宿坊初体験となりました。受付はまるで銀行の窓口みたいで坊主頭でなかったらここが宿坊とは気がつかない雰囲気。案内してくれるご婦人は地元のパートさんなのか至って親切です。無料で利用できる洗濯・乾燥機の場所を案内してくれたり空いている離れた風呂も教えて貰えました。我々は三人で受付したけどみんな一人部屋になりました。私の隣りには車遍路のご夫婦が入り、今日の宿泊はこの5人だけのようです。十人は楽に泊まれる大部屋が幾つもあるのにこれだけ空いているってことは、遍路自体が減っているのかな?


宿坊なのでおつとめがありました。風呂から出たところにパートのおばちゃんが待ちかまえたように迎えに来たのでおつとめは必須らしい。急いで本堂に入るとジャスト始まりました。みなさん小冊子みたいのを持ってるけど私はないので、本堂のどっかに置いてあるのかとキョロキョロしたが、部屋に戻るとテーブルの上に置いてありました。もうおつとめは終わったので必要ないだろけど、一応パラパラとめくってみると、欲しかった般若心経のページがあったので、そこだけ破いて持ち歩くことにしました。破いた残りはもちろん部屋のゴミ箱には捨てませんよ。お寺の人が見つけたらがっかりするので。

夕食は全員で一ヶ所に集まって食べたけど、コロナ対策で夫婦以外はみんな離れたテーブルとなりました。家ではご飯1杯しか食べませんが、おひつが置いてあるので必ず2杯食べます。歩き続けるには炭水化物が必要ですから。ビール1本付けて今日の宿賃7000円。夕飯がカレーなのに8000円のすだち庵をまた思い出しました。

何ちゃって四国遍路旅4へ続く