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何ちゃって遍路旅7 天使の歌声
こういう海岸線がずーっと続いています。室戸岬に向かってひたすら歩きます。無我の境地です。無我夢中です。
10月29日(土) 遍路13日目 サーファー御用達の宿
朝食は別棟のプレハブに移動しての洋食でした。こういうのはブレックファーストと言うのでしょうか。トーストと少しばかりの野菜にゆで卵。それとコーヒーです。やっぱり私は朝飯には和食が一番食べた気がしていいな。
S宿の支払いは旅割り40%引いても5300円+高いビール700円で合計6000円。クーポン券3000円もらってるので実質3000円か、今までの旅割り可能の宿で一番高いな。なんて、贅沢なこと言ってます。旅割り期間中じゃなかったら9000円も支払うんだもんなー、私じゃ出かけられなかったよ。
せっかく3000円ものクーポン券貰ってるけど、今日の行程には店がないのが分かっています!これは3000円が紙屑になる可能性大だ。車移動ならクーポン券が使える店までひとっとび出きるだろうが我々は歩き。とてもじゃないがそんな芸当はできませぬ。さてさてどうしたもんじゃろう。今日の悩みの種ができてしまったよ。
これがS宿さんの外観です。なんとも遍路に似つかわしくない洒落たデザインです。表にはサーフボードが何気なくディスプレイされてました。泊まったのは右側のちょっと茶色がかった建物でした。黄色い方にはレストランやお土産コーナーなんかがありました。足を怪我しているK子さんは、この宿で粘れるだけ粘って今日予約している民宿までバス移動することになったので、我々二人はそれぞれのペースで歩き出しました。
今日は宿の確保が難しい土曜日ですが、手頃な距離に民宿が取れたので良かった。これが海水浴のシーズンならきっと難儀したことでしょう。遍路を歩き始めたのが10月なのが幸いした。偶然だが遍路のシーズンは春と秋で、秋は10月から12月が最適らしいと遍路に出てから知りました。全国旅割りは10月スタートだったのでぴったんこ。これは行くっきゃないと出発したのでした。
もうずーっと右側は山で左は海の一本道を歩き続けます。一人旅でここを歩くとモチベーションが下がるだろうが、離れて歩いていても二人の道連れがいると思えば元気に歩いていられます。歩道がない所はちょっと怖いです。
歩いていると面白い物が目にとまりました。これ何だと思いますか?津波がやって来た時のための防波堤だそうです。この高さの防波堤が海岸沿いにずっと続いていますが、ここから海岸へ出入りするためにゴロゴロと開け閉めできるようです。東北地震の時の津波が十数メートルだったのを考えれば屁のつっぱりにもならないでしょうが、無いよりはマシなのかも知れません。
先の方まで見える地点に来ると、遙か彼方に飛び出た山が見えるので、あれが室戸岬なんかなぁと想像します。地図でも分かるとおり、何しろ室戸岬は地形の先端も先端なので一番出っ張っているならそれが室戸岬の筈です。余りに先まで見通せるのは良いような悪いようなです。
室戸岬まで24キロの看板がありました。徳島からだと111キロと表示されてますが、それは国道55号を車で走ってきた距離なので、寺から寺へとのたくって歩き回ってきた遍路道なら遙かに長いでしょう。室戸って鯨で有名なんだと初めて知りました。
クーポン券が使える店が無いかなーとずっと探しながら歩いてますが、ずっと歩いた佐喜浜町に唯一あった田舎のスナックに入りました。本当はこの手の店には入りたくないのだが、今日はお昼を食べようにもこの店しかなかったので仕方ない。と言うよりあってありがたい。入っていくと店の婦人がお昼を食べていたが、食べ物を持ってささっと奥に引っ込んで行きました。店にはもう一人男性がいて、この店のオーナーらしい。クーポン券は予想通り使えないそうだ。まぁそう思ったよ。店側もクーポン券を使えるようにするにはそれなりの手続きが必要なので、観光客が押し寄せるでもない店がそんな面倒をするわけがない。幾つもないメニューからカレー650円を注文する。
このマスターが話し好きでやたらと話しかけてくる。私は一応、遍路の菅笠を持った何ちゃって遍路なので話題が振りやすいようだ。マスターは昭和24年5月生まれなので、25年2月生まれの私とは同級だった。自分と同級の者が遍路を始めたことに驚いていた。自分なら絶対にやらないとのこと。まぁ私からしたら遍路やる人ってみんな年配者なので驚くことかな程度の感覚しかないが、受け取り方は人それぞれだろう。
ここでのんびり食べていればYさんが通りかかるだろうと窓越しに道路をちらちら見ていたが、相当のんびり歩いているのか結局食べている間は見えなかった。スナックを出て歩き出すと地元のコンビニがあったので、期待を込めてクーポン券が使えるか聞いたが、やっぱりチェーンのコンビニじゃないので利用不可だった、残念。滅多にない店なので食べ物を数点買い物しました。
向こうに見えるのはさっき通り越してきた佐喜浜町です。町と言うより村レベルのこぢんまりした集落でした。ここに妙な光景があったので写真を撮ってみました。どうも川と海とがドッキングする地点のようです。
4キロ歩いて今夜の宿「民宿ロッジおざき」14時に到着~。道端にあったので探す手間がなかった。昨晩の宿はサーファー御用達で遍路は場違いな感じだったが、今日の民宿は我々にピッタンコです。ここんちも旅割り可能の宿なので嬉しい。ここんとこ連続して旅割りの宿に泊まってられる。昨日もらった3000円のクーポン券が使える食堂も店も今日の行程には一軒もなかったので、民宿のおかみさんに「これこれこうなので、もしこのクーポン券使えたら上げます」と言ったところ、おかみさんが「うちで飲むビール代で使っていいですよ」マジですか!良かったー、最後の最後でクーポン券が無駄にならずに済んだ。おかみさんの言葉が天使の歌声に聞こえました(うそ)。
K子さんは既にチェックインしていて、バス停は民宿の目の前なので歩かないで済んだと喜んでいます。部屋の方は予想に反して一部屋に三人が入ることになっていた。おかみさんも戸惑っているので男女のグループとは思わなかったのかも知れない。まぁ二部屋をぶっこ抜いた広さがあるので悪くはないかな。もう既に壱TheHostel
で三人一緒の部屋を経験してるしね。72歳のK子さんも男女一緒の部屋は意に介さないようだ。正面二階に見えてる二部屋がそれで、目の前が海です。この宿は間口は狭めだけど奥行きがある建物でした。
取り合えず到着したらまず風呂だ。K子さんはバス移動だけだったので汗かいてないから先に入って良いと言うので入らせて貰い、洗濯は面倒見の良い宿のお兄ちゃんが引き受けてくれました。風呂上がりにはビールだ。おかみさんがクーポン券でビール飲んで良いと言ってくれてるので遠慮なくフロアにある冷蔵庫から勝手に出して飲み始める。いくつ飲んだのかは自己申告で良いと太っ腹。3000円分なのでかなり飲んでも飲みきれるものではないから気が大きくなっていて楽しい。
飲んでいる最中にYさんが到着する。Yさんもクーポン券使える所がなかったので3000円分まるごと持っている。これこれこうだよと伝えるとYさんも大喜び。K子さんはS宿で時間潰ししている間にお土産買ったので全額使い果たしたそうだが、二人分6000円のクーポン券があるので三人でも飲み放題だろう。楽しい楽しい。Yさんに三人一部屋だったと伝えたところ、こちらも意に介さないとのこと。部屋からは大きな引戸の外が広いベランダで、道路を挟んだ向こうが大海原になっていて眺めは抜群だった。
おかみさんが買い物から帰ってくると、キャンセルがあったので隣の3号室を使えると伝えてくれる。そりゃ良かった、気にしないと言ってもそこは男と女なので、いくらかの気遣いは必要だから別々の部屋が取れればそれに越したことはない。さっさと自分の荷物を3号室に移動させる。
夕飯は一階の団らんスペースで全員一緒だった。我々三人の他には二人の男性ソロ遍路がいた。料理は海が目の前なのでやっぱり魚主体の料理だから私はいつものように日本酒を戴き、二人はまたビールだったな。三人でかなり飲んだけど、6000円のクーポン券があるのでいくら飲んでも大丈夫。
10月30日(日) 遍路14日目 ロッジおざき
早朝、二人が声を掛けてくれたので海が見える部屋に入ると日の出だった。大きな窓の向こうには広いベランダまである部屋なので、朝日が上る写真を撮れた。海岸沿いを3日も歩いているのに日の出を見たのはこれが初めてだった。
朝食にはしじみ汁が付いた。貝の味噌汁しみじみ美味い。宿代は旅割り分の40%オフで4450円、うち洗濯乾燥が200円と良心的価格。おかみさんはビールが何本だったか勘定始めたが、クーポン券6000円分あったのを思い出したのか途中で勘定を止めてしまった。
団らんスペースには沢山の写真が飾られてあり、どっかの市長も泊まったようだった。チェックアウトの時に、親切な方ですねと私を誉めてくれたようだが、昨日、クーポン券を上げると言ったことを言ってるようだった。親切なおかみさんは室内でも帽子をずっと被っているので変わった趣味だな。天使の歌声のおかみさんとツーショットを撮って出発。
Yさん7時半、私は30分遅れて8時に出発する。今日はやっとこさ室戸岬に到達する日だ。K子さんは今日もバス移動で、バス停は民宿の目の前なので歩かなくて済むのがありがたい。私たちが室戸岬に到達する時間をめがけてバス移動するそうだ。幾日かこうして足を労っていれば良くなるかも知れない。そうならないとお互いに困るよ。
大きな岩をぶっこ抜いたように道路が続いていた。て言うか、本当にぶっこ抜いて道路を通したんだろう。ついでにここを名所にしちゃって岩にはしめ縄を渡して何とか(忘れた)と言う名前を付けた看板まで設置してあった。一石二鳥とはこのことか?石じゃなくて岩だけど。私としてもたまにこういった名所ぽいのがあると気が紛れて具合が良いです。
また遙か先に出っ張った山が見えだしたので、あれが目指す室戸岬かなぁと想像する。まだまだ先にありそうだが、数時間で到着する距離だろう。
また暫く歩くと、どうやら本当にあれば室戸岬らしいと分かった。小高い山の上に何か施設が見えるので、室戸岬の灯台かも知れない。この辺でクーポン券使える店がないと困るなぁ。室戸岬まで行けば幾らか観光地ぽくなっていて、使える店があるだろうと期待する。
ジオパークと言う施設があったので、無料だし入ってみましょう。ここは室戸岬の成り立ちとかを紹介する施設のようで、ビデオで室戸岬がどのように出来ていったかを見せてくれたので興味深かった。太古の昔に造山運動で海岸からごつんごつんとやってきた岩が段階的に室戸岬の高い断崖を形成したようだ。アニメで見られたので分かりやすかった。
この施設の目の前には遍路休憩所があって、二階建ての木造なので泊まることもできそうだった。遍路に来る前は、こういう施設でお世話になるとばかり思っていたが、あにはからんや(使い方あってる?)寝袋の出番がまだ一度もない。寝袋がないと重さは元よりバックパックの体積が減るので具合良いのだが、もしもを考えると送り返すことができませぬ。
国道から上がった所に弘法大師の巨大な像があった。後ろにはどうやら寝釈迦らしいのが寝ている。建物は寺と言うほどでもないようだし、テーマパークなんかな?
弘法大師が岩屋にこもって修行したと言うところがあったが、同じようなのが二つあるのでどっちがどっちだか分からなかった。特に入場料とかは要らないようなので入ってみました。
岩屋なので床も壁も岩だらけだから、ここで寝るのは背中が痛そうだなと思ったが、きっと干し草でも敷いて寝たんでしょう。結構な広さがあって、10人位は生活できそうだった。徳の高いお坊さんが岩屋で修業しているので、近隣の村人が食べ物を持ってきては「喰うかい?」と置いて行くので「空海」と名乗ったそうです。と言うのは嘘で、この岩屋から外を見ると空と海しか見えないので「空海」と名乗ったとか何とからしいです。
暫く歩くと、とうとう室戸岬の先端、高岡慎太郎像に到達。高岡慎太郎が海に向かって「日本の夜明けは毎朝来るんじゃき」と言ってそう。
30分前に出発したYさんに追い付かないまま室戸岬先端まで来てしまったので不思議だったが、このときYさんは幹線道路を離れて海沿いの遊歩道を歩いていたらしい。それで知らないうちに追い越していたようだ。室戸岬ってもっと観光地化してると思ってやって来たが、まったくそんなことはなくて、店と呼べるものはポツンとスナックがあるだけでした。ここでお昼でも食べるかと旅割りクーポン券が使えるかと聞いてみるもノーとのこと。旨くいかんもんじゃの。友達を捜すと言って食べずに出てきました。
今晩予約してある宿坊は山の上なので、どっから登れるのか探していると「展望台」と大きく書かれた看板がありました。展望台なら山の上にあるだろうと近くにあった事務所を尋ねると、この木で出来た3階建てが展望台だそうです。しょぼっ!
K子さんの乘ったバスがそろそろ付く頃じゃないかなとバス停の時刻表を見てみる。次のバスが12時41なので、きっとそれで来るだろうと自販機の缶コーヒーをベンチで飲みながら昨日仕入れたカステラを食べましょう。30分待ったが来ないので室戸岬のてっぺんを目指して歩き始めることにする。あれ?バスが今ごろやってきたよ。もしかしたら乘ってるかも知れないとじっと目を凝らして車内をみたけど、乗客は誰もいないようなので山道を上がり出す。実はそのバスにK子さんは乘っていて、私のことを車内から見て手を振っていたそうだ。まったく気づかなかった。
急な山道が遍路道になっていて、途中には薄暗い木立の中に東屋があったが、こんな気味悪いところで休んだり野宿する人いるのかな?次は小屋ほどもある大きな岩があったけど、これは弘法大師が何とかかんとかで手で捻(ひね)った大岩との伝説を後で教わった。弘法大師伝説、突拍子もないのがあちこちに転がっています。橋を渡るとき弘法大師が橋の下で寝ているかも知れないから金剛杖を突いてはいけないとか、そんなあり得ない事をいったい誰が創作するんだろう?私が創作した「喰うかい」の方がずっとひねりが利いてて面白いと思いませんか?そうですか、思いませんか。
24番最御先寺(ほつみさきじ)到着~。23番から4日も掛かりました。本堂にお参りして般若心経をもぞもぞと唱える。太子堂は毎回パスです。
ここまでやって来たら室戸岬灯台は外せません。歩いてすぐなので勿論見物に行きました。ここが台風シーズンになるといつもニュースにのぼる室戸岬かぁ~、目の前が全て海です。ぐるっと動画で撮りました。水平線が丸く見えるかなと見渡して見るもいまいちだった。左にハートマークがありますが「恋人の聖地」なんて書かれています。どんな根拠があるのでしょう?なんとも無責任なネーミングですね。調度その文句に乗せられたアベック(ふる)がハートの前で写真を撮ってました。
今日の宿は宿坊の「へんろ会館」に予約をいれてます。まだ大分時間があるけど場所だけ見ておきたいので寺の脇道を通って行ってみると、K子さんが既に待っていました。バスの中から私を見たことと、遍路道じゃなく自動車道を上がって来たことを知らされる。足の方は幾らか回復したのか、大して痛くなかったそうです。このまま快方に向かってくれるとありがたいな。
私の方は汗びっしょなので日の当たる方に移動するが、K子さんはこの日陰で待っているとのこと。寒くないのかな?日の当たるベンチでまったりしていると、Yさんがやって来ました。海沿いの道をのんびり歩いて来たそうです。中岡慎太郎像は見てないって言うから、室戸岬先端には行かずに手前の遍路道から直接寺に向かって上がって来たらしい。
ベンチに座ってやって来る人たちを見ていると、外国人グループに混ざって仰々しい坊さんの格好をした日本の若者がやって来ました。見るからに「ギャルお」なのでコスプレしてるのかな?
おへんろ会館15時にチェックイン。重い入り口扉のドアクローザーが機能してなくてガシャンと勢い良く閉まるので危険。子供の指なんか飛んでしまいそう。そのことをチェックイン時に伝え、ネジ2個を調整すれば直せるよと教えたる。この宿も旅割り可能の宿なのでクーポン券3000円分貰えるが、昨日貰ったクーポン券はここでは使えないそうだ。千円分が紙切れになった瞬間。昨日は休み前日だったので、クーポン券は千円だけしか貰えなかったのが逆に良かった。これは記念に持ち帰ることにする。
宿坊は通常9000円のところを40%オフで5520円。wi-fiはダメだった。近代的に見えてもwi-fiないんだな。宿もそこんとこは改善する気はないようだ。宿の自販機で缶ビールは買えたけど、食べ物が底をついてるのでコンビニで買った乾燥梅を肴にするしかない。明日はクーポン券が使える店で食料を仕入れたい。食い物で3000円は使いでがあるぞ~。
いま4時半で、風呂が5時からなので風呂待ちです。夕飯は6時から食堂でとのこと。風呂でこそこそ洗濯して部屋のエアコンで乾かす作戦をとる。エアコンさえあれば乾燥機はいらない。
夕食は食堂で。席に着くとおかみさんがやって来て、ドアチェックの調整してみたけど上手く行かないと報告してくる。でも調整はその二つのネジでやるしかないのでまたやってみれば?扉は油圧で動かしているので、オイルが漏れてると交換しかないけど、オイル漏れはないので治りますよと無責任なことを言っておく。もしかして私にやって貰いたかったのかな?
隣でご飯食べている爺様は遍路のベテランだった。今日は40キロも歩いたと鼻息が荒い。毎日30キロ以上を歩いていて凄い健脚のようだ。歳は80代らしいし、スーパー爺さんだな。たくさん読んだ遍路ブログでもベテラン遍路が何度も登場していたが、みんな四国を何周したかが自慢の種で共通していた。この爺様もそれが自慢らしいが、特別鼻に付くような言い方もしないので、聞いていて悪い気はしなかった。
この夜は寝汗をびっしょりかく夜だった。風邪引くと寝汗をかく体質なので、どうやら4日間の海岸線歩きで風邪を引いたようだ。こりゃまずいな。
何ちゃって遍路旅8へ続く
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