何ちゃって遍路旅8   町外れのビジネス素泊まり7000円

10月31日(月) 遍路15日目 最御崎寺宿坊
昨日の朝から咳が出るようになりました。四日間のあいだ海風に吹かれて歩いたので喉風邪を引いたらしい。昨晩は大量の寝汗をかいたので風邪決定。風邪を引くと必ず大量の寝汗をかきます。


最後に風邪を引いたのは2017年の銀の道を歩いた時とハッキリ覚えているので間違いないでしょう。それ以来5年も風邪とは縁がなかったので、年齢と共にもう風邪は引かなくなったのだと都合の良いように考えていました。なので長旅には必ず持参していた風邪薬と咳止めを今回に限り持って来なかった。ところがどっこい、そんなときに限って久しぶりに風邪を引くとはね。薬もないことだし、やれることと言ったら汗をかいた代わりに水を飲むことくらいしかできませんがな。


これなんだと思いますか?寝床から蛍光灯の明かりスイッチを引っ張るために自前の袋を繋げたものです。これだと起きあがらなくても蛍光灯を点けたり消したり出来るという優れものです。皆さんも真似して下さい。


食堂で朝飯を食べさせて貰いました。メニューは納豆、冷や奴に生卵に漬物と、日本標準の朝ご飯です。隣で食べていたスーパー爺さんはさっさと食べ終えて出発して行きました。足取りも若者みたいに軽やかです。我々もバラバラに出発。今日もご婦人二人から30分ほど遅れてスタートです。


こちらが本来の玄関でした。我々が昨日入ったのは寺側から入れる、いわば裏口だったようです。こちらには駐車場もありました。車用の道路を歩いて海岸線の遍路道に復帰です(トップの写真)。


これは何となく想像できると思います。そうです、津波が出たときに逃げ込むための避難施設です。こういうのが町内ごとにあるんじゃないかと思われるくらい頻繁に目に付きます。余りに多いので建設会社との癒着があるんじゃないかと疑ってしまいます。


こちらは最初に見たときは何のことだがすぐには分かりませんでした。何かのアトラクション施設かなと思いそうです。どうやったらこんな風に壊れるんでしょうね?大規模な手抜き工事でもあったんでしょうか?倒れる時は凄い音がしたろうなー。


2時間歩いて9時20分、25番津照寺到着。竜宮城みたいなお寺です。喉が痛いのでコンビニでのど飴を買ってみました。他にも室戸の町で残り2千円分のクーポン券を使えるだろうと期待しています。Yさんは程なく到着してきましたが、K子さんがなかなか来ないので迷ったかと思いましたが、通りの酒屋がクーポン券が使えたので全て使って大阪に送って貰ったそうです。使える時に素早く使ってクーポン券を無駄にしない心掛けはさすが大阪のおばちゃんです。

四国遍路道の多くは舗装路なので足裏が少し痛くなってきました。5本指靴下の上に厚手のソックスを履いてみようと3枚組靴下を買ってみるが、うち1枚が赤白の千鳥もようで恥ずかしいようだがこんな組み合わせしかないので仕方なしに買っておきました。チャンスに後ろ髪はないのだ。K子さんが早速この靴下を見つけて「可愛い靴下ですの(大阪弁)」と感心してくれました(感心か?)。


この辺りはカメで売り出してるのか、あちこちにこのようなカメのオブジェがありました。謂われには興味がないので調べることはしませんが、デザイン的には可愛いカメと言うのは伝わってきます。

一人で歩いているので金剛頂寺の登り口が分からずに、村から外れた幹線道路を歩いて村を通り越してしまいました。仕方ないので村に戻る道を探しましょうかね。道端に村の小さな郵便局があって、タイミング良く女性の局員さんが外にいたので寺への道を教えて貰えました。結構複雑そうな道なので、遠回りで良いから分かりやすい方を教えてもらいました。


次の分岐には遍路用の休憩所があって「お遍路さん休んでください」と看板もあるので中に入っていくと、道路工事の兄ちゃんが弁当を食べていました。こんちはと一声かけてゴソゴソ食べ物を探していると兄ちゃんは気が引けたのか、そそくさと出ていってしまいました。遍路用の休憩所を利用してたら本物の遍路がやって来たので悪いと思ったようです。まぁニセ遍路なので遠慮はいらないんですけどね。この休憩所はトイレの他にも色んなものが揃っていて、地元の会社が個人で作ったものらしい。危篤な人がいるもんだ。四国に長年根差したお接待の心なのでしょう。ミタニ建設工業さんありがとうございます。


山道をえっちら登って金剛頂寺到着~。寺には車遍路のお姉さんが一人いて、歩きですか?と声をかけ誉めてくれました。ニセ遍路ですとはイチイチ言いません。


一応お参りを済ませて寺の裏から山を通り越して下り道になったら、矢印が途中でぷっつり消えてしまいました。こういうところが遍路道って不備なんだよね。人里ならまだしも、山の中で案内がないのは困ります。分岐では見当付けて歩くしかないが、こっちかと歩いていくと個人宅専用の道で人んちにしか通じてなかったりするので、また逆戻りを二回繰り返して本格的な下り道になりました。


まぁ地理的に下って行きさえすれば幹線道路に行き着くはずだからそれほど困ることもないでしょう。落ち葉が降り積もって荒れた道なので、どうやら遍路道からは外れているのは分かりました。それでも目指していた道の駅キラメッセから600mくらい後方に出られたのでまずまずかな。何か由緒ある神社の前だった。

道の駅で何か食べようと思って近づいて行くと、今日は休みでした。先行した二人のおばさまも見当たらないし、自販機でトマトジュースを飲んで今晩の宿、ホテル奈半利を目指します。この道路は55号なので路線バスが走っています。このまま奈半利まで歩き続けると暗くなってからの到着なのでバスを利用することに決定。バス停の時刻表を見ながら3つのバス停を通過して、このバス停で待っていれば丁度良い時間にバスが来るだろうと待つことしばし、ちゃんとバスがやって来ました。この辺りのバス停は道路片側にしかバス停がないので、私が乗る側には停留所がないが、ここいらはこういうものらしい。ちゃんと何もない所で立っていたらバスが停まってくれました。


バス旅プロの太川さんが良くやっていたように、信号待ちで止まったのを見計らって運転手さんにホテル奈半利に行くにはどこで降りたら良いのか教えてもらうと、想像していた奈半利の町中じゃなくて、みっつ前の法恩寺バス停だった。聞いて良かったこと。運ちゃんは法恩寺手前になったら手で合図をしてくれたので無事に降りることができました。降りるときに親切にありがとうございましたとお礼を言うのを忘れない。旅先ではやたらとありがとうを連発しています。運賃は760円だったので、結構な距離を走ったようだ。歩いたら2時間位は掛かったかも知れない。


ホテル奈半利はバス停から見えていたので探す手間が省けました。近づいて行くと4階の窓からK子さんが身を乗り出して「みちおさーん」と手を振ってくれてるのが見えた。なんだかちょっぴり嬉しい。チェックインでワクチン証明と身分証を見せてクーポン券3000円をゲット。このホテルはレストランを併設しているので、聞いたらやっぱりクーポン券使えるとのこと。このホテルが旅割りに乗じて便乗値上げをしたと思われる宿で、発行したクーポン券をレストランで回収して親の総取りと言ったところか。しっかりしてるね。素泊まり7000円のところを旅割り40%オフで4200円。クーポン券3000円引くと実質1200円で泊まれるので誰も便乗値上げだなんて言わないのだろう。


部屋のレベルは普通のビジネスと同程度だが、朝食は付かないので一般のビジネスホテルより高い。しかも観光地でもなんでもない田舎の町外れのホテルで素泊まり7000円だよ。気が引けないのかね?旅割り終了したら値下げしないと誰も泊まりに来ないと思うよ。

夕飯は6時から1階のレストランで。すぐK子さんもやって来て同じテーブルになった。高知なので鰹の叩き定食が食べたかったが、今日は入荷してないとのことなので何の芸もないヒレカツ定食を注文する。定食1750円と土佐鶴の熱燗440円。合計2190円をクーポン券2枚に現金を足して支払いました。

K子さんは明日も大事をとって「民宿とうの浜」までバス移動にするそうです。明日は一日雨らしいので今からどよよんとしている。このホテルには大浴場があるとのことなので、エライ長い距離を歩いて入りに行ってみました。余りに遠いので帰ってくるまでに湯冷めしちゃいそう。


11月1日 遍路16日目 ホテル奈半利

また寝汗を掻かいたけど、昨日ほどではなかった。コンビニで買っておいたランチパックとスティックコーヒーを部屋で飲んで朝飯とする。雨で気が重いので遅めも遅めの8時40出発。最遅時間を更新しました。


久し振りの雨、風邪引いてるのでフリースを着た上にカッパを着込みました。着るものを3枚送り返しちゃってるし、数が少ないからみんなグッチョグチョ状態になってしまった。困ったな、今晩の乾いた衣類がないよ。

道端にローソンがあったので、風邪薬がないかと入っていく。コンビニじゃ薬は売れないのか、何もなかった。せめて体力向上に高いドリンクを2本買ってみる。元々風邪に直接効く薬なんてないって話だし、結局体力を付けて自己免疫力を付ければ風邪は治るんだろう。それと体力向上には白牛乳とヤクルトだ。


少し歩いていくと今度は本物の薬局が現れた。レディと言う薬局なので女性専用かと思いそうだが入っていくと至って普通の大型店舗だった。ルルアタックCプレミアムと言う、いかにも効きそうな薬を買ってみる。さっきのコンビニと合わせてクーポン券合計3000円も使ってしまった。風邪さえ引かなければ出て行かなかった金だよ。


雨の日で困るのは屋根付きでないと休めないことです。雨足は相変わらず強めなので休めるところがないかなーと歩いているとおあつらえ向きのバス停があったので飛び込む。私の雨具はいつものレインスーツの上だけだけと、ビニール袋の底を抜いたのを履いてます。見た目はアレだけど背に腹は代えられない仕様です。

雨の日の強い味方、ビニールを掛けた大きな菅笠は雨の日には持ってこいです。この菅笠、欲しくて買ってはみたものの、実際に被ってみると微妙に頭に当たる部分があって痛いのが分かりました。まず針金で固定してあるのが頭に当たり、被る部分の細い竹がまた痛い。それに加えて風の影響をもろに受けることも分かりました。一般的な帽子は風に対してふにゃふにゃとフレキシブルに対応できるが、菅笠には一切そういう柔軟性はなかったのですよ。風のときは笠の端っこを手で押さえてないとバッカンバッカンと首を持ってかれる。ちゃちな針金で固定してあるので強風で簡単に壊されそうなのも厄介だった。と言う訳で、雨の日以外はバックパックの背にくくりつけて拾ったサファリハットばかり被るようになっていました。折角高いの買ったけど、出番は今日みたいな雨の日だけ。


今日のお寺は27番神峰寺(こうのみねじ)。寺までの急な山道が通称「まっ縦」と呼ばれる寺なので、予約した民宿に重たいバックパックを預かってもらって攻める作戦です。雨の中で宿に到達するとホッとするものだが、今回はそこから一仕事あるので嬉しさも半分と言うところです。宿は年配の男性が一人で切り盛りしてるようでした。これこれこうなのでとお願いすると、いつものことなのか、じゃぁそこに置いといて良いですよとの応え。私は水のタンクをバックパックの背中に入れてるので丸ごとは置けないから中からあれこれ出してソファーの上に置かせてもらい出発。婦人が一人もう登り出しているとのことなので、Yさんが出発してるのだろう。


ただ、お昼を食べてないんだよね。このまま山に入るのはシャリバテの危険があるので、村の雑貨屋に入って何か腹に溜まりそうなのを物色すると、プラケースに入った芋の天ぷらが目に止まりました。これなら腹持ちが良さそうだ。天ぷら一箱お買い上げ。これで取り合えずシャリバテは避けられそうだ。村を過ぎてぐんぐん山の中に入っていく。


確かに遍路道はまっ縦と言う感じだが、近くに自動車道があるので、そっちを歩くなら大したことはありませぬ。登山道には真っ白い沢蟹がうじゃうじゃ居たのでジブリの世界みたいで気味が悪かった。


まっ縦を堪能したので自動車道路に出たところで、もうまっ縦はいいや。そこに上手い具合いに東屋があったので小休止兼ねて天ぷらのお昼にする。また歩き出すと上からK子さんが下って来た。先に上ったのはYさんじゃなくてK子さんだったのか。足の具合はどう?と聞くと何とかなっているようだ。バイバイして寺を目指す。


寺はだいたいどこでも山の上にあって最後は階段がお約束。この寺もその通りだった。寺の写真に奇妙な白い棒が写ってますが、雨粒です。


長い石段にうんざりしながらお参りを終えて下山し出すと今度はポンチョ姿のYさんが上ってきた。Yさんも長い登りの途中に私と会って嬉しそう。私はこのあと、道を間違えてしまう。あれー?おっかしいなぁと思ったが、どうせ下って行けば55号に出るだろうと大して心配もせずに降りて行ったが民宿からは大分離れた所にでた。ガソリンスタンドがあったので、尋ねてみるとスタンドのお兄ちゃんは運良く民宿を知っていて教えてもらえました。民宿からは想像より離れしまって800mほど外れていました。民宿の手前には店じまいしたスナックらしき建物があって、ブログで読んだ荷物を預かってくれるドライブインらしい。


チェックインしてまず最初に洗濯。洗濯乾燥がおわらないと乾いたフリースが着られないので侘びしい。フリースは私が持っている唯一の防寒着なのです。寒っ。他の物は部屋に吊してエアコンの風を当てて乾かす作戦です。宿にはどこもエアコンがあって有りがたいです。


3時を過ぎるとYさんが戻ってきた。みなさん雨の中を良うやるね。風呂に入ってさっぱりしたところで定番のビールが飲みたいので、芋天ぷらを買った雑貨屋に赴く。芋の天ぷら旨かったよとお愛想を言ってビールが有るかと聞くと「最近はお遍路さんが来ないので仕入れてあるかなぁ?」と冷蔵庫を探すと運良く2つあったので買い占めることが出来ました、600円。本物のビールって滅多に買わないので値段が分からないんだけど、350ml缶って1本300円もするの?それは置いといて、お愛想が効いたのか紫芋の天ぷらを酒の肴にと少し貰えました。なんでも言ってみるもんだ。高い風邪薬を買ったけど効いているのかいないのか、結局、帰宅するまで風邪は治りませんでしたがな。


夕飯は食堂で素朴な料理。おいちゃんが一人で切り盛りしてるんだから、これが精一杯なんだろなと思った。ビールはさっき飲んだので、珍しく夕飯にビールは頼まなかった。

今夜も寝汗をたっぷりかく夜になってしまった。バスタオルや浴衣に吸わせてエアコンの風を当てたり工夫して凌ぐ。叶わんなぁもう。


何ちゃって遍路旅9へ続く