何ちゃって遍路旅9   これぞ遍路道

11月2日(水) 遍路17日目 民宿とうの浜

昨日の雨が嘘のような晴天です。雨の中を歩くのはしんどかったけど、あれがあるからこそ今日のこの天気が有りがたいと感じるんでしょうね。ずーっと晴天の中を歩くんなら有りがたいもクソもないもんね。でも、どちらも無くて良いから毎日晴れて貰いたい。


朝飯6時10。今朝もおいちゃんが一人で奮闘して作った朝御飯なので文句は言わずに有りがたく頂きます。ピンクの皿があったので、イカの塩辛かと思ってドキッとしたが、これは好物のヨーグルトでした。(イカの塩辛は絶対に食べられません)

K子さんが釜のごはんでおにぎりを作ったので自分も真似して大きいのを作って梅干しをイン。朝食に掛けてあった大きなサランラップが役立ちました。これでお昼の心配がなくなった。グッジョブK子さん。そのK子さん朝食後すぐに宿代を支払って出発。二食付きだけど6000円と格安でした。次はYさんがスタート。


自分はパッキングをまったくしてなかったので大幅に遅れて7時15に出発。昨日一日中降った雨が嘘のような快晴です。でも風邪引いているのでマスクしてカッパ着て歩き出しました。これ以上悪くして熱でも出たら歩けなくなってしまいます。


少し歩くと、昨日間違えて降りてきてしまった角がありました。晴れた今日なら気持ちよく歩けそうなのどかな道ですが、雨の中、ちょっぴり不安を抱えて歩いていたので気持ちは良くありませんでした。何度やっても間違えます。その都度タブレットのGPSでチェックすれば良いのですが、ザックから出すのを億劫がってるので同じ事を繰り返します。

暑いので飲むヨーグルトとジュースを飲んでいたら左のふくらはぎがこむら返りになったので一歩も歩けません。道端に座り込んでせっせとマッサージをすることに。もっとこまめに水を飲んだ方が良さそうです。K子さんに追い付いたが、足が痛いのでここからはバス移動にするそうです、なかなか良くはならないなぁ。


風光明媚な公園の近くに閉鎖されたかのような道の駅があったので、ベンチに座らせてもらって最後の一本になった高級ルルゴールドを飲みました。高い割にちっとも効いた気がしないのは何故だろう。


もう既にお馴染みになった津波の避難タワーが現れました。これ今までで見た中で一番ごっつくて大きいなぁ。一基建てるのに幾ら掛かるのだろう?素人考えで数千万円の気がします。みんな地域の税金でしょうか。いつか本当にこれが役立つ時が来るなら有りがたいと思うでしょうが、一度も使われることなく老朽化で取り壊しになる気がする。結果的にはその方が良いでしょうが。


遍路のお休み所があったので、朝ご飯の残りで作ったおむすびを頂きました。中に突っ込んだ梅干しとたくわんは食卓にあった物です。これで昼飯代一食が助かりました。菅笠に白いタオルが巻かれていますが、頭に当たる部分が痛いので工夫しました。これなら痛くなりません。


次に登場したお休み所はとても立派なものでした。さすがに寝具こそないけれど泊まるには十分です。民間のタクシー会社さんが自費で作ってくれたもののようです。ホントに四国の人って親切だな。


歩き続けると今晩の宿「しおや宿」の大きな看板がありました。立派な看板なので、どうやらしおや宿は公共の宿らしいと想像できました。やったと思いながら喜び勇んで案内にしたがって左に折れて行くと大きな建物が目にはいるようになりました。これなら近くて良いなと思ったが、どうやらサイクリングターミナルなので別物らしい。通過して次に大きな建物がないかとキョロキョロしながら進むが一向に現れないので少し不安になります。軽トラのおじさんがやって来たので止まってもらい尋ねるも、しおや宿と言うのは知らないそうだ。おっかしいなぁ、確かに大きな看板に従ってやって来たんだがなぁ。でもこれは私の見落としが原因で迷ったのです。通りの看板には小さくサイクリングターミナルの文字があったのに、大きく書かれた「しおや宿」の文字しか目に入らなかったためのポカでした。改めてこの写真を見てやっと気が付いてしまったのことよ。


向こうから白装束のお遍路がやって来ました。グッドタイミング、この人なら同じ宿を目指しているだろうと想像しました。やっぱりその通りだったが、私は既にしおや宿は通り越しているとのこと。この人はベテラン遍路で、以前もしおや宿には泊まったことがあるそうです。しおや宿はサイクリングターミナルだよと教えてくれました。なんだあれだったのか、じゃぁ大分通り越してしまったな。二人してお喋りしながら宿を目指します。お互いに良い年に見えるので何年生まれなのか聞かれました。25年2月と言うと、えっ、この人も同じだって。当然、何日生まれかとも聞かれ、私の方が数日先輩でした。

無人のフロントでチーンを鳴らして並んでチェックイン。ここは旅割りが使える宿なので、クーポン券3000円の他に、ここにサインして貰えると高知県独自の割引が使えて更に千円割引になるそうです。そのシステムがピンと来ないが割引になるならサイン位はお安いご用です。欲に目がくらんで詐欺に遭うのはこういう時かも知れません。


部屋からは海が見えて潮騒も聞こえてくる良い部屋でした。5時からの風呂に入って夕食は6時から全員が食堂に集まって食べることに。


K子さんYさんとベテラン遍路さんの5人だけが今日の泊まり客でした。こんな良い宿なのにこれしか泊まり客がいないのは不思議なようだった。こういう人気の宿って平日でも予約が取りづらいのが定番じゃなかったの?

ベテランさんは流石に色々なことを知っていて披露してくれました。中でも御朱印帳への揮毫・スタンプが寺によって300円から500円に勝手に値上げしてることに激怒していました。そうやって協定破りをしてる寺がたまにあるらしい。私は最初から御朱印は集めてないので関係ないけど、三人は集め続けているので200円の差は大きいだろう。なにせ88箇所あるからね。


この夜もまた寝汗をかくことになってしまった。シーツと浴衣がびしょびしょになる。バスタオルを巻いて布団にもぐり、濡れたものはエアコンの風を当てておきました。1300円の高級風邪薬飲んでいるのに中々良くならない。汗をかくのでせっせとお湯を飲んでいます。これが汗になって出る気もするが飲まないのは風邪を悪化させるだろうから飲まない訳には行かなかろう。


11月3日(木) 遍路18日目 しおや宿

朝食のあと、今日は仲良く三人で出発する。なんでかと言うと朝からバス移動と決めているから。ここから高知市までは数キロですが、高知市の周囲には遍路の寺が幾つもあるので、予定の寺を全部廻って予約してある市内の宿まで歩くと40キロ近くなってしまいます。我々ロートルには無理な相談です。なので少しでも体力を温存する作戦です。


宿から国道に戻るには700mほど歩くが、バス停は国道脇にすぐありました。取り合えずこのバスで高知の入り口に移動して、更に乗り換えて最初の寺の大日寺まで移動してしまえ作戦です。Yさんは乗り換えないで、そのまま大日寺まで歩くそうだ。私は足を故障しているK子さんに付き合うと言うか、こっちの方が楽だから。


バスはあちこちの停留所を回ったので、大日寺に着くのと大した違いもなくYさんも到着してきました。この寺には運動会で使うようなテントが張ってあって、地元の婦人会らしい人たちが大勢でお接待をしている。こういうのは初めて見たので理由を聞いてみると、高知テレビがお接待の様子を取材してくれるそうです。そう言えばテレビカメラを持った人たちが数人目に入った。ミカンどうぞと渡されて、小学5年生が書いたと言う「お遍路さん頑張って」と書かれたカードとメモ帳までくれるそうだが、メモ帳は荷物になって嫌なので丁重にお断りしてミカンだけ頂きます。いつものことです。

門前に出ると車で送られてきた外国人遍路が到着してきました。山茶花の宿で一緒だったアメリカ人のおじさんです。今日も迷ってしまい、地元の人に拾われて届けられたそうです。そこそこ日本語が喋れても同じようには出来ないので大変だね。おじさんは当然私のことを覚えていました。


大日寺からは三人で一緒に歩き出しました。村の何気ない道を歩いていると「へんろ道」と書かれた案内板から路地に導かれました。ここからの田舎道が素晴らしかったです。


コスモス畑がずーと続き、誰も収穫する人がいない柿の実がたわわに実っていました。秋まっさかりの風景です。


この長閑な地に相応しい佇まいの遍路の休憩所もありました。休憩所と言うより何かを祀ってあるお堂という感じかな。みかんと小冊子が供えてあり、お遍路さん自由にお取り下さいと書かれています。これぞ遍路道と言うに相応しいとても良い地域と感じました。


街中には道路を挟んで2軒のコンビニがありましたが、こちらのコンビニには隣りに休憩スペースがあったので、こちらの勝利です。コンビニでお昼を買ってこの中で頂くことができました。コンビニ内のイートインコーナーも有りがたいですが、ここはコンビニの外なので、気兼ねがないので更に有りがたいです。歩き遍路にとっては天国みたいな施設でした。


食後に歩き出すことになったら、K子さんがいつにも増して厳重な日焼け対策を施しだしてアラブの過激派みたいです。こいつは傑作だとパチリと一枚。一切元の顔が見えないので、いつものように顔の編集する必要がないですね。


またコスモスが乱れ咲くコスモス畑の中を歩いて次の29番国分寺を目指しました。寺の手前で朝にも会ったアメリカのおじさんが出てきました。その後は迷うことなく順調に廻っているようで安心しました。どこも同じように見える寺の写真は割愛です。それより自然の写真の方が価値があるので。


次は30番の寺へ向かう田んぼ道です。これもなかなか味わいのある写真と思いませんか?何百年も前のお遍路も同じようにこの道を歩いたと想像できます。こんな道を歩いていると、じんわりと幸せを感じます。


最後の30番善楽寺は住宅街の中を遍路道が走っていました。お参りを終えたら同じ道を逆に戻ってバスを利用するので迷わないように時々後ろを見ながら進みました。


ここではバス遍路の団体が到着してきました。団体さんがお参りしている間に添乗員さんが全員の御朱印帳を携えて、いっぺんに書いて貰うので、ヘタすると30分40分も待たされます。この人たちは金剛杖を持ってませんが、団体によってはバス移動なのに寺に入るときは全員が金剛杖を突いてお参りするのでコスプレグループを見るようでした。

大きなバックパックを背負った40代ほどの歩き女遍路さんがお参りしていたので、我々の仲間になってくれないかなと思ったが声は掛けないでおきました。あとでK子さんにその事を言ったら「私の時は声かけてくれましたやん(大阪弁)」と言うので、若い婦人に声かけると下心があるかと思われるからと正直に答えておきました。「私はええのぉ(大阪弁)」と予想した返事が返ってきました。そりゃK子さんは若い婦人じゃないからねとは言いませんでした勿論。

Yさんはこの近くの宿を予約してあるので、私とK子さんは市内に向かってバスに乗ります。坂の上のバス停まで戻り、賑やかな高知市内へ移動しました。今晩の宿はENホステル&バーと言うドミトリーで、地図アプリにも登録されていたので迷わずに到着できました。受付の女の子は感じが良かった。ドミトリーは3階がベッドルームで、2階にシャワー設備やトイレに洗濯機がありました。


1階はレセプションと、隣には広いバー。バーのテーブルで買ってきた物で食事しても良いそうです。ドミトリーは2段ベッドが3台の6人部屋なので既に下段ベッドは2つ埋まっていたのでK子さん下段、私はその上段になりました。部屋自体が広く作られていて小さなテーブルまであるので徳島で泊まった極狭のドミトリーより遥かにマシです。と言うよりこれなら落ち着くレベルです。同室のお兄ちゃんも感じが良いのでこの部屋は当たりです。

シャワーは一段下がった2階でした。洗濯しようと洗濯機の前にいたら洗濯物を抱えたK子さんがやって来て、百円玉が足りませんの(大阪弁)と訴えています。痛い足で階段の登り降りは大変だろうと、一緒に洗濯するかと提案すると乗ってきました。「いいのー?パンツもあるよ~?」との大阪弁のイントネーションが面白かった。我々三人はいつも何ちゃって大阪弁で話すようになってるので、今回も「かまへんかまへん」と返事します。洗濯乾燥は400円だったが、K子さんは200円持っていたので半分こずつ出すことになりました。

洗濯機を回しておいて、二人して夜の町に食料の買い出しに行きました。近くにコンビニがあるが、50mくらい道路から離れているので私がクーポン券が使えるか聞いてくるからここで待っててと言ってひとっ走り。ダメでした。そこから更に歩いて大きなスーパーへ。ここんちはオーケーだった。途中、スーパーの店員さんが値引きシールを張り出したので、二人して他を見る振りしてシールを貼り終えるのを待ちました。やっぱり大阪のおばちゃんは行動が私と似ているようです。2000円分のクーポン券使って、食べきれないほど買い込みました。


ホステルに戻ってバーの広いテーブルでのんびり頂くことができました。いつもと違って広すぎるテーブルで食べられたので、これも中々良い時間です。このホステル気に入りました。K子さんは今日も家族へ無事の連絡をしているようでした。

回しっぱなしだった乾燥機から二人して洗濯物を出してみました。一応気を使って乾燥機から引っ張り出す役はK子さんにやってもらい、自分の分はK子さんから手渡しで貰いました。残念ながら半乾きの状態なので廊下にある物干しに広げておきましょう。風もあるので明日までには簡単に乾くでしょう。見える範囲に荷物が無いと往々にして忘れてしまうのでよーく記憶しておかないとです。明日は7時に一階で朝飯食べて二人で出発することにしました。


何ちゃって遍路旅10に続く