フィステラの道1 Santiago - Negreira  今日からFisterraの道

7月5日
 今日から第三の部、フィステラ・ムシアの道を歩き始める。坐骨神経痛のお陰で、2ヶ月間で予定より8日も遅れてしまった為にポルトガルの道を割愛。そのお陰でマドリッドへ戻る日迄の残り日数がまだ11日間もある。毎回最後はフィステラの道と決めているので、残日数をフルに使った一周を考えてみる。一周コースだと約220km位かな?のんびり歩いて11日間必要だ。これだとギリギリ。もう1案はボチボチ疲れたのでのんびりと120kmの片道コース。こっちだと日数が余るので連泊を3回入れなくちゃならないのでそれも面倒だな。ま、歩きながら考えて行く事にする。

 メノールのキッチンで手持ちの食料を食べて7時半にスタートする。まずオブラドイロ広場まで行ってからパラドール前の東へ延びる坂を下る。昨年、フィステラを目指した時は暗い内のスタートだったので、サンチャゴ市内で道に迷ってしまったが、今回は明るくなってからのスタートにしたので、昨年迷った分岐にもちゃんと黄色い矢印があるのを確認できた。やっぱり明るいのって大事。

 人家が途切れるところまで来ると、記憶よりずっと上り下りが続いている。でも何キロも続くような坂はないのでオッケー。取りあえず今モチベーションにしているのは過去2回立ち寄ったバルでコラカオを飲むという他愛のないこと。サンチャゴから1時間くらいと記憶していたが、もっとずっと遠かった。そのバルへ続く道も記憶とは違っていたし、ほんとに自分の記憶っていい加減。

 やっと楽しみにしていたバルに到着すると、昨日の日本人親子(息子はアメリカとのミックス)が休んでいた。やっぱり会うことができた。同じテーブルに誘われたので座らせてもらう。飲み物は予定どおりコラカオを1杯注文する。1.3ユーロなので、田舎だから少し休めのようだ。もともと甘めのコラカオだが、付いてきた砂糖を更に追加してエネルギー充填。

 息子はマメが辛いらしく、母親に「今日は○○でいいんじゃないの?」と、盛んに短い距離をお願いしている。息子は凄く弱気になっているが母親は幾らでも歩けるようなことを言っている。このチャンスに親の威厳を刷り込もうとしているのか!?今日のお宿は私は安い公営アルベルゲだが、親子は私営を希望しているようだ。1本道なのでこの後も会うだろうと思ってたが、これを最後に会うことはなかった。

 バルを後に歩き始めると、巡礼路は記憶とは違った曲がりくねった村の中を通過していった。今までと巡礼路が変更になったのかなと思ったが、道標は昨日今日できたものじゃないので、やっぱりここも私の記憶違いか。一周コースにした場合を考えて分かれ道があると落ちている木の枝を使って戻る方向に小さな矢印を作りながら歩いていく。行くときはフィステラに向けた矢印があるが、サンチャゴに戻るときにはそれがないから迷い易い。自分が戻る時のことを考えるとちょっとびびる。

 次の楽しみは滝がある名所だ。しばらく歩いているとその水音が聞こえてきた。そこでは今回も何人もの巡礼が写真を撮っているかと思っていたが、いたのは車でやってきたアベックの観光客だけだった。カメラを用意してたら、その人がシャッター係りを申し出てくれたのでお願いする。

 ここから今日の宿があるネグレイラまでは4kmで、公営のアルベルゲは町を越えて1km行った所にある。アルベルゲにはオープンの1時に到着する計算。滝を過ぎると見覚えのあるところばかり歩いて簡単にネグレイラの町に到着する。町には大きなスーパーGADISがあるので、ここで買い物してくとアルベルゲから戻らなくて良いので効率がいい。1リットルビール、チョリソー、カット野菜、ヨーグルトにバゲットで5ユーロ弱と今日もリーズナブル。

 暑い中、フーフー言いながら大きなレジ袋を提げてアルベルゲへ向かっていると後ろから「ミッシャーン」と声が掛かった。振り向くと道路反対側にある公園のベンチでフランス4人組がランチをしていた。彼らもフィステラまで歩いて行くのかと嬉しくなった。すぐ道路を渡って行くと、4人もGADISで買い物したらしく、同じレジ袋がベンチに置かれていた。今日は同じアルベルゲ泊まりかと思って喜んだが、7キロ先の小さな村にあるアルベルゲに予約を入れてあるそうだ。4人もフィステラを目指すのなら、この後もたびたび会えるかと思ったが、これが最後になってしまった。そうなることとは知らずに今日の所は写真を撮ってバイバイする。

 後になって考えたが、あの「ミッシャーン」は私がそう聞こえるだけで、実際には「ミッシェール」と言ってたのかも知れない。だってフランスにはミッシェルと言う男の名前があるから。モン・サン・ミッシェルのミッシェル。日本ではミカエルで大天使ミカエルのこと。英語ならマイケルか。今度フランス人に会ったらミッシェルと名乗ろうかな!?なんちゃって木っ端ずかしい。

 ネグレイラのアルベルゲには日本人のおっちゃんがいた。あまり愛想は良くないようだがフィステラでフリアンと会って私と一緒に写っている写真を見せられたそうだ。という事は、フリアンは昨日か今朝の内にバスでフィステラまで行ったと言うことか。このおっちゃんはフィステラからサンチャゴに戻る途中、このネグレイラに泊まったのならここにはバスで来たのが分かった。フリアンと会って一日でフィステラからネグレイラまで歩いて来られる訳ないから。なんか妙なことしてるな。この人は寝袋でなく、航空会社の名前入りブランケットで寝ていた。ビジネスクラスだとブランケットが貰えるという噂があるので、それかな?

 シャワー、洗濯のあと、飲み始める準備をする。カット野菜を皿に盛りチョリソーと昨日のサイコロチーズを載せると豪華な野菜サラダになった。味付けにはキッチンにあった岩塩と買ってきたヨーグルトを載せてみると、更にパワーアップされて食事っぽく見えてくる。このアルベルゲのキッチンからは昨年まではあったナイフ、フォーク、スプーンが消えていた。鍋とコップはオーケー。どこも段々と備品が減っているようで悲しい。プラスチックのフォークは持ち歩いているので不便はないが、昨日プラスプーンが折れてしまったのでヨーグルトを食べるには不便。どっかで調達したいな。0.9ユーロのバゲットはいつものより味が落ちるようだ。と言うか、味がしない。バゲットも当たり外れがあるんだな。昨日食べた胚芽パンは旨かったのに。

 コリアンの子が来たので片言英語でお喋りする。ロンドンで2年働いたそうだが、コリアンの英語はみんな聞き取り易い。銀の道でイギリス人トムの英語がまったく聞き取れなかったのを思い出す。日本に帰ってからアメリカ人の友達にそのことを言ったところ、同じ英語ネイティブ同士なのにイギリス人の英語がまったく聞き取れない場合があるそうなので英語も色々あるらしい。この子は明日わたしと同じ12kmのショートコースなので、また一緒になるかな。バルセロナのフライトまでまだ20日もあるので、ゆっくり回るそうだ。

 外のテーブルで1リットルジュースを飲みながら軽めの夕飯にしていたら、ちょっと変わった男が隣にやって来た。どうやらアルベルゲの施設(シャワー、トイレにキッチン)は使わせて貰うが中のベッドには泊まらずに外でテント泊らしい。キッチンでボカディージョを作ってきて隣のテーブルで飲み物なしでもそもそ食べ始めたので、オレンジジュースを飲むかと言ったら喜んでキッチンからコップを持ってきたのでさくらんぼも少しプレゼントする。

 彼はスペイン、マラガからやってきたルイス君。丸い折り畳みテントを持ち歩いていて、いつもこうやってアルベルゲに寄生して巡礼を続けているらしい。そのテントが面白いので、どうやって寝るのか見せてもらった。畳むと平たい丸になって、ぱっと広げるとテントぽくなる。「ぽくなる」と言うのは、ちゃんとしたテントでないから。上半身は屋根の下になるが下半身は外に出たままだ。雨の日はどうするのか聞いたら、やっぱり家の中に泊まるらしい。中に寝かせてくれたが、とてもじゃないが落ち着かない。どうせなら一人用の簡易テントの方がどんだけ良いだろうと思ったが、もちろんそんな余計なことは言わないし言えるスペイン語持ち合わせてないし。


フィステラの道2へつづく