フィステラの道3   Vilaserio - Dunbria  5ツ星ベルゲ

7月7日
 ビラセリオのアルベルゲ。今日は七夕!スペインにいたんじゃ関係ないけど。真っ暗の中で隣のコリアンの女の子の部屋からコトコトと言う音が伝わってくる。随分と早くから動き始めるんだなーと思ってるが、こちらはまだ動き出さない。少したって、そろそろ起きだす時間かなとタブレットの時計を見たら、出発を予定していた6時半だった。がーん。ま、がーんと言うほどでもないが外は濃い霧に覆われていたので朝が来ていたのに気がつかなかったと言う事か。起きだしてみると女の子は既に出発していて隣の部屋はもぬけの空だった。て言うよりこの大きな宿に私ひとり。

 結局この旅最高のボロベルゲには、私とコリアの女の子二人だけで管理人さえ来なかった。お互い古くて広いアルベルゲに一人じゃなくて良かったと思ったことだろう。女の子の方は前日のアルベルゲでも一緒だった子だが、私を完全に信用した訳じゃないだろから、更に心配だったのではと想像する。村はずれの1軒屋に二人だけだったけど、お互いに何もなくて良かったね。

 小さなクロワッサン3個と残ったジュースで朝飯にする。こんなんでも持っていればこそ朝飯を食べた気になれるってもんだ。ビラセリオを7時20にスタートする。40分程歩いていくと、田舎道の真ん中にザックを下ろしてタバコ休憩しているコリアンの女の子に追いつく。私より3,40分前に出たと思うが、どんだけ歩くのが遅いんだよ。一言二言ことばを交わして先へ進む。


 昨年泊まったお勧めできないアルベルゲのペペを通り越し歩いていくと、舗装路に出る。我々巡礼者のために作ったと思われる真新しい歩道が付いていて、ついさっき出来たと言うような新しい歩道だ。スペインの道路は車のスピードが半端でないので、ここでひかれた巡礼でもいたのだろうか?思ったとおり、舗装路から脇道に誘導される曲がり角で歩道はプッツリと終わっていた。ガリシア州の巡礼を守ってくれる姿勢に感謝だ。

 バルが現れたので、これ幸いと休んで行く。コラカオとチーズのボカディージョで4.2ユーロ。食料が尽きているので、ここでエネルギー補給できたのは幸運だ。少ししたらコリアン女の子も休憩の為にバルに入ってきて、続いて初顔の青年も入って来た。この青年はバルのセニョーラにイタリアの有名スパゲッティ(カルボナーラみたいな)が出来るかなんて聞いているのでイタリア人らしい。ここはスペインなのでまぁ出来ないよね、それが分かると何も食べずに出て行ってしまった。

 バルを出て歩き始めたら、この店の2軒隣に私営アルベルゲがあった。へー、今まで気づかなかったけど、こんなとこにもあったんだ。バルもすぐ近くだし隣にはパン屋もあるので、このアルベルゲは使い勝手が良さそうだ。サンタ・マリーニャにはペペだけかと思い込んでいたが、離れた所に別のがあったのか。ネグレイラからの距離も手ごろだし、次のためにここは覚えておこう。

 舗装路を離れ田舎道を歩いていくと、ソロの婦人巡礼が十字路でウロチョロしているのが目に入る。どうしたのか聞いてみると、巡礼路を示す矢印には×がしてあるのでどっちに行けばいいのか判断できないそうだ。一方の方が若干道幅が広いので、こっちじゃねん?な感じで二人で歩き始めたら前方から車がやってきた。二人とも考えることは同じで、二人してすぐ車を止めて教えてもらう。女性はイギリス人だがスペイン語が達者だった。教えてもらったことには、×印が付いている方が本物のカミーノだった。まことに紛らわしい。

 遠くに堰止湖が見える緩い下り坂を歩いていたら、前方から逆周りの4人組が現れる。見た感じ、コリアンかな。そのとき彼らの後ろから車が近づいてきた。その人たちから出た言葉は「くるまっ!」だったので日本人だとわかった。4人で歩いている日本人初めて見たよ。て言うか、ソロ以外の日本人を見ることは滅多にない。当然すぐ話しかけてみる。皆さん軽装だが、フランス人の道の出発地であるSJPPからちゃんと歩き始めたらしい。じゃぁ軽装なのはバックパックの宅配サービスを使ってるのか。フィステラから逆周りでサンチャゴを目指しているそうだ。道標や矢印がなくて、もー大変と言っている。私もそんな計画が選択肢にあるので、やっぱりなと納得。私に興味津々で、どういうルートで歩いているのかとか名前を聞いたり年を聞いたり、ブログはあるのかまで聞いている。男女二人ずつのグループだが夫婦ではないようだ。男性は68歳と70歳。女性はさすがに明かさなかったが、男性よりずっと若そうだ。お互いの健闘を祈ってバイバイする。

 ここは2年前にドイツのイーデンと歩いていて、イーデンだけがショートカットしたらしい地点に差し掛かったので私もそっちへ歩いていく。すると地元のおばちゃんから声が掛かった。隣でやかましく吠え立てている犬もいるが「そっちはカミーノじゃないよ」と言っているのが分かった。言葉の中から「フィステラ」の単語と逆を指差す動作で私は反対方向へ行こうとしているらしい。歩いてきた後ろを指差して「カミーノ?」と言ったらそうだそうだ。自分のイメージとしたら逆方向になるのだが、地元の人の話を信じるのが賢明だ。言葉に従って歩いていくと、程なく見覚えのある三叉路に出たので、やっぱりおばちゃんが正しかった。おばちゃんグラシアス。

 昨年、この道で仲良くなり、離れたり一緒に歩いたりしながら4日間を過ごしたスペイン人のアナと立ち寄ったバルが見えてきた。村の名前を覚えてなかったが、ポンテ・オリベイロアと言うのを確認できた。疲れてもいないので今回は写真だけ撮って前を素通りする。このバルは隣でAlbergueと言う看板を掲げていたので、アルベルゲもやっているのが分かった。こんな中途半端な所に泊まる人がいるのかな?

 こっからはもう公営アルベルゲのあるオリベイロアまでは目と鼻の先だ。ほどなく私営の大きなアルベルゲ前に到達する。食料が尽きているので、ここで何か調達して行かないとだ。バル併設の小さな物販コーナーがあるだけなので、まともな食料は手に入らないが、安い四角のビスケット一袋。ファンタオレンジが飲みたかったが冷えてない缶ビールしか置いてなかったのでそれを買う。アルベルゲ前にあるバス停でビスケット肴にすぐ飲み始める。もっと食料を手に入れたいが、この次にバルがあるのはO Logosoだけだし、そこで食料が手に入る可能性は低い。大丈夫かな?このすぐ近くに公営のアルベルゲ・オリベイロアがあるのだが、今日はこのまま歩き続ける予定だ。

 川沿いの景色のいい道を過ぎて低い山を越えると田舎に不釣合いな立派なインフォメーションがある。今回もそこに寄ってスタンプをゲットする。マップも貰い今晩の宿、ダンブリアまであと5キロだと教わる。ダンブリアはドゥンブリアと発音するのを教わるが、ダンブリアで覚えてしまったので言いづらいな。後からやって来たイタリア人が水が欲しいとお願いしている。建物から一歩外に出たところに水道があるのを教えてもらったが、あれは飲めるのか?と確認しに戻ってきた。行ってみると確かに水道脇の張り紙には×印があって「ノ ポタブル」と書かれている。でも飲んでも大丈夫だそうなので張り紙の意味が分からん。君子危うきに近寄らず、ここの水は遠慮しておく。

 フィステラ方面とダンブリア方面の分岐が現れたので、カメラの用意をしていたら先ほどのイタリア人ジョバンニがやって来たのでシャッターの押しっこをする。この通り、どっから見てもイタリア人。相変わらずイタリア人は相手がイタリア語を理解していようがなかろうが構わずにイタリア語で喋り続けている。彼はフィステラ方面に行くそうなので、ここでバイバイするが、ジョバンニがムシアまで歩くのならどこかですれ違う気がする。

 さて3回目にして初めてこの分岐からダンブリア方面へ行くのでちょっとワクワク感がある。ダンブリア方面へは少し高台になった道で舗装されてるので気持ちよく歩くことが出来るし歩きやすい。こんな感じでダンブリアまで行けるんなら楽勝だなと喜んでいたら、すぐ細い山道に入れられてしまう。それでもアルベルゲには予想したより早めの2時半に到着する。村はここから少し歩いた坂の上にあるのがここからでも見えているので買い物するには少し不便そうだ。

 アルベルゲは見るからに近代的な建物だったのでテンションが上がる。入っていくと、まだオスピタレラは来ていなくて、一人、スウェーデン人が先着していた。ベッドルームは3つあって、どこのベッドを取ってもいい私の一番好きなスタイル。建物の中を見渡してみると、どこももの凄く整っていてキッチン・食堂にはドナティーボの食料が何種類も置かれている。パンに果物に飲み物と、これなら食料を持っていなくても大丈夫なほど色々ある。完璧な5つ星アルベルゲで、同じ公営なのに昨日とは真逆。

 さすがに食糧コーナーにはビールは置かれていないので、シャワー、洗濯を済ませてから少し離れた村まで店を探しに行ってみる。時間的にはシエスタだが開いてたら儲けものだ。通りにはバルがあって、その隣でミニスーパーもやっているようだ。バルはシエスタやらないので、当然、店もやっていた。くたびれ儲けにならないで良かった。卵3個、1リットルビール、良く買っているクロワッサン風パンの大袋、ヨーグルト4、サイコロ状の色んな野菜が入った大きなビン詰めで占めて5.9ユーロ。帰りのレジ袋がずっしりと重たい。

 アルベルゲに戻って早速スープ作りを始める。ビンを開けたら中にはグリーンピース、にんじん、ジャガイモと色々入っているのでビタミン補給には持ってこいだ。スープの素と塩を入れたら美味いのが出来る。今回は卵も手に入ったので3個全部入れて煮込む。日本の卵は生でも食べられるが、外国のは良く火を通さないと危ないらしいので半熟は禁止だ。

 ソロのおばちゃん巡礼がやってきて、入り口でまごまごしているので「ベッドは好きなのを選べるよ」と何となく教えてあげる。モスクワ出身だが今はマドリッドに住んでいるそうだ。日本人の友達もマドリッドにいるんだと写真を見せてくれる。少し話したからか、3つあるベッドルームの内、私が一人だけいる部屋を選んだ。でも、おばちゃんが他の人と話しているのを聞いていると、なんだか面倒臭そうな人の印象だな。話の内容わからないけど。


フィステラの道4へつづく