フィステラの道4 Dunbria - Muxia ムシア到着 7月8日 ダンブリアのアルベルゲ(本当はドゥンブリアと発音するらしいが)、5時ころ起きだして隣のキッチンへ移動。スープを作って買っておいたミニクロワッサン一袋を食べて朝飯にする。炭水化物は歩くエネルギーになるらしいので、取りあえず他の栄養よりここでは重要かも。こんな立派で新しいアルベルゲなのに、定員24人のところを6人しか泊まらなかった。もう7月に入っているのに巡礼はそんなに多くないのかな?それともダンブリアまでやってくる巡礼はとても少ないのかも知れない。歩く人が少ないフィステラの道で、更にムシアまで歩く人はもっと少ない。更に更に、ここダンブリアまで足を伸ばす人はサンチャゴに到達した人の1パーセント以下だろう。 ジョアンナはどこの国だったか忘れたが、面倒臭そうな人とは別の明るいおばちゃんだ。彼女が出発した10分後の7時にスタートする。まだ夜は空ききらない。まずは昨日買い物した村の中心を目指す。ひたすら歩き続けた次の村ではお祭りがあったようだ。大型トラックの荷台がステージに変るのとか移動式の大型遊具もあった。まだ昨夜のままなのか、道端にズラッと吊るしてある簡易証明は電気が点いたままだった。バルが1軒店を開いていてジョアンナが休んでいるのが目に入るがそのまま通過する。朝飯にでもしてるのかな? この道筋としたら大きめな町の中に入ってきてアッチコッチヘと振り回されたが、巡礼路はちゃんと記してあったので迷うことなく脱出成功。そこからはまた車も通れないような田舎道を歩き続ける。 村はずれに大きくて古い教会があったが、素通りしようとしたら観光客らしいおばちゃんが二人、中を覗いているので由緒ある教会なのかも知れない。ちょっと戻って中を見て行くことにする。ここも入り口は施錠されてたけど、おばちゃん達が「ここから中が見えるよ」と言っているので鉄格子の入った隙間から覗いてみる。相当古いのだけは分かるが、他のことは一切不明。 フィステラの道を歩くのは3パターンあるので、頭の中ではいつまで経っても二転三転している。 1つはオーソドックスなフィステラ→ムシアと歩いてムシアからバスでサンチャゴへ戻る。 2、ムシア→フィステラと歩きフィステラからサンチャゴへバスで戻る。 3、フィステラ→ムシア→サンチャゴと歩く一周コース。 歩きながらずっとどれにするか考えていたが、ムシアヘ通じるDumburiaまで歩いたことで2案に決定する。やっぱり矢印がない一周コースは今回は見送ることにしよう。なんか迷い狂いそうで凄く不安。これだと日程が余るので連泊を数回入れるのんびりコースとなる。安易なのは魅力的だ。しかも「これから3日間は20キロ以下のショートコース」なんて言ってたのが、2回に区切っても良かった27.6kmを1回で歩いてしまったので3連泊を入れることになった。今日も22km歩いてしまうし、最後にフィステラへ行くコースに変えたのでショートの日はなくなった。3連泊入れるとしたら見る所があるムシアかフィステラになるだろう。 ムシアを出発してサンチャゴへ向かう人がたまに見られるようになってきた。今日擦れ違ったのは全員で4人だけ。この道は1本道だし、アルベルゲに到着する時間を考えると午後に歩く人はいないだろうから、今日一周コースを選択した人は4人ぽっきりしか居ないと言うことだろう。一周コースを歩くとき、一本道なら問題ないけど三叉路、十字路では迷うだろなー。もし自分が一周コースを歩くとしたら、気力が相当充実してないとやる気にならないだろう。 しばらく山の中を歩いてきて、やっと前方に海が見えてきた。向こう岸に町が見えたのでムシアかと思ったがGPSで確認したら違って、Camarinasと言う港町らしい。でも南のセビージャから歩き始めて、スペインを縦断、とうとう北の果てまでやって来たかと実感する。サンチャゴ到着よりこっちの方がずっと価値がある気がした。 実際のムシアはそこからまだ暫く歩かなくてはならなかった。海岸に近いところに小さな教会があって、そこから一人のおっちゃんが自転車でやってきた。なんと日本人で清水さんと言った。ムシアにはもう2週間も滞在しているそうだ。だからレンタル自転車を駆ってムシアの隅々どころか、こうやって近隣まで走り回っているようだ。同じところに2週間!!それってもう避暑とか湯治のレベルなんじゃ。暫く一緒にお喋りしながら歩いてみたが、自転車の人を歩きの歩調に合わせてもらうのが申し訳ないので先に行ってくださいと提案してはみたが、この人は日本語に飢えていたのか、ずーっと一緒に歩き続けて、ずーっとお喋りをし続けてくれた。 公営アルベルゲまで自転車を転がしながらやってくると,既に二人のコリアンおばちゃんがオープンを待っていた。1時の開店までにはまだ45分あるので、馴染みになったバルで時間潰しを提案される。2週間も滞在してすっかりバルのマスターとも仲良くなったそうだ。あまり余計な金は使いたくないが折角なので付き合うことにする。ムシアは一応観光地なので観光客用のバルというものは沢山ある。でも清水さんが馴染みになったというバルは本当に地元の人しか入らないようなバルだった。コーヒーを一杯飲みそこでもお喋り。 そろそろアルベルゲのオープン時間が近づいたので移動することにする。清水さんはずっと泊まっていると言う私営アルベルゲへ戻っていった。自転車だとどこへ行くにも速そうだなー。公営アルベルゲの前まで戻ったらジョアンナが到着していた。10分前なので、時間つぶしをしていたであろう巡礼があちこちから集まってくる。 さてここからはちょっと興味深い展開になります。時間になったのでアルベルゲの扉が開かれ、待っていた人たちがゾロゾロと受付をしにレセプションに並びます。私の前にはコリアンのおばちゃんが二人。ムシアに着いて最初にアルベルゲの前までやって来た時には既に待っていた人達なので少なくとも1時間は待っていただろう。で、オスピタレロが彼女達のクレデンシャル(スタンプ帳)を入念にチェックし出した。スペイン語で何か言ってるが、おばちゃん達はスペイン語を理解しないようだ。何となくだが「ほら、アナタ達のクレデンシャルにはネグレイラもオルベイロアのスタンプもないでしょう」と言っているのが分かる。おばちゃん達には通じていないのか、盛んに首を傾けている。私は自分のクレデンシャル片手に後ろで番を待っていると、オスピタレロは私のクレデンシャルを手にとって「ほら、ここにはオルベイロアのスタンプがあるけど、あなた達にはないでしょう」と言っているのが分かる。どうやらおばちゃん二人はサンチャゴからバスでやって来たのを咎められているようだ。バスでやって来る人には巡礼証明書は発行されないし、公営アルベルゲに泊まることもできないのだった。うわ、ずっと先頭で開くのを待ってたのに気の毒!でもそういう決まりなのでどうすることも出来ない。ここは大きなアルベルゲなので、きっと夜になってもベッドに空きは沢山あるだろう。「だったら」なんて例外はここにはないようだ。そう言う問題じゃないんだろう。フィステラの公営アルベルゲは歩いて来た人しか泊めないと言うのは有名だが、ここムシアも同じだったんだ。 おばちゃん達には気の毒だったけど、ムシアには誰でも泊まれる私営アルベルゲが沢山あるので、今晩の宿がなくて困ることはないだろう。でもこのショックは大きかったんじゃないのかな。巡礼の最後に残念な思い出が追加されてしまったので気の毒。 ※お役立ち情報 フィステラの巡礼証明書の発行は公営アルベルゲだけですが、ムシアの巡礼証明書は私営アルベルゲでも発行してくれます。多分、バスで行った人にも出すんじゃないかな?2年前はベラムシアと言う私営で発行してもらったがクレデンシャルの確認さえしなかった。余りに軽かったので有り難味がなかったです。逆に、フィステラでは厳格にチェックされ、バスで到着した人には発行されません。 このアルベルゲは近代的で立派だが無駄に広い印象だった。ガリシアなので6ユーロ、Wi-Fiはない。巡礼証明書はここでも無料で発行してくれた。今日は寒いけどシャワーがヌル目なので温まることができないのが残念。浴びながら洗濯も一緒にしておく。物干しも建物の一角にあって、そこだけは吹き抜けになって強い風が吹いているので簡単に乾きそうだ。昨日、乾かなかった厚手の靴下も持ってきて干しておく。 ムシアは小さな町だけどスーパーマーケットのチェーン店が二つもある。その内のひとつ、スーパーEROSKIへ買出しに行ってみる。ハム、カット野菜、ペプシコーラ、ファンタオレンジ、ヨーグルト4、スープの素、1リットルビール、大きなパン、固いスナック菓子みたいの大袋と大量買いしても7.28ユーロ。レジ袋が0.03ユーロと有料だったのが残念。 立派なアルベルゲなのだがキッチンの備品はそれほど充実してなかった。でも困るほどでもないので食べるのには問題なかった。買ってきた食料を皿に盛ると、なかなか豪華な食事に見える。広いキッチンだが泊まる人が少ないので私以外誰もいないのでのんびりと食事することができる。 ここで山の中で会った清水さんは2年前にサンチャゴのカテドラル階段に座って日本人女性を交えてお喋りした、あの清水さんだと急に思い出した。そうしたら「居ても立ってもいられないので歩いて」清水さんが泊まっているアルベルゲ・アリババを尋ねていく。アリババのレセプションには女の子二人が受付をしていて、そこかしこに居る人たちもみんな若者だった。明るくてカラフルだし、なんか華やいだアルベルゲだなー。受付の子に「シミズ ハポネス」と言ったらすぐ取り次いでくれて清水さんがエレベーターでやってきた。部屋に行こうと付いていくと、そこは最上階のいわゆるペントハウスだった。大きな一部屋にダブルベッドとシングルベッドが2つも並んでいる。ここを一人で独占してるそうだ。もちろん、専用シャワーにトイレが付属している。ここに2週間とはとぶったまげる。「金はあるんだからさ」なんて言ってるあなたは本当に巡礼か!? 「2年前にサンチャゴで話した清水さんですよね?」と言ったら、会ったのは初めてだし名前も清水ではないと言われる。完全に私の思い込みだった。偶然の再会を喜んで来たのでガッカリ。日記にも清水さん清水さんと何回も書かれていたので、すっかり会ったことのある清水さんと思い込んでいた。この部屋からは屋上に出るドアも付いていて見晴らしの良い屋上を見せてくれる。ひとしきり話してから、また例のバルに行ってお喋り。この近くから綺麗な夕日が見られるそうだが、2週間もいるのに天気が悪くまだ一度も見てないそうだ。 清水さん(清水さんじゃないけど教えてもらった名前忘れてるので清水さんで通す)は御年70歳で、フランス人の道を何度も歩いているそうだ。ほかの道を歩くのは不安があるそうだが、歩いたことのない道の方が面白いと思うんだがな。人それぞれだ。 ここで重要な情報を教えてもらった。火水曜はバスがストライキで動かないって、なんだそれ!!初耳だ。フィステラ、ムシアからは殆どの人がバスで90km離れたサンチャゴに戻る。そしてサンチャゴから各国に帰って行くのだが、飛行機の予定もあるしストの日にバス利用を予定している人には大問題。私がサンチャゴに戻るのは金曜か土曜。日曜には列車でマドリッドへ。まさかストが長引かないだろな。すっごく心配になる。 最後に二人して昼間に行ったのと別のスーパーへ買い物に行く。YAKOMOTEのカップラーメンを丼に移してイカ墨缶詰と醤油をたらすと美味いそうで気に入っているらしい。私はまた缶ビール2本にミニトマト、インスタントラーメン袋入り、コーン缶詰を買って3.25ユーロ。明日は日曜日でどちらのスーパーも定休日と言うのを確認してあるので食料は昼に買ったのと合わせて目いっぱい買い込んだ。 アルベルゲに戻ってもどうせ暇なので、明日泊まろうとしているアルベルゲ・Delfinに行ってみる。通りに面した共有スペースが大きなガラスになっているので落ち着かない感じだなー。でもここはムシアの私営では最安の10ユーロなのが魅力的だ。2泊するので4ユーロの差は大きい。中に入って行き、明日泊まりたい旨を言ってみる。オーナーらしいマダムはスペイン語しか話さないようなので「マニアーナ(明日)ドルミール(寝る)」と単語を並べながら手まねで寝る仕草をして伝える。どうやらオーケーのようだ。でも、アビエルト(オープン)が12時と言っているので、公営アルベルゲを出払ってから時間がありすぎるな。バックパックだけでも預かってもらいたいな。明日交渉してみよう。帰りにサンチャゴへ行くバス停を確認して帰る。丁度そこへバスがやって来たが、乗る人はそんなに多くはなかった。やっぱりストの影響か。 公営アルベルゲは32ベッドもあるが、今晩の宿泊者は10人に満たなかった。 フィステラの道5へつづく |