フィステラの道8 Fisterra2日目 フィステラの貝殻 7月12日 フィステラの私営アルベルゲ「 POR FIN 」キッチンでスープを作り2日持ち歩いているパンを浮かべる。それにヨーグルト2個とアルベルゲにある無料のコーヒーで朝飯。アルベルゲのお上さんは男前で親切。10ユーロと私営としたら最安値だし。 ここも9時から11時までが清掃時間なので連泊するとしても外に出ていないとならない。時間つぶしに遠浅の海岸まで行って帆立の貝殻を拾うことにする。2年前にもここで沢山の貝殻を拾ってお土産にした。喜ぶ人は喜んでくれるが、中には「なんだ貝殻か」なんて人もいたような気がするが。 ここの貝殻は中世の時代、それぞれの国の自宅から命がけでサンチャゴまでやって来た巡礼が、故郷までまた歩いて戻るとき巡礼を達成した印として持ち帰ったという歴史がある代物だ。山賊や狼が跋扈(ばっこ)していた時代、故郷に戻れずに亡くなった人が沢山いたことだろう。現代では巡礼途中に亡くなる人は滅多にいないが、その故事に習って貝殻を拾い故郷の土産にする巡礼は結構いる。形の良さそうなのを3つ拾ったので、もういいかと思ったが折角なのでもっと拾っておく。結果的にこれが良いことに繋がった。 後日談になるが、この貝殻がすごく人の役に立ったことを紹介させてもらおう。帰国して数ヶ月経った頃に友人からフィステラの貝殻がまだあるなら欲しいと言われた。もちろん喜んで形のいいのを二つあげたら、それは友人の親友が明日をも知れぬ病気で伏せっており、その人はスペインが大好きな人で死ぬ前にもう一度スペインに行ける事を夢見ていたそうな。残念ながら再訪を果たす前に動けない体になってしまったようだ。私からの貝殻を携えて見舞ったところ、その由来を知って既に喋ることさえ出来なくなったその人は貝殻にほお擦りして涙を流したそうだ。その3日後に亡くなってしまったが、最後まで貝殻を手放さなかったと聞いた。そこまで大切にした貝殻なので、遺族は一緒に火葬しようか考えたが、骨壷に一緒に収めて墓に入れてくれたらしい。フィステラから持ち帰って本当に良かったと思った。 フィステラ2日目の今日は安い公営に泊まる積もりだったが、英語とスペイン語で書かれた入り口のお知らせをよく見たら「泊まれるのはフィステラに徒歩でやって来た人だけで、到着した当日のみ宿泊できる」と書かれてあった。げっ!今まで2回ともフィステラに到着したその日に公営アルベルゲに泊まっていたので、そんな決まりがあるとは想像していなかった。ムシアでフィステラの私営を予約してもらったので、これで遅く着いても安心と喜んで来たが、意外な落とし穴があった。勿論一泊のみで連泊は出来ず「歩いてきた人は1時受付、自転車は5時から受付」とある。中々厳しいです。私は昨日到着した日に私営に泊まったので権利がなくなってしまったと言うわけだ。私営との差は4ユーロ安、約500円なので1回分の食事代ほどか。ちょっと惜しかった気がする。 銀の道で連泊したオウレンセで、フランスのギャエレが1泊目は私営に泊まり、2泊目に公営に泊まろうと提案したことがあった。オウレンセではその通りに実行できたのでまさかこんな変則的な決まりがあるとは想像してなかった。次に来たときにはヘマをしないようにしよう。泊まることは出来なくてもフィステラーノ(フィステラの巡礼証明書)はここで発行して貰えるので時間になったらやってこよう。そうと決まればPOR FINで今晩の宿を確保だ。お上さんに申し出ると機嫌よくオーケーをもらえる。 2年前にサンチャゴでお喋りした日本人巡礼の小松崎さんがフィステラに7日間滞在したときに、毎朝通ったというパン屋へ行ってみる。公営アルベルゲのすぐ近くにあって、とても小さな店で良心的な印象のおばあちゃんが一人で切り盛りしているようだ。おやつに甘い菓子パンを2つ買う。1.6ユーロととても安かった。早朝にくれば暖かい焼き立てが買えるかも知れないな。店名がGERMANと言う名前なので出身がドイツなのかも知れない。アルベルゲに戻って無料のコーヒーと一緒に食べる。 公営アルベルゲのオープン時間を過ぎたので、そろそろ空いた頃かと狙いを付けてフィステラーノを貰いに行く。受付の美女は昨年と同じ女性だった(左の人)。昨年、レセプションで日記を書いていたら、そろそろここは閉めるからと私の名前を呼びながら伝えてくれたので不思議な親近感を覚え、一緒に写真を撮ったことがあった。そのことを言ってみたら何と覚えていた。嬉しくなってまた一緒に写真を撮らせてくれと言ったら喜んで入ってくれる。ここに泊まることは出来なかったけど、これでプラマイゼロになった気がした。 今日は昨日と違って快晴なので夕日を期待してまた岬まで歩いていく。だが、時間になると空には雲がないのに海面近くには厚い雲が被さっていて夕日に蓋をする格好になっていた。これでは期待できそうもないが折角なので時間まで待つことに。沢山の人たちもサンセットを期待して待っているが、日没時間の10時を過ぎるとパラパラと帰りだした。しょうがない帰ろうかと歩き出したら、西の空がほんのりと赤みを帯びてきたので少し待ってみる。ここが最高潮かなと思った辺りで数枚写真を撮ってみたが大したもんではなかった。天気はこんなに良いのに今日も外れだったな。 夕日は見られなかったが、帰りながら見たフィステラの町は夕闇に映えて旅情を感じさせるものだった。暗くなったアルベルゲの扉には鍵が掛かっていた。鍵は持たされているが、スペインの鍵は扱いが難しく、ガチャガチャとやっていたら近くにいたおじさんが代わりに開けてくれ、音に気が付いたお上さんが玄関にやって来ていた。ベッドルームに入ったらもう既に全員が寝ていたので自分の寝袋に潜り込む。 今日はこれだけじゃ短くて詰まらないので、今回歩いた距離を計算してみた。 銀の道 Via de la Plata 1007 km 4/28 - 6/17 プリミティボの道 Primitivo 321 km 6/19 - 7/4 ムシア-フィステラ灯台2往復 125 km 7/5 - 7/14 合 計 1453 km さるサイトで発表されているものを参考にしたが、スペインなので真偽のほどはどうなんだろな感じです。昨年より100km位多いです。 フィステラの道9へつづく |