フィステラの道10  Fisterra - Santiago  サンチャゴへ

7月14日
 フィステラのアルベルゲ「POL FIN」。今日はサンチャゴへ戻る日だ。7時過ぎに起きるがパッキングを済ませたら何もすることがないのでベッドの上でごろごろしている。イベリア半島最北の海岸でなのか、7月半ばなのに朝晩は寒いくらい、て言うか確実に寒い。フェイスブックで日本は真夏だと教えてもらい、帰ってきたら暑くて参るよと言われるので、暑さに弱い私は少しびびる。ベッドでのんびりしている所へ愛想の悪いつるぴか君がやってきて、今日も泊まるのかと聞いてきたので、ノと一言伝えたらニコリともしないで行ってしまった。相変わらずなやっちゃな。

 昨日、咳止めを2個上げたドイツ青年はその後一度も咳をしてないので薬が効いたようだ。前の晩は咳と共に凄いイビキもかいていたが、それもピタッと止んでいた。咳とイビキは関係があるようだ。何にしても静かな夜だったのでお互いに喜ばしい。フランスおじさんは今も軽いイビキをかいて寝ている。今日は私と同じバスに乗ってサンチャゴへ帰る筈だが呑気に寝ているところをみると、朝一のバスでもないのかな。

 チェックアウトして広場へ行ってみる。風も冷たいし温かいのが飲みたいので、2年前にイーデンとお茶したカフェでコラカオ1.5ユーロを飲んで時間つぶしをする。やっぱり座っていると寒いのでフリースを引っ張り出して着ておく。夏でもフリースは必需品。

 お婆ちゃんのパン屋が9時に開いたので、エンパナーダとクリームサンドで2ユーロ。港で石のベンチに座って朝飯にする。そうこうしている内にバスの時間が迫ってきたのでバス停に移動。バスはすぐやって来て、9時半になったら乗車開始しだした。チケットは昨日買っておいたが、ほとんどの人たちはバスに一歩乗ったステップの上で運転手から直接買っていた。私も昨年は同じだったが、やっぱり前もって買っておいた方が金のやり取りをしなくて済むので気楽な気がした。先頭の席をゲット、隣におばさんが座ってグラチエと言ったのでイタリア人だ。数少ない知ってるイタリア語からプレーゴと言ってみる。フランスおじさんはまだやって来ないので、ぎりぎりに来る積りなのかな?結局、おじさんは来ないままバスは出発してしまったので、次の11時45に乗る積りか。

 サンチャゴに戻って来た。徒歩なら数日掛かる行程がたったの1時間半。ここはサンチャゴで一番大きなバス停(と言うか、ここしかないらしいが)なので今後のために何処までどういう時間で行けるのか情報収集しに2階のチケット売り場へ行ってみる。だが、行き先や時刻表の類なんか一切なくて、あるのは行くことができる外国の旗だけだった。何つぅ大雑把、スペインここに極まれり。ポルトガル、ドイツ、フランス、イタリアなど、EUの主だった国へ行けるのが分かっただけだった。来年はサンチャゴに到達してからリスボンへ移動したいのだが、バスより好きな列車移動だとサンチャゴ、ビーゴ、ポルトと乗換えが必要なのに対して、バスだと直通があるらしい。だったらバスで決まりだ。普通、列車よりバスの方が安いし。

 バスターミナルからアルベルゲ・メノールまでは歩いて20分ちょい掛かる。暑い中をフーフー言いながら12時到着。予約してあるので受付も簡単。もっとも予約してなくてもメノールのチェックインは簡単だけど。2泊で28ユーロと夏休み値段で今日も高めになってる。ベッドは2階のC2048なのでラッキーだ。メノールのベッドルームは2階と3階があって、日本で言えば更に+1階だ。天井が高く階段の段数が多いのでこの1階の差がかなり大きい。1時半までは掃除の時間なのでベッドルームには入れないのが辛い。早くシャワーを浴びたいので地下にあるシャワールームを使おうと行ってみたが、すべてのドアには鍵が掛かっていて使うことができなかった。くそ。

 オブラロイド広場へ行ってみるが顔見知りなんて皆無。そりゃそうだ、プリミティボの道から到着して既に10日経っているのでみんな故郷へ帰ってしまっている。分かってはいたけどちょっと寂しい。カテドラルは相変わらず絶賛修復中なので写してもしょうがない。そろそろ土産を買う時期になってるのでキーホルダーの市場調査をやってからアルベルゲへ帰る。

 キッチン兼食堂はとても広いし鍋釜も充実している。ただ、今までは置いてあったガラスのコップがみんなプラスチックに代わっていた。ガラスのコップでビールを飲むのが大好きな私にはとても残念。写真は今日の昼夜兼ねた食事。今日のポイントはキウイでしょうか。これで合計500円くらいかな?節約食事続行中。

 さてさて、今日のベッドルームにはイビキ大王が2つ隣のベッドにいた。あまりに煩いので毛布を掴んで廊下に置いてあるソファへ移動して寝ることにする。深夜、懐中電灯の明かりで起こされると、見回りの男性だった。豚の鳴き声を真似てイビキで寝られないと伝えてみる。ベッドの配置表を持っていて、あなたのベッドはどこかと聞くので指差したら行ってしまった。既に十数泊したメノールだが、夜回りがいたとは初めて知った。


7月15日 サンチャゴ2日目
 キッチンに下りて昨日の残りの食料で朝飯。カット野菜とチョリソーにパン。キッチンにあったインスタントコーヒー。ここのキッチンは前の巡礼が置いていった食料が結構あるので何かと便利することがある。サラダ用の塩の小袋とビネガーらしき小物を次回用にゲットしておく。こないだムシアで食べた粉砕ラーメンがあったので、これも1袋もらって後で食事の足しにしよう。

 9時過ぎにカテドラル方面に行ってキーホルダーの価格チェックをまたする。お土産の屋台がそこかしこにあるが、屋台だからと言って安いと言うことはないようで、むしろ高い。最低1ユーロからあるが、1ユーロのは安っぽいな。2ユーロのはまずまず。

 北の道を歩いてきたと言う日本人男性、棚橋さんと会えたので道端でお喋り。同僚に同じ名前の人がいて、棚ちゃんと呼んでたと言ったら、自分もそう呼ばれているとのこと。棚橋さんによると北の道で会った日本人はヒザを故障したので巡礼を途中で止めて日本に帰ってしまったそうだ。そりゃ死ぬ以外で最悪だな。私も銀の道でヒザを故障して3日間足を引きずって歩いたけど日本に帰ることは考えたこともなかった。その人は帰る気になるほど大変だったと言う事か。日本人がスペインまで来てサンチャゴ巡礼をしようと決めるまでにはそれ相応のモノがあったに違いないが、それを全てチャラにして帰らなくちゃならないなんて気の毒としか言いようがない。

 カテドラルの巡礼者のためのミサは12時からだが10時40に聖堂に入っておく。ミサの30分前にやって来て座るイスがないとオロオロする人が沢山いるが甘い。入れただけマシだと思おう。それより遅いと入場制限が掛かって、ミサが終わるまで入り口で並ばなくてはならない人がいっぱいいるのだ。

※お役立ち情報
 カテドラル入場は書いたとおりですが、なるべく1時間前に入るのが肝要です。混んでいるときは1時間前でもイスが全て埋まってしまいます。

 今日もミサの終わりにボタフメイロのぐるんぐるんをやってくれたのでデジカメの動画で撮る。いつもボタフメイロが始まりそうになると皆がどよめきだしカメラの用意を始めるので面白い。時には祭壇の中にゾロゾロいる神父達までがその様子を写真に撮る人がいる。立場をわきまえろと言われそうだが、有名なサンチャゴのボタフメイロなので外国からやってきた神父としたら、これが撮らずにおられようかなんだろう。その気持ちは分かるが、見ていてみっともないぞ。

 ミサの後、もしかしたらムシアで会った日本人がいないかなと探してみたがそんな偶然はなかった。明日はサンチャゴを離れるのでサンチャゴらしい土産はここで買わなくてはだ。子供達は毎回キーホルダーと決めてあるので、下見をした店に行ってみる。キーホルダー6個と別暮らしの娘には冷蔵庫などに張るマグネットを買う。合計14ユーロと少し。アルベルゲへ帰る前に食料を調達しに少し離れたスーパーのEROSKIへ向かう。スペインで初めてジャガイモを買った。小さいのを5個と玉ねぎ1個、一番安いソーセージ1袋とバゲットと2回買ったことのあるワイン「Gran Vino do Val」。それに明日、電車の中で飲む用にオレンジジュース1パックで3.31ユーロと格安。野菜を買ったり買い物もだんだんこなれて来た気がするな。

 アルベルゲに戻り、シャワーを浴びてから夕飯作りを開始する。芋の皮むきは面倒なので皮付きのまま使う。オイルとニンニクがあることを期待していたが、両方ないのでみんな小さく切ってから煮込むことにする。何だか良く分からないけどキッチンに辛い粉があったので投入。それだけじゃ味がしないので、手持ちのセボージャスープの素を少し入れたらまずまずになった。ワインもあるし、今日はのんびりと2時間掛けて飲み食いする。一人ぼっちなのに。どういう訳か今まで目にしなかった立派なワイングラスが一つだけあったので使わせてもらう。

 食べ終わったころにキッチンに日本人がやって来た。見るからに日本人顔なのですぐ声をかける。昼間も日本人に会ったし今日は大漁だ。定年退職した62才の男性で何の計画もなくレオンから歩き始めたそうだが、フランス人の道はそれが出来ちゃうと言う整備され尽くされたカミーノだ。

※お役立ち情報
 フランス人の道を歩くならガイド本などは必要ありません。SJPPの巡礼事務所でくれるアルベルゲ情報の紙1枚で歩けてしまいます。私もフランス人の道を初めて歩いたときは、日本からGoogleマップを印刷してきただけで、それも車が使うような大雑把な縮尺でした。貰ったアルベルゲ情報の紙を見て明日はどこまで歩こうかと毎日考えてました。

 この大阪の人から橋本市長の改革の事実を初めて地元の人の声として聞いた。それまでの言動から橋本は政治を玩具にしていると思っていたので嫌いだったが、地元のことをしっかり考えた政治をしていて大阪の人には絶大な人気があるそうだ。おまけに大阪以外では批判的に捉えられていることもちゃんと知っていた(私みたいに)。

 日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会の役員をしていた友達がいるそうで、複数の人から聞いたという話を元に友の会を痛烈に批判していた。私もいささか思い当たることがあるので、その話でも大いに盛り上がる。

 四国巡礼と熊野古道も歩いたそうなので色々教えてもらう。熊野古道を歩いている人は外国人ばっかりで、季節的には雨の降らない冬が狙い目だと意外なことを聞かされる。サンチャゴ巡礼はお金が掛からないが、四国遍路は金が掛かりすぎるので、皆が歩けるように安宿を整えて四国遍路を活性化すれば結果的に沢山のお遍路を呼び込むことができると、これは私も同じ意見だった。

 私は遍路には興味があるが、仏教徒でない自分が遍路道で地元の人のお接待を受けるのは筋違いな気がすると言ったところ、四国は宗教関係なく歩いて良くて、その理由も言ってたが忘れた。これも意外なことだった。仏教徒でなくても良くてアルベルゲのような安く泊まれる宿を渡り歩けるなら四国遍路は是非やってみたいところだ。

 乗り継ぎが嫌なのでスペインへはイベリア航空の直行便で来ており、16万円と言ってたかな?私の飛行機はマドリッド往復が55,140円と格安チケットが買えたのでその3分の1ほどだ。その代わり乗り継ぎ便だが、こんだけ値段に差があるなら乗り継ぎなんてどすこいだ。この人も明日はマドリッドへ移動して2泊するそうなので私と同じだ。運が良ければマドリッドで再会するかも知れないな。でもあちらはバスで私は電車移動だけど。2時間以上も楽しくお喋りでき、思いがけず楽しい晩になった。


マドリッド1へつづく