マドリッドの休日1   生ハム博物館

7月16日
 とうとうサンチャゴを離れてマドリッドへ戻る日がやって来た。4月26日にマドリッドに到着してから既に81日が経過している。はじめは気の遠くなるほどの日数だったが、終わってしまえば短いもんだ。マドリッドでは安いオスタルを2泊予約済みなので、これは久しぶりの一人部屋なのが嬉しい。最後に楽しみが待っていると言うのはいいもんだ。

 この旅で一人部屋だったのは、スペインに到着した初日にコルドバのオスタルで1泊、次が5月23日のサラマンカ。そして今日7月16日のマドリッド泊まりと久し振りもいいとこだ。あとは全て大勢で一緒に過ごす大部屋なのでプライバシーもへったくれもないが、慣れてしまえば大した問題ではなく、むしろ楽しかった。

 アルベルゲ・メノールを5時5に出発してサンチャゴ駅を目指す。夜明けは7時なのでまだ町は寝静まっているが大通りに出ると車が走っている。20分歩いて暗闇に浮かぶサンチャゴ駅に到着。構内には沢山の人たちがいて、みんな静かに始発を待っているようだ。椅子の数がとても少ないので、床にべたりと座り込んでいる人もいるな。駅舎の外なので少し寒くなるがホームのベンチなら座れるので、そっちへ移動して持ってきたクロワッサン風パン3個とオレンジジュースで朝飯にする。

 目の前に流線型のかっこいい電車が1台止まっていて、5時半にエンジンを掛けだした。私の乗る電車は6時発なので、まさか30分も前にエンジンを掛けないだろうと思っていたので別の電車と思い込む。一応、電光掲示板でこれからの電車をチェックしてみると、6時前の出発はないし、この1番ホームからマドリッド行きが出ることになっている。駅員を捕まえて電車を指さしながら「マドリッ?」と聞いたらそうだと言う返事。念のために自分が持っているチケットを見せて再確認する。本当にこれがマドリッドへ行く電車のようだ。この駅には改札はないので、乗り込もうとしたらホームでチケットをチェックし始めたので列に並ぶ。今回はセキュリティーチェックはなかった。やったりやらなかったりがスペイン流。シートは8-8Bで通路側だった。5時間も乗るので通路側の方が歩き回れるという開放感があって好きだ。

 昨年もマドリッドへは電車で戻っているので、見覚えのある車窓の風景がそこかしこに現れる。マドリッド・チャマルティン駅に11時9分に到着する。やっぱり5時間か。チャマルティン駅はマドリッドの郊外10kmにあるので、中心のアトーチャ駅には近郊線のセルカニアで移動しなくてはならない。セルカニアの切符売り場は昨年と同じだったので、迷うことなく1.6ユーロのチケットをゲット。券売機はいっぱいあるのに、一番利用が多いと思われるセルカニアが窓口販売のみと言うのはどうなんだろう。チャマルティンは大きな駅だが乗るホームはあちこちにある電光掲示板に表示されてるので迷うことはない。一番近いアトーチャ行きは3番線だが電光掲示板には1Minの文字が点滅しているので後1分で発車のようだ。次の11番線のに乗る。

 アトーチャ駅が終点の気になっていたが、実際は通過駅だった。相変わらず当てにならない記憶だ。立派な駅に着いたなーと思ったがアトーチャと思わなかったので呑気にしていたが、ふとこれがアトーチャかも知れないと気がついて前に座っていたセニョーラに「アトーチャ?」と聞いたらそのとおりだったのでグラシアスと言い残して急いで降りる。こういうときにポカやるので注意が必要だ。出るのを急いだときに銀の道の巡礼証明書を無くしたことをユメユメ忘れることなかれ。

 駅の外へ出て、明後日乗るための空港行きバス停をチェックしに行く。青い車体のバスが止まっているが空港行きは黄色の筈だ。調度そこへ黄色い車体の空港バスがやって来た。車体横に大きく「AERO PUERTO」と書かれているのが確認できたので一安心。バス停に時刻表があったので朝の出発時間をメモしておく。6:00 6:22 6:43 7:03 7:23 7:43 どれも20分置きだ。このうちのどれに乗ってもフライトには間に合うが6:43 か7:03がいいだろう。6時前は書かれてないが、このバスは24時間運行と謳っているので動いている筈。そんな早いの乗らないけど。

 アトーチャ駅の構内でバーガーキングの昼飯。いつも思うが、ハンバーガーって何でこんなに食べづらいのだろう。油ベトベト、ケチャップとマヨネーズだらだら。手を汚さずに食べるのは至難の業。ハンバーガーとポテトに好きなドリンクが付いて6.5ユーロ。この値段が安いのか高いのか?スペインのハンバーガー屋はコーラもビールも同じ値段で飲めるので、もちろんここはビール。

 店の前にバーガーキングの袋を不自然に持ったおじさんがいて、若者が残ったポテトを処分しようとしたら慌てて声を掛けてゲットしていた。そのあと、カップルの女の子が残ったポテトをおじさんの所まで持っていって上げていた。こういうのが自然にできるのって何だか偉いと思った。

 マドリッドは目っ茶暑い。予約しておいたオスタル・ラ・ヴェラへ行くまでに汗びっしょになる。4月に挨拶しに寄ったときは、表の扉は開いていたが、今日はロックされていた。建物は複数のオスタルが入っていて、それぞれのインターフォンが入り口に付いていた。ヴェラの1番を押して何か言ったら開けてくれる。前に来たときは愛想のいいセニョーラだったが、今日は違うおばちゃんだった。この人も感じが良い人だった。チェックインして自分の部屋とオスタルの扉の鍵と、外入り口の扉を開けるプラスチック板の3枚セットを渡される。厳重なのはいいけど面倒だなぁ。

 部屋には小さな扇風機があったので少しだけラッキーだ。日本ならエアコン、扇風機は当たり前だが、スペインに来て扇風機を見た記憶がない。上の方にはこれまた小さなテレビが壁に掛っている。廊下突き当たりにある共用のシャワーを浴びながら洗濯もして部屋に干しておく。部屋はやっぱり狭いけど、昨年泊まったオスタルより新しくて清潔ぽい。もちろんWi-Fiもある。残念なことは、この部屋には電気ポットがないのでコーヒーが飲めないことと、共用の電子レンジがないことだった。洗濯物を干す場所もないので、総合点では昨年のオスタル・コマーシャルの方が上かな。良い点はアトーチャ駅から歩いて15分程度なので、早朝の駅への移動にはこっちの方が便利。

 プラド美術館が今日、日曜日は5時から無料になるらしいので4時ころ行ってみる。通常の入り口近くで4時50迄ぶらぶらしてみるが行列ができないのでおかしいな。そこでふと、無料の入り口は有料入り口と同じにはしないのではないかと気づいて、他を探してみたところ建物反対側に長蛇の列を発見する。ありゃまここにこんなに並んでいたよ。500人くらいは並んでいそうだ。余りに列が長いし、暑い日向にも行列を作っているので、列が動き出して最後尾が日陰までやってきたら並ぼう作戦にしてしばらく日陰で待つことにする。

 列は動き出してはみたものの、どんどん後ろに追加されるので減ることはなく、むしろ長くなっている。ここで待つのは逆効果の気がしてきた。これも話の種になるだろうと、意を決してカンカン照りの列に並ぶ。10分とたたずにその後ろに200人ほどが追加された。後ろに沢山並ばれると何となく嬉しい。

 気が遠くなりそうな長い列だが、チケットを買うためにやり取りする時間は省かれるのか、列はどんどん進んだので、思ったよりずっと早く自分の番がやって来た。20人ほどを束にしてチケット売り場に行き、そこではちゃんと0ユーロのチケットをくれた。ただ中に入れてくれるだけじゃなかったんだな。前のグループは2階の入り口から入ったが、自分たちのグループは普通の入場口から0ユーロのチケットを見せて入ることができた。係がチケットのバーコードを持っている機械でチカチカッと照らしてからセキュリティーも通される。有料で入った時とまったく同じだった。中に入ってしまえば、有料で入った人たちと一緒にどこまでも見て回ることができる。なんてお得なんでしょう。スペイン太っ腹。

 プラドは2回目なので案内のパンフレットは貰わなかったが、何となくぐるぐる回って見たい作品はほぼ見られたかな。無料と言っても時間はたっぷりあり、飽きるほど見られる。歩きつかれてきたので外に出て、少し離れた所にあるというシベーレスの泉と言うのを見に行ってみる。大きなラウンドアバウトの中にあり、そこまで行くのが面倒そうなので遠くから写真を撮るだけでいいや。噴水だし。

 日陰を伝って帰りながら明日見る予定のティッセン何とか美術館の入り口をチェックする。マドリッドはプラドとティッセン何とかとソフィア何とかが3大美術館ということだが、どれもが無料開館時間を設けている。有料だとしてもシニア割引があちこちにあるし、スペイン本当に太っ腹。日本も真似てもらいたい。

※お役立ち情報
 マドリッド三大美術館無料情報(2017年)
○ティッセン=ボルネミッサ美術館  一般:12 € 割引料金:8 €
 月曜の12時から16時まで無料
○プラド美術館
 月曜~土曜18時から20時。日曜17時~19時まで無料
○ソフィア王立芸術センター(ピカソのゲルニカがある)
 月曜~金曜19時から21時、土曜14時半~21時まで、日曜10時~14時半まで無料


 何か食べたいなーと安い店をチェックしながら歩いていると、道端に噂の生ハム博物館を偶然発見。博物館と言ってるが実態はバルだ。中に入っていくと大混雑でカウンターには隙間さえない。テーブル席には日本語を喋っている二人の女性がいたが、話しかけても面倒がられるのが落ちなのでそのまま。中二階の階段を上がっていくと奥には普通のテーブル席があった。こっちは立ち飲みじゃないから高いのかなと思ったが、メニューを見るとカウンターと同じ値段だった。生ハム、クロケッタ、ポテトに目玉焼きが載ったプレート料理が7ユーロ80と安いのでお願いする。でもこれにビール2杯とパンを付けたら12ユーロ20になってしまい、普通の定食と同じになってしまった。パン代が0.6ユーロだが、パン代取られたの初めてだった。どれもこれも余りの油過多に辟易するも欲で完食。

 残りのユーロが60になってしまい心細いので100ユーロだけキャッシングする。これでお土産のスープを買っても安心だ。オスタル近くの中国人経営の雑貨店でコーラとファンタを買ってからヴィラに戻って両方飲む。夕飯が凄い油っぽかったけど、これで解消だ。


マドリッドの休日2へつづく