銀の道6 Real de la Jara-Moreras Monasterio  とうとう鎮痛薬

5月2日
 痛いときのボルタレンだけど残念ながら効果なし。日本から持参の湿布薬もガチョンだった。さすがに今日は別の方法を考える必要に迫られたので仲良しになったベンの勧める痛み止めを飲ませて貰う。この薬というのが大きい粒が5つもあって、これで一回分だそうだ。きっと半分は胃薬なのかも知れないな。これが効くようなら薬局で買ってみよう。

 この日は天気も快晴で今回一番気持ちよく歩けた。痛みの恐怖がなければ更に良いがそうも行かない。振動を与えないように注意して歩くしかない。
 天気がいいのに水溜まりが現れた。でも端っこなら靴が濡れる位で渡ることができるので何の問題もないが、快晴なのにこのレベルなら、これが雨の日だったらと思うとぞっとする。右側の水量から想像して、雨の日はここも轟々と流れる川に豹変するんじゃなかろうか。

 その先には中世時代の城らしきものが現われてきた。近づいてみるとぐずぐずの城で、何の保存もしてないようだった。スペインには余りにもこういった遺跡がありすぎて手が回らないのかも知れない。


 歩いている途中の道端にお座りして、ソロの男性巡礼が休んでいた。オラと一声掛けて通り過ぎる。その後、ガードレールにもたれ掛かって休んでいたら(座れないから)、先ほどの男がやってきて何やら話しかけてきた。英語ではないが「カミノデノルテ?」と言う単語だけが聞き取れる。顔を見上げたら信じられないことが!!

 昨年の北の道(Camino del Norte)で仲良くなったイタリア人ではないか。彼と一緒に歩いていたイタリアのセルジオの名前はフェイスブックで繋がっていたのですぐ浮かんだが、ひと呼吸置いてこの人の名前も思い出した「レンソ?レンソーッ」と大声で連呼する私の腕には鳥肌がぞっくら。
 昨年、レンソとセルジオは一緒に歩いていたのに離れ離れになって、レンソに会うたびにセルジオのことを二人で心配していたのだった。男同士だけどハグして再開を喜び合う。レンソはイタリア語しか喋らないので、私の何ちゃってスペイン語で意思疎通するほかは身振り手振りで交流することしかできないが、感動的な出会いだった。
 レンソは日本人の私が自分の名前を覚えていることにも驚いたことだろう。レンソは自分を指差して「レンソ」と言ってからこちらを指差すので私の名前を教えてくれと言ってるのが分かった。まぁ言葉が通じなくてもこのくらいの交流は可能だ。
 レンソはセルジオにも教えてやるんだと携帯を取り出してイタリア語で盛んに喋っている。私に携帯を渡されても言葉が分からないので困るところだが、それはなかった。レンソもそれは承知だろう、セルジオもイタリア語オンリーなので。
 ※昨年のレンソとセルジオ

 テレビドラマや映画なら不自然過ぎて呆れるような筋書きだが、事実は小説より奇なりとはこのことだ。遠く離れた日本とイタリアの人間が、更に遠く離れたスペインで1年ぶりに再会なんて、ちょっくら有る事じゃないだろう。嘘みたいなことが、ここカミーノでは起こります。これをカミーノマジックと言うそうです。

 同じ銀の道を同じ方向に歩いているので、また同じ宿になるだろう。チャオとニコニコ顔で言ってレンソは先へと進んで行った。私もレンソとの奇跡的な再会でほっこり幸せな気持ちになった。

 昨年、北の道でレンソの相棒だったセルジオだが、彼の方は今年イタリアを出発してからどの位歩いたのだろうか、バルセロナに上陸してサンチャゴ目指してずっと東へ歩き続けているのをフェイスブックで読んで知っている。今頃はどの辺りを歩いているのだろう。・・・実は、この40日後にセルジオともサンチャゴで再会することになるのだが、それはまた後の話に出てきますのでお楽しみに。

 モネステリオ手前の公園でレンソともう一人の巡礼が休んでいたので、チャオと一声掛けて通り過ぎる。町にある公営アルベルゲが今日の目的地だ。

 町の入口に生ハムの大きなオブジェがあった。そう、この町は生ハムで有名なのです。歩いている通りにも生ハム博物館なるものがあったが、まだ開館時間には早いらしいので素通り。開いてても有料なら入らないけど。

 この大きな街にはアルベルゲも2軒あるようだ。どちらが良いかは知らないので目星をつけておいた方を目指すが、こっちは巡礼路から大きく外れるようで暫く矢印を追いながら町はずれへと導かれる。矢印を見失ってキョロキョロしてたら道路の反対側のセニョーラから「あっちだよー」と声が掛る。グラシアス セニョーラ。

 巡礼路からはかなり離れていたが大きくて綺麗なアルベルゲだ。入っていくとすぐ若い女の子が出てきてチェックインしてくれる。ここは頑丈な木製2段ベッドが1台だけ入った部屋が沢山あって、一人一部屋状態にしてくれるようだ。部屋自体が広い上にシャワーとトイレも2部屋に1ヶ所あるし、コンセントもある。凄いラッキー。これで10ユーロなら安い。ん?銀の道って公営が全て10ユーロなんだろうか。やっと気がついたが、他のカミーノと違って宿代が高くなりそうだな。

※お役立ち情報
 Moreras Monasterioのアルベルゲ「Albergue Las Moreras」御覧のようにお勧めです。

 シャワー、洗濯したが物干しの場所が見当たらないので女の子に聞きに行ったら、スペイン語が通じないので私の部屋まで来てくれる。部屋に干すのか?ガチャンと窓を開けたらその外にロープが何本も張ってあり、それに干すそうだ。あー、なんかイタリア映画で見たような物干しか。ロープには端に滑車があって、キコキコと洗濯物を動かすことができる。意外な所で珍しい経験ができてしまった。

 一通りのルーティンが済んだので今度はスーパー探しだ。これも女の子に教わって暑い日差しの中をチェーン店のスーパーDiaへ行く。賑やかな所までは結構歩くがシエスタの時間なのにスーパーは開いていたからラッキーだ。今日も1リットルビールは欠かせない。それにゴマのかかったパン、ムースチーズ、イチゴでかパック、冷凍パエージャ2人前で7.87ユーロ。アルベルゲに戻ったら、丁度ベンが到着してきた。すぐ一緒のテーブルで昼飯を食べ始めたので、薬を貰ったお礼の積もりでイチゴを沢山進呈する。

 そろそろユーロが心細くなってきたので、また女の子に教わって銀行へ行って来る。やっぱり町の中までくそ暑い中を歩いて行く。通りのATMを操作したが2回とも失敗する。初めに多めに600ユーロと打ち込んだのが悪かったのかと、次に300にしてみたがやっぱり失敗。なんでだろう?道路の反対側に別の銀行があったので、場所を移して再チャレンジ。今度は銀行の女の子がいたので見ててもらう。そしたら最後にcontinueボタンでYESを押さなくてはならないところを、それは「続けてATMを操作しますか」と言うメッセージと勘違いしてNOを押してたから失敗したのだと分かる。今度は無事に300ユーロゲットだぜ。

※お役立ち情報
 長旅なので途中で路銀を調達することがあると思います。成田やスペインで両替したり、日本の銀行で入金したお金を外国で下ろせる方法もありますが、クレジットカードでのキャッシングが一番率がいいですよ。更に、クレカの決算日の近くでキャッシングすると、決算日までの数日分しか利息は掛かりません。もちろん返済回数は1回にしておきましょう。

 ベンの痛み止めが効いているようで、今日は座って立ち上がっても強烈な痛みに襲われていない。アルベルゲに戻って、ベンに痛み止めを買いたいから名前を書いてくれとお願いすると、IBUPROFEN 600g + PARACETAMOL 500g と専門ぽく書いてくれる。イブプロフェンって日本でも聞いた名前だった。ベンって人品卑しからぬ風体だし、医者なのかな?それは置いといて、今度薬局を見つけたら買ってみよう。


銀の道7へつづく