銀の道8  Fuente de Cantos - Zafra ブロークン

5月4日
 朝7時、空が白み始める。フェイスブックに投稿してからキッチンの冷蔵庫に入れておいた昨日の残りを出して、薄暗い食堂で立ったまま朝メシにする。相変わらず座るのが怖い。


 痛みの方は昨日、足の爪を切ったときの体勢が災いして痛みMAX!明日歩けるかなぁと心配になったが、開業医をしている友達からのメールで、持たせてくれた薬の中に痛み止めが入っている筈だと教わったので、調べたら本当に入っていた。それ飲んでボルタレンをたっぷりすりこんだら大分回復して歩けそうだ。ボルタレンは多分効いていないと思うが出来ることは何でもやっておく。あとストレッチもちゃんとやる。

 このアルベルゲは巡礼路から少し外れているのか、黄色い矢印が出口の所にひとつあっただけで後は見当たらない。少し歩いては迷うので中々先へ進まない。民家の扉が開いていたので、オラーと呼びかけて道を尋ねようとしたが誰も出てこない。でも、反対側の家の人が2階の窓から見ていて、わざわざ出てきてくれてカミーノはこう行ってこう行ってこう行くんだと教えてくれるが、長めの道案内は苦手だ。取りあえず最初に教わったところまで行って、そこでまた考える。

 そんなに大きな町でもなかったが、やっと郊外に出たところで矢印を発見して一安心する。痛くなるかと心配しながら歩き始めたが、なんとか大丈夫のようなので、これも一安心。


 遥か前方に赤いリュックの巡礼とレンソらしき人影を発見するが、この距離では追いつくことは難しそうだ。1時間歩いて次の町のCalzadilla de los Barrosに入ったところでレンソは朝飯にするらしく、巡礼路を外れて店がある方面へ行ってしまった。少し疲れたので休みたい所を探していたら、通りに鉄製の洒落たベンチがあったので、それに座ってお菓子を食べてみる。深く腰掛けると痛くなるので座り方にも注意が必要らしい。

 町を出たところで30歳くらいのオランダ青年と言葉を交わす。昨年はオランダのマルテンと言う人と仲良くなって1ヶ月くらい一緒だったと言ってみるが、私の英語でどこまで通じたか。その先ではドイツからのソロ女性が休んでいたので言葉を交わす。私は道端で出会った巡礼者には必ず声を掛けることにしている。言葉は分からなくても、それが楽しく歩くコツと思っているので。

 今度はフランスのエディスがいた。エディスは私より歩くのが遅いので、よく追い越す。そんなことが何回もあったので、きっと出発時間が私よりずっと早いのだろう。

 銀の道の名物に水溜りがあるとは先に述べたとおりだが、今度の水溜りも名物のひとつだ。他の人のブログでは靴を脱いで渡っている写真があったので、それなりの覚悟をしていた。それでも濡れないで渡れるといいなぁと思いながらやってくると、ここ数日は雨が降ってなかったのが幸いして水量が少ない。運良く飛び石を伝って渡れるようで助かった。でもこの天気でこの水量なら雨が降ったら渡れなくなるのは容易に想像がつく。渡れて良かった。

 暫く行ったところに屋根つきの休憩所があったので、ザックを下ろし靴まで脱いで大休止。水を飲みながら潰れてボロボロになったクッキーを食べる。そしたらエディスやベルギー夫婦にスペインおじさんまでやって来て、みんなで休みだした。その様子を一人がカメラで撮り出したら全員で撮影大会になる。みんな交流を求めているんだね。その横をレンソとオランダ青年が通過して行くので、レンソーっと声を掛ける。

 休んでから慎重に腰を上げたら痛みがない。何が有効だったのか分からないが結果オーライだ。明日も痛み止めを飲んで出発しよう。

 さて、泊まる積もりだったPuebla de Sancho Perezにやって来て、矢印を追いながらアルベルゲの近くまで来たら地元のスペイン人が何やら声を掛けてきた。少しの間やり取りをした結果、どうも目的の公営アルベルゲは閉鎖中のようだ。困ったがどうしようもない。巡礼仲間がバルの人に尋ねてくれても、この町には他にアルベルゲはないそうだ。レンソは広場のベンチでまったりしてるし、他の巡礼は呑気にバルで一杯やってるが、私はまず泊まるところを確保したいので先へ進むことにして、次の町Zafraを目指す。途中にはこれから向かうZafraの町にある二つのアルベルゲが地図と写真付きで紹介されている立派な看板があった。こういうのは精神安定剤になってありがたい。

 Zafraはそんなに離れていないので、1時間歩いただけで到着した。巡礼路にあったアルベルゲはすぐ見つかったが、私営のヴァンゴッホだった。出来れば安目の公営がいいのだが、そのデータはないのでここでいいや。12ユーロ。

 ここもブログで紹介されていたアルベルゲで、ネットで読んだとおりシャワーとトイレが1ヶ所に纏まってひとつだけなので少々使い勝手が悪いが家族経営でみんな感じがいいし綺麗なアルベルゲだ。早速シャワー、洗濯してからセニョーラに場所を教わってスーパーへ買い出し。お馴染みの1リットルビールにバケツ野菜、イチゴ1パック、生ハムにヨーグルト6個買っても5ユーロちょっと。ビールは冷えてないのが残念だが、今日は涼しいので悪くもない。キッチンで飲み始めたらマダムがトルティージャを一切れくれた。Wi-Fiもあるので、以前泊まった日本人のブログでここを写真つきで紹介しているのを見せてあげると喜ばれる。

 陽気なイタリア夫婦がやってきた。旦那は今日もほっぺをくっつける挨拶をしてくるがありがた迷惑だ。この夫婦は二人してバスタオルを巻いた状態で私のところにやって来て、「夫婦」は日本語でなんて言うんだと聞いている。イタリア語は分からないので、勿論それは身振りで伝えてきたので教えてやると、喜んで「ふーふ、ふーふ」と言いながら一つしかないシャワールームに消えていった。

 まだシーズン前でなのか、どの二段ベッドも下だけで済みそうなのがありがたい。腰が痛いので二段の上は勘弁だ。坐骨神経痛は薬のお陰か日にちが経っているからなのか分からないが、前より痛みが内場になっているようだ。体が対応してきたのなら嬉しいが。

 同じ部屋に6日前に一緒になったウクレレ青年(でも40代か)がいた。足にグルグルと包帯を巻いていたので、どうしたのか聞いたら「ブロークン」と言ったので骨折したのか!?詳しくは分からないが、長い時間長い距離を歩いているから足の指が疲労骨折したのかも知れないな。このあとどうするんだろう?

銀の道9へつづく