銀の道10 VillaFranca los Barros - Torremejra
              大した病気じゃないのが分かった日

5月6日
 毎日気掛かりなのは坐骨神経痛。立ち上がったときや歩き出すときは大体痛いんだけど、数分歩くと痛みは消えて絶好調になります。これが歩いているときが痛いんだとエライこっちゃだが、逆なのは不幸中の幸い。

 今日はTorremejra迄の27kmなので、ちょっと長めなこともあって少しだけ早めの6時50に出発。
 スペインの夜明けは遅い。この時間ではまだ夜明け前って感じだが、殆どの巡礼はこの時間に出発して暑くなる前に次のアルベルゲに到着したい考えだ。



 歩き出せば痛みは無くなるので快調にとばしていく。ここいらはブドウ畑が見渡す限り延々と続いていて、いかにもスペインって風景が広がっているので気持ちがいい。テレビでは東京ドーム何個分って良く比較に出されるが、そんなんじゃ追い付きません。例えるならひとつの市が丸々ブドウ畑くらいの面積です。

 こんだけブドウ作っているんだから、水とワインとどっちが安いってことになるのは理解できる気がする。それに、スペインの水はスペイン人でも不味いという人がいるくらいで、ミネラルウォーターを買って持ち歩く人さえいる。スペイン人なのに。私は水が美味いと評判の前橋市に住んでいるが、スペインの水が不味いと感じたのはホントに数回だけだ。もちろん、持ち歩いている水は全て無料の水道水。スペインの水が不味くないと言うのは凄い幸運だと思う。味音痴なのか、だったら味音痴に感謝だ。

 そう言えば、今回初めて採用した水タンクについて触れてなかった。背中のバックパックに格納して、チューブを伝わって歩きながら水が飲めるという優れものでハイドレーション・システムと言うらしい。これの存在は前から知ってはいたが、チューブを通った水を飲むことに抵抗があったので利用する気はなかったが、今回の銀の道は村と村の区間がとびきり長いことだったので採用することにした。理由は今までより大量の水を持ち歩かなくてはならないの一点。で、実際に使ってみての感想は、とってもグーです。ペットボトルで水を飲んでいた時にはバックパックを下すのが面倒で2時間に一回ほどしか飲まなかったのに、歩きながら飲めると頻繁に飲むようになり、そのため足が攣(つ)ることがなくなった。マメに水を飲むことによって、きっと他にもいい影響があると思う。何とか梗塞とか。

 アルベルゲでは前の晩に必ずタンクに補給することにしていました。もし忘れたりしたらマジで死活問題になるから。水の量も、私の場合は15kmの歩行で500ml必要なのが分かってきたので、次ぐ日歩く距離によって増減させてました。多く持つと重たいから。もし途中で水切れになると大変なので、距離が長い場合はペットボトルにも二口分の水を入れてました。これはタンクの水が無くなった時の緊急用です。でもペットボトルの水まで飲んでしまうような事態は1度しかなかった。だいたい背中の水タンクで足りてました。
 私のタンクはこれ。アマゾンで買った安物です。ドイターのバックパックには水タンクを格納するポケットと、チューブを取り出す口や肩ベルトにチューブ先端を取り付ける仕組みもちゃんと備わってました。
 銀の道を歩く人の半分がハイドレシステムを利用していて、みんな出発前にはせっせと補給してました。

 朝飯にはコッペパンにムースのチーズを挟んで、畑にポツンとあった井戸の脇に座って食べる。いかにもスペインって感じの井戸でしょう?手前の四角いのは家畜に飲ませるための枠の気がします。
 ムースは普通のチーズより水分があるのでパンが食べやすくなって嬉しい。いつでも持ち歩きたいが、暑くなる時期になったら止めたほうがいいだろう。

 エディスが前を歩いているが、体を傾けてずっと歩いているのが気になって、膝でも故障してるのか聞いたら、自分は体の中心がずれてるから傾いて歩くようなことを言っていた。もちろん、双方言葉が通じないので身振りと想像力での会話だが。

 スタートから1時間は快調だったけど、その後は飛ばしたのが禍したのか右膝が痛みだした。前にもこんなことあったけど、今回はボルタレンを持っているので気の持ちようが違う。塗って暫くしたら痛みが3分の1ほどのレベルになってきた。ありがたやボルタレン。

 それでも休憩を余り取らないので4時間も歩くとバテてきて5時間越える頃は放心状態、6時間越えでは夢遊病者みたいになりながら今日のアルベルゲに到着。なんだかいつもより疲労が激しいので疲れが溜まってる感じだ。
 そうそう、頼みの綱のM医院から返事が来ました。以下は引用、、、

 やはり、坐骨神経痛でしょうね。一番良いのは、2~3日間歩かず、出来るだけゴロゴロ寝ていると良いです。よく「3日寝ていれば治ります」と説明します。痛みには、湿布や軟膏タイプより飲み薬が効果的で、ボルタレンの錠剤かロキソニンの錠剤が効きます。

、、、引用終わり
 何よりも、坐骨神経痛がそんなに深刻な病気でないのが分かったのが嬉しい。3日寝てれば治るって、そんな程度の病気だったのか。ま、旅先で3日寝ることは難しいけど、痛みが激しいときは、このまま無理して歩くと悪化して入院なんてなったら困るなーと心配だったから。痛くても歩けるならいいや。

 TorremejraのRojo Plataアルベルゲには1時半に到着。かなりばててる。やっと見つけたのに扉には鍵が掛かっていて入ることができなかった。こういうのは時たまあるパターンで、そんな時は張り紙に書いてある所に電話するようだが、私は携帯がないのでどうしたもんかなぁと思っていたら、通りの反対側のセニョールが、隣にあるベルを押せと手まねで教えてくれる。なんだ、隣が管理人の家だったんか。すぐ女性が出てきてくれて受付してもらえる。ここは私営なので12ユーロ。夕食と朝食を付けるなら22ユーロだそうだが、もちろん私はスーパーから買ってきて食べたいので、店の場所だけ教えてもらう。シエスタまで20分しかないので、急いでスーパーへ行くことにする。おばあちゃんが一人で切り盛りしているミニ・スーパーだった。今日も1リットルビールがあって喜ばしい。日本は6Pチーズだがスペインは8Pチーズ、それに定番の生ハムにトマト2個、パンにヨーグルトまで買っても5ユーロと少し。非常に安上がり。

 アルベルゲに戻って買ったものを冷蔵庫に入れてからシャワーと洗濯。そしてお待ちかねの一人宴会。至福の時間だ。今日もみんな美味い。毎日美味い。同じものばかり食べてるので外れなんかない。

 今日は距離が長めだったが、明日から一週間は16kmから24.6kmと短めなので気が楽だ。特に明日はメリダまでの16kmと最短距離なので骨休めができそう。疲れが溜まっているようだから、この辺で距離が短いのはグッドタイミングだ。それにメリダにはローマ遺跡が幾つもあるので、見物もできるかな。メリダの公営アルベルゲは早めの十時オープンなので、ここを6時半に出発すれば手ごろな時間に到着してベッドの下段を取れるだろう。

銀の道11につづく