銀の道11 Torremejra - Merida   不法侵入?
 
5月7日
 昨日の午後5時からずっと寝ていて今は午前5時。絶賛療養中。
 今日はメリダまでの16kmだけなので、気楽あんど休養できます。M医院からまた坐骨神経痛の注意メールが届いたので身に覚えがある人は参考にしてください。
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前屈みや、椅子に座った時に痛みがひどくなるようです。
痛みが出ないような動作を意識して暮らして下さい!
一番の治療は、安静で、暇が出来たら「横向きに寝る姿勢」で
膝を楽に曲げるとOKです。でも、その姿勢で痛い時は、反対向きや仰向けも試して下さい。
 無理しなければ(と言っても無理?)、ほとんど回復します。
一日の行程を短縮し、午後はゴロゴロして過ごせばいいのかな?
椅子に座る時、立ち上がる時はかなり腰を意識して、両手で体を
支えて、「どっこいしょ!」と起きたり座ったりします。
あと、リックは出来るだけ軽くしましょう!手ぶらが理想です!!
急激な力が腰に掛かると、悪化します!
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 ありがたいですねー。言いつけを守って悪くならないようにしなくては。
 7時に出発しようとしたが、キッチンが空いてたので朝飯を食べてから出発することにする。途中の道端で食べるよりここで食べた方が椅子とテーブルがあるので効率的だ。パンにチーズを2個挟み、ヨーグルトも2個食べる。椅子から立ち上がる時は言いつけを守ってテーブルに手をついて腰に負担が掛からないように心掛ける。どっこいしょ。

 と言うことで遅めの7:25に出発。昨日しらべておいた巡礼路に向かって歩き出すと、地元のセニョーラが道が違うと教えてくれる。なんだか分からないが自分が調べたのは遠回りになるようだ。教わったとおりに行くと程なく黄色い矢印を発見する。田舎の人は親切。

 村を出て20分ほど歩いて行くと矢印のない分岐に出る。どうせどっちに行っても先で交わるんだろうと気楽な気持ちで舗装された方を歩き続けていくと、分岐があっても一向に矢印が現れないので間違ったことに気づく。それでも先で交わると思い込んでいるので戻る気は更々なくてそのまま突き進む。

 徐々に本来の巡礼路からは離れて行くような気がするので不安になるが、今更元の分岐に戻るのは嫌なので、タブレットを出して大よその方向だけは押さえておく。まぁ遠回りになってもこの先で巡礼路を見つければいいだろう。

 巨大な工場のフェンス沿いを歩くようになったので巡礼路と思われる方向にはさっぱり行くことができない。それもあって、どんどん巡礼路からは離れて行ってる気がするが、フェンスには切れ目が無いのでどうしようもない。
 周りは自然公園みたいな感じのいい道になってきたが、昨日に引き続き膝が痛いので楽しめない。面倒だが途中でボルタレンを塗ることにする。でも、効いてるのか効いてないのか分からない程度なので嬉しくない。

 金持ちらしい大きな家が見えてきた。どうも雰囲気からこの広大な土地はこの金持ちの敷地のような気がするので、訪ねて道を聞かないほうがいいらしいと野生の勘が言うので、そのまま通り過ぎると、その先には鉄の門扉があって施錠してあった。やっぱりここは私有地だったのだ。銀の道で扉のある私有地はいっぱい歩くのだが、通っていい私有地は鍵なんか掛けないのが当たり前なので、ここは通ってはいけない私有地だ。これって不法侵入なんか?バックパックとスティックを柵の向こう側に放ってから、少し低くなった針金の塀を乗り越える。ここを歩いている間ずっと見つからなくて良かったこと。

 さて巡礼路を探すかと歩き出したら、100mも歩かない内に銀の道を示す道標を発見する。なんだ、すっごく近い所を歩いていたんだな。だったらそんなにロスした訳じゃなさそうだが、彷徨った時間は1時間50分ほどなので余りいい気はしなかった。

 痛む膝を引きずりながら延々と歩き続けると、遠くにメリダひとつ手前の町が見えてきた。地図ではあの町を通過するのかと思っていたが、良かった、あの町には入らないで直接メリダを目指すらしい。そのメリダは大きな町なのだが、窪地にあるようで突然その姿を見せる。だが結局、メリダに入るまでには2時間も掛かってしまうのだが。

 メリダ手前にバックパックを背負った女の子が休んでいたので巡礼かと思ったが、この子はウクレレを持っていて、自分の歌が入ったCDを買って貰いたいようだ。でも、言葉が分からないのが分かると逆方向に行ってしまった。言葉が不自由なのは時に便利。

 メリダ市街へ入る大きな橋に続いてローマ橋が現れた。これを渡ったら左に歩いて行くと公営のアルベルゲがある筈だ。渡り終える橋の上に私営アルベルゲの勧誘をしている兄ちゃんがいたので、アチコチ痛いからメリダで2泊しようと思っていた私は、明日なら泊まるからと場所を教えてもらっておく。(公営アルベルゲは基本的に連泊は不可)

 アルベルゲには若いオスピタレロ(男はオスピタレロで女はオスピタレラ)がいて今日は6ユーロと安めだ。10ユーロ札を出したらお釣りがないと言って後でくれるそうだが、スペイン人適当だから心配になる。ちゃんとくれるかなぁ?




 シャワー洗濯したら自由時間だ。近くにスーパーがあるかと探検がてらローマ橋方面に行ってみる。橋の袂にローマ時代の遺跡があり、これは砦跡のようだ。6ユーロ出して入ってみよう。ポンペイの遺跡やトルコのエフェソス遺跡を見てるので、それに比べれば大したことはなかったが、特筆すべきは井戸だった。広場の中央にある塔の中には下へ下へと降りていく階段があって、一番下には満々と水を湛えた井戸があった。おまけに金魚まで泳いでいる。スペインに金魚がいたんだ!藻を食べさせているのかな?井戸の上に明り取りがあって、それがいい雰囲気を出している。外に出てからその明り取りがどこにあるのか探してみたけど無かったので、これは砦の外を流れている大きな川の岩壁に続いているのが分かった。


 私営アルベルゲの勧誘は地図をくれなかったので、探してみたけど見つからなかった。じゃぁ面倒だからメリダは1泊にしちゃおうかな。気楽な一人旅なので何でもござれだ。私営アルベルゲがあるらしい近くには食べ物屋が軒を連ねていて、その中に巡礼定食の看板を掲げている店があったので入っていく。巡礼定食とはメニュー・ペリグリノと書いて、一般的な定食(menu del diaより安く設定してあるのだが、でも大体10ユーロと普通の定食と大して変わりは無い。ここんちは12ユーロだった。他の店も10ユーロの定食はなさそうなので、やっぱり銀の道は食事も少し高めのようだ。

 定食は1皿目にサラダやパスタ、時にはパエージャもあって、2皿目に肉や魚が選べる。それにパンとデザートと飲み物にはワインか水が選べる。選択の幅も少ないから外国人の私には注文し易いという利点がある。店で食べるなら必ず定食だ。店によっては更に安いプレート料理を置いている所もあって、これは1皿に全て載っている簡易定食みたいなもんだ。だいたい8ユーロ以下で食べられる。

 奥に通されると3人の巡礼が食べていた。一人はあの82歳のフランス爺ちゃんで、ほかの二人は前にワインの残りをくれた夫婦だった。隣のテーブルに座り、メニューを見せてもらったらガスパチョがあったので迷うことなくガスパチョを頼む。話には聞いていたが、食べるのは初めてだったのでこれは嬉しい。出てきたガスパチョは大皿の上にトマトの冷たいスープ、同じ皿の上に小皿に入った生ハム、トマト、パンが賽の目に切って盛り付けてある。あれー、なんだか想像と違って面倒臭そうだなぁ。ウェイターさんに、これはスープの中に?と手真似で聞くと、そうらしいので全部をぼちゃぼちゃとスープの中に入れる。人生初ガスパチョだったが、思いのほか美味い。暑い夏に冷たいスープはありがたい。見つけたらまた食べよう。


 2皿目はサイコロステーキのトマトソース和え。同じ皿には定番のフライドポテトがどっさり。デザートは自家製プリンだった。ビールを頼んだが、これは別料金じゃなくて12ユーロの中に入っていた。一週間ぶりに店で食べたので贅沢した気分になる。

 店を出てから、来たのと逆方向に歩いてみたら、そこに小さなスーパーを発見!ラッキーだ。ここんちには冷えた1リットルビールがあったので、さっき飲んだばかりだけど迷わず購入。それと明日用にバナナ3本とヨーグルト4個で3ユーロと少し。

 アルベルゲに戻る道筋でエディスとフランス爺ちゃんが立ち話をしている。エディスはバックパックを背負っているので、まだアルベルゲには到着してないらしい。爺ちゃんは私が下げているレジ袋に気がついて、スーパーを教えてくれと言うので手真似で何となく教えてあげる。エディスにはアルベルゲはこっちだよと少し一緒に歩いたが、地元の人を捕まえて駅を教わっているようなので、電車でも利用するのだろうか。そこで別方向に行くと言うので分かれることになったが、エディスとはこれで最後になるかと思い、ちょっと淋しかった。

 アルベルゲは鍵が掛かっていたのでドンドンと叩いて中から開けてもらったら、さっきの夫婦の奥さんの方だった。扉の外側には張り紙があって、そこをぺロッと捲ると鍵が隠してあるのを教えてくれる。それは聞いてなかったな。夫婦は昼寝を始めだしたが、ビールとグラス2個を持って、こないだのワインのお礼の積もりで、ビール飲まない?と聞くも二人ともノーサンキューだった。自分は2杯飲んだら腹がいっぱいになってしまったので、栓をして冷蔵庫に入れておく。

 アルベルゲの兄ちゃんがお釣りの4ユーロを持ってきてくれた。良かった忘れられてなかった。結構、気になっていたのだ。

 このアルベルゲには一番奥に1部屋だけ2人部屋があって、そこには少年らしいのと少し年が行った女性が陣取っていた。女性は頭髪がグルリと刈上げになっていててっぺんだけ長い髪を束ねている。眼光するどく怖い顔をしているので近寄りがたい雰囲気ぷんぷんだ。一体どういうカップルなのか非常に興味があるが、凄いオーラを発しているので聞くどころではない。これがギャエレとルアンとの初めての出会いだったが、これよりずっと後になって凄く仲良くなるから不思議だ。


銀の道12につづく