銀の道17   Caceres - Casar de Caseres  今日は最短コース

5月13日
 カセレスのアルベルゲを7時5分に出発する。休息日が効を奏したのか出発から膝が痛くない!だが安心はできないので、最初の20分間はそろりそろりと歩いてみる。腰も立ち上がった時に少し痛む程度で注意してれば問題なさそうだ。町を出たところで少し迷うがあとはオッケー。前後には一人の巡礼もいない道が続くが膝が痛くないのでとても快調だ。


 町を出てしばらく歩いて振り返ったら、あんなに大きかったカセレスの町がやっぱりこぢんまりとひと纏まりとなって見えるから不思議だ。日本なら必ず道端にパラパラと店があるとか民家があるだろう。
 前を向くと一直線の道路の先にはどんよりした雲が厚く垂れ下っているので雨が心配されるが、降られるのなんか膝が痛いのより百倍もいい。天気が悪いのでやってくる車はライトを点けている。


 今日はショートコースだしどこも痛くないし気分爽快。最初は舗装路だったが、脇道に誘導されると巡礼路らしいのどかな道に代わる。3時間半歩いてもう今日のアルベルゲがある町、カサールデカセレスに到着。ちょっと短かすぎるが、ここを過ぎると少し高い宿賃のオスタルがある町まででも21kmは歩く必要があるので、無理は禁物。折角膝が良くなったのにぶり返したんじゃ元も子もない。

 町に入る手前で矢印を見失って迷っていたら、タイミング良く向こうから地元の人がやって来た。教えて貰おうとこちらが声を掛ける前にカミーノはあっちだと教えてくれる。その後も同じように、聞いてもいないのに3人の人が道を教えてくれた。田舎の人は巡礼に親切。

 通りに面した所に私営の立派なアルベルゲがあったが、もちろん素通り。町の中心部にやってくるとアルベルゲはすぐ見つかった。窓が全て開いており、まだ掃除中のようだ。道路をひとつ挟んだ向かいのバルが受付らしい。これは情報どおり。

 外のテーブルには3人の巡礼親父達が朝飯を食べていた。受付はここかと尋ねたら、中に連れていってくれマスターに何か言っている。やはり掃除に1時間掛かるので、入らずに待っててくれと言われる。テーブルで待っててくれても構わないそうだが、アルベルゲ前の広場には手ごろなベンチがあるので、そこに座って日記を書く。

 親父達のテーブルに移動して変な英語でお喋り。この人たちは3人組かと思ったら、二人はチャリで一人は歩きだった。私みたいにここに到着してきたんじゃなくて、休憩中のようだ。 服装を見れば分かるが、自転車組は風を切るのでジャンバーを着ていて歩きは半袖スタイル。

 自転車は歩く何倍もの距離を走れるから、途中もゆっくりできるのだろう。しかも今日は40kmだけ走るそうだ。ものすごくのんびりした行程だよ自転車なのに。と言うことは、チャリ組はこのアルベルゲに昨晩泊まって、まだ出発してないってことなんかな?

 歩きの親父は昨日は50kmも歩いたそうだ。ホントか!自転車の二人より歩いてるじゃん。と言うことは中世の町カセレス見物をしなかったのか。勿体ないと思うが巡礼スタイルは人それぞれだ。

 受付簿を見たら3人の名前があったので、このアルベルゲに泊まってまだ出発前だったのが分かった。なんてのんびりしてるんだろう。年齢も記入されてるので三人とも私より年下だったのも分かる。欧米人は老けて見えるので見ただけじゃ年が分からん。

 歩きの人は今日33kmを歩くそうだが、まだこんなところでのんびりしている。夕方までに着けばいいそうだ。私が33km歩く日は、朝からガツガツ歩き始めて午後の早い時間に到着するようにするのだが、こういうスタイルもあるんだなぁと感心する。さすが一日に50kmも歩く人は違う。

 全員とハグしてから3人とも出発していったので、バルの中に入って受付してもらう。今回最低額の5ユーロありがたや。カフェコンレチェも1ユーロと最低価格だった。アルベルゲに連れてってくれ、ベッドを案内される。中ではまだ掃除のおばちゃんが活躍中だった。おばちゃん愛想がいいしマスターも感じがいいので、とても気に入ったアルベルゲになった。アルベルゲの建物には善し悪しがあるが、管理人の人柄もアルベルゲの大切な要素だ。スペイン人は悪気はなくてもニコリともしないのがいるが(昨日のアルベルゲ)、別に怒っている訳ではないらしい。でもやっぱり笑顔は万国共通のコミュニケーションと思うぞ、昨日のオヤジ。

 アルベルゲの建物は道路反対側にある町役場とそっくりの色使いなので役場関係の公営なのだと分かる。白い建物に赤の窓枠がとてもスペインらしい。
 一人巡礼が通過して行ったが、ここの次は21.8km先のアルカンタラのオスタル泊まりか、次にアルベルゲがあるのは33km先のカナベラルだがどうするのか?

 10時過ぎてからやっと朝食。8Pチーズ4つ挟んで軽くチンしてみる。チーズが程よく溶けてとても美味い。持ち歩いているインスタントコーヒーとジュースも飲む。コーヒーを飲むとゆったりした気分になれるのがいい。精神安定剤だ。いま持っている食糧は他にバナナ3本、チーズ、源氏パイみたいのとビスケット、粉コーヒー、スープの素、粉末ペペロンチーノ3袋と2食は食べられる量がある。明日は日曜日で店は休み、加えて長距離のあいだ村がないので後で食糧追加しに買い出しに行って来よう。野菜が食べたい。

 1時にソロのフランス男性とホセ・ジヌ夫婦が到着してくる。ジヌは腰が痛いようで、明日はタクシーを利用するようなことを言っている。結構つらいようで、広場のベンチの上でストレッチをしている。まだ口を切っていない新品のボルタレンを貸してあげてから、後で塗れるように少し残った方をプレゼントしたら、こちらが驚くほど嬉しがって抱きついてきた。ジヌは痩せてた頃のヒラリー・クリントンに似ているので、若い頃はさぞや美人だったろう。

 日本はまだ夜中じゃないので、いつ電話してくれても構わないという友達にメッセンジャーを入れてみたら繋がった。こちらはイマイチ聞こえづらかったが、あちらはスペインからなのに鮮明に聞こえると驚いていた。凄いねインターネット、タダで国際電話どころかテレビ電話が普通にできちゃいます。

 ただ今昼の3時半。さっきのは遅い朝飯で今度は遅い昼飯兼早い夕飯だ。スーパーDiaから買ってきた冷凍チャーハンにアスパラ缶詰、赤ピーマン。野菜もちゃんと取ってます。

 食べた後、ジヌに乾燥機の使い方を教えて貰う。銀の道は洗濯機が無料のアルベルゲが結構あるが、使い方が分からないので残念に思う時が時々。

 隣のベッドにドイツの年配者がやって来た。どうみても70代半ばだ。イタリア・フランス人は自国の言葉しか話さない人のが多いが、英語を話さないドイツ人って初めてだ。でも、知ってるドイツ語は3つだけでもそれを喋れば必ず喜ばれる。

 初めてみる顔の二人連れとホセ夫婦が立ち話をしている。この二人はベルギーからやってきた夫婦で、このあと何日も一緒になり仲良くなっていくのだが、いまはまだ挨拶を交わすだけの仲だ。

 私は誰彼かまわずに声を掛けるが、すぐに親しくなるということは珍しい。2回同じアルベルゲになるとヤァまた会ったねと言うようになり、3回目なら友達みたいになっていく。


銀の道18へつづく