銀の道18 Casar de Caceres - Canaveral  エディスと再会

5月14日
 アルベルゲのキッチンで粉末ペペロンチーノをお湯に溶いてスープを作り、千切ったパンを浮かべる。チーズとヨーグルト2個にコーヒーで朝飯。相変わらず適当なごはんを食べているが、食料を持っていればこその朝飯だ。


 ホセ・ジヌ、それに新しい顔ぶれの夫婦と一緒に7時半にスタートする。昨日同様、今日もなだらかな丘が続くのどかな道だ。牧場の中に大きくて丸い窪みが時々見えるので、これは人工的に掘ったものらしい。家畜の水のみ場の気がするが本当はなんだか分からない。だんだん暑くなってきたので道端で半ズボンに履き替える。2時間くらいホセ夫婦と前後して歩くが、途中で軽食を食べてたら見えなくなってしまった。

 湖が見え出した頃に矢印を見失ってしまうが舗装路がすぐ近くを走っていたので歩き易いこっちを選択する。途中に一切矢印が現れなくなったので、間違いに気づくが方向からして目的の村に向かうだろう。このままこれを行ってしまおう。しかし、舗装路は照り返しが強く暑い暑い。

 先のほうで二人の巡礼が大きな橋を渡りだしたのが目に入った。間違った道と分かってても巡礼者を見つけると安心するものがある。どうもこの二人も巡礼路を見失ったことに気づいているようで、渡り終えたところで立ち止まって協議を始めている。私が通りかかったら道の反対側から声を掛けてきたが、何を言っているのか分からないのでバックパックを下ろし、中からタブレットを引き抜いてからガードレールを乗り越えて行ってみる。

 「エスパニョラ?」、スペイン人かと聞いた積もりだが「ウンポコ(少し)」と返してきた。スペイン語を話せるかと聞き間違えたらしい。スペイン人ではないのは分かった。じゃぁ「イングレス?」にも「少し」と答えてきた。結局フランス人だった。

 おばちゃん達はガイド本を持っているが、自分の位置が分からなければ使い物にはならないだろう。言葉は通じなくてもタブレットを見せて、今いる自分達の位置と目的地への道を示してあげる。巡礼路からは外れているが、この道でも行けるんだよと知っている単語だけで伝えたら安心したようだ。タブレットの地図にはこの幹線道路の隣に極細でCaminoが続いているのが確認できるが、イージーウェイと言いながら舗装路を指差したら納得したようで歩き出した。しばらくのあいだ離れた後ろを歩いていたが、二人が日陰を見つけて休みだしたので追い越してそのままぶっち切る。

 湖のほとりには閉鎖されたアルベルゲがあった。これはブログでは開業されてたのと閉鎖されてるのとの二通りの情報があったが、歩いた人の時間差で違ったのだろう。閉鎖したんならアルベルゲの大きな看板も撤去しといてほしいな。ここに泊まろうと決めて行ってみたら閉鎖されてるのが分かるとダメージが大きい。このあたりでカミーノは山道に誘導されていたが、どうせ同じ所に行くんだろうと面倒がって舗装路を歩き続ける。

 湖の干上がった所にローマ時代の大きな石橋が現れだした。かなり崩れてはいるが貴重な遺跡だろうに何の手当てもしてないように見えた。ローマ時代から続く銀の道なので、いちいち沢山ある遺跡に構ってられないのかな。ここで道端でバナナを食べてエネルギーを補給しておく。暑い日だが水もまだ残っているようだ。ハイドロシステムは気に入っているのだが、唯一、残りの水が確認できないのが玉に瑕。

 少し歩くと道は大きく二股に分かれていた。大事な場面なので面倒でもバックパックを下ろしてタブレットのGPSで確認だ。よし、右の道で間違いない。珍しくソロの女性自転車巡礼がブエンカミーノと言いながら追い越して行った。上りだったので自転車も暑そうだなぁ。少し行った先のブッシュでトイレタイムを始めたが、もっと奥に入ってやってくれよ。こっちも気を使うだろ。

 目的のCanaveral村に入ってきたが、矢印を追って行くと村の中心をかすめて村外れまで来てしまった。そこにはチェックしといた宿があったが、そこは普通のオスタルだった。アルベルゲがある筈なのだが見落としてしまったようだ。また村の中に戻りながら、歩いていたセニョーラに聞いてみると、この人はわざわざアルベルゲの前まで連れてってくれた。ムチャスグラシアス。なんだ、村の中に誘導する矢印に従わないでまっすぐ歩いてくればアルベルゲの前に出たんだった。知らないとはこういうもんだ。

※お役立ち情報
 Canaveralの私営アルベルゲに行くなら、村に入ったら矢印を追わずに幹線道路を北上すると道端に現れます。夕飯は食べなかったので知らないけど朝飯は抜群です。

 ここにはメリダで駅を探していたフランス婦人がいた。あれま、この人はメリダから電車を利用したと思っていたが、まだここに居るってことは私と似たような行程で歩き続けていたのか。7日振りの再会だ。もう何回も会っているので日記帳に名前を書いてもらう。Kohler Edith、エディスだ。フランス生まれだがスイス人と結婚してスイスに住んでいるそうだ。年は私より幾つか上に見えるがどうかな?

 このアルベルゲはベッド数が少ないこともあって、全員が見知った顔だった。昼間道を教えてあげたフランス二人組が見当たらないがビールを飲んでいるあいだに無事に到着してきたので再会を喜び合う。こんなちょっとしたことが嬉しい。

 チェックインするもベッドは上段しか空いてなかった、残念。タッチの差でホセ夫婦がやって来た。ジヌは脛に包帯を巻いているので怪我したようだが、言葉が分からないので詳細は不明。怪我の位置から推測すると、石にけ躓いて脛を打ちつけた気がする。自分もよくけつまずくのでその場面は容易に想像が付く。巡礼路には大小の石が限りなく埋まっていて(もちろん中もある)、しょっちゅうそれに爪先を引っ掛けて転びそうになるのだ。自分は転んだことはないが、そこで踏ん張るので腰に響いてとても危険を感じる。

 ホセが「あんたはカルテラ(舗装路)を来たのか」と聞いてきたのでホセ達はまじめに巡礼路を歩いてきたらしい。ちょっとズルしたみたいで恥ずかしかった。シャワーを浴びている間にホセ達は居なくなってしまったので、オスタルにでも行ったようだ。今のジヌに上段ベッドは無理だろう。

 ここのシャワーは男女別で1箇所ずつだけだが、きれいでボディーシャンプーに普通のシャンプーまで備えてあった。こんなアルベルゲもあるんだな。私営なので朝食付きで18ユーロと高めだが、それなりのことはあるようだ。

 私の下段ベッドのおっさんは、自分の枕元に荷物を置かないで、本来は上段ベッドの人が置く場所に荷物を大々的に広げていて自分の枕元は荷物もなくスッキリしている。お陰で私は少し離れた場所にバックパックを置かざるを得なかった。他の人のことを考えないやっちゃ。お前ホントに巡礼か?

 ここの自販機のビールは1ユーロとバルより安いのが気に入って3本飲ませてもらう。それに寛ぎスペースは一段下がった建物の陰になっているので涼しく快適。隣でエディスがビール飲んでるので手持ちの塩味ビスケットを提供したら喜ばれた。夕食も食べられるそうだが手持ちのバゲットにチーズを3個挟んで昼夜兼用の食事にする。痩せるはずだよ。

 今日は33kmと長めだったので46,475歩だった。軽くするために毎年腕時計は持ってこない代わりに時計機能も付いている万歩計を持ってきている。腕時計と比べると数分の1の軽さなのが気に入っている。歩数を記録することは大した意味がないと思ってるが、せっかくなのでほぼ毎日付けてはいる。


銀の道20へつづく