銀の道20 Riolobos - Carcaboso 二人だけのアルベルゲ 5月16日 Riolobosキャンプ場での朝食は受付も兼ねたバルの中で。コッペを半分に割ったトーストに小さなマーガリンとジャムが一緒の皿に載っている。それに飲み物がカフェコンレチェとそれだけ。昨日のアルベルゲの朝食とは行って帰るほどの違い。でもスペインではこれが標準だ。昨日がよすぎたのだ。 7時半、エディスと出発する。まず昨日の巡礼路分岐点まで戻るようだ。エディスはマスターから近道を聞いていたらしく、こっちだこっちだと自信があるらしい。私は戻るのが近道とは思えなかったが、エディスはちゃんとフランス語で教えて貰ったのだから信用しよう。 キャンプ場から暫くは舗装路を歩いたので向こうからは仕事場へ行くらしい車が走って来る。車がやって来るとエディスは持っているスティックをピコンと道路側に出すので危ないなぁと思って聞いたら、車が近づかないようにだそうだ。それって効果があるのかなぁ?逆に危険なんじゃ。 昨日の分岐を過ぎてしばらく歩くと道から外れた土の道に入っていく。これこれと言っているようなので教わった近道を見つけたらしい。 ずっと高原のようななだらかな道を行くと、遠くにガリステオの城壁が見えて来た。城壁が町の中心一段高くなった所にデーンと構えていて、その周りを民家が取り囲んでいるように見える。近付くと城壁の上にある凸凹が確認できるようになり中々の威容だ。この凸凹は日本の城にはない作りで、この凹凸の隙間から敵に矢を射かけるらしい。町の入り口のバルで謎のカップルが朝食にしていたので、オラと挨拶して通り過ぎる。 外から見ると凄いが城壁の中へ入ってみると世界遺産と言う程でもないような印象で、古い建物がひとつだけある他は本当に城壁だけが売りの感じだ。城壁の上を歩くのは自由らしいが、上がるための石段は狭く手摺もないので踏み外したら真っ逆さまになりそうなので止めておく。(右の写真) 広場に面したバルが店開きを始めたので休んで行く事にする。コーラ1.4ユーロ。店によってはビールより高い。近くに銀行があったので、そろそろキャッシングしたいので様子を見に行ってみるが、まだ開くには早いようなので諦める。 ベルギー夫妻もやって来てエディスとお喋りしている。日本ではベルギーと言ってるが、夫妻のを聞いているとベージーと発音しているようなので、私もこれ以降はべージーと真似してみる。そうそう、エディスは良く「アーウィ!」と言っているが、これは越路吹雪がシャンソンの「ろくでなし」を歌ってたときに良く聞いたフレーズだったのを思い出す。フランス人って本当にアーウィって言うんだと新発見した。エディスが言ってる場面から想像すると「あらまぁ」とか「あーやっぱり」と言う意味らしい。私も真似して「あらまぁ」の場面でもないのに面白がって時々「アーウィ!」と言ってみるとエディスが呆れたような顔をしている。 町の外へ出るところも城壁にくり抜かれた石の門をくぐって抜けるのだった。本当に城壁で守られている町なんだな。 そこからはもうずーっと舗装路を歩き続ける。途中、車でやってきた人が私営アルベルゲのチラシを配っていた。この日の巡礼なんて何人も歩いていないのに車で営業してたんじゃガソリン代の方が高くつくんじゃなかろうか。 次の村に入ってきたので、目的の村に到着したかと思ったが、タブレットで確認したらまだ手前5kmの村だった。この村には私営のアルベルゲがあるようだったが勿論通過する。村を抜けるとまっすぐな道がずっと続き、暑さと舗装路に加えて直線道路は余計に疲れる。前が見えすぎるのでモチベーションも駄々下がり。 舗装路脇の貴重な木陰でベルギー夫婦が休んでいたので、自分も隣で休ませてもらう。15分遅れてエディスもやってきたので、大きな木陰で全員で地べたに座って並んで休む。なんとはなしに楽しい。 Carcabosoの町に入ってきたが公営アルベルゲはすぐ見つからなかった。エディスと二人でうろうろする。こんな時はタブレットのGPSが頼りだ。電波さえキャッチできれば簡単に見つけることができる。宿を探している途中でベルギー夫妻に会ったので、一緒に泊まれるかと喜んだが、彼らは私営アルベルゲに泊まるそうだ。あのチラシのアルベルゲなら効果があったと言うことか。 今日は公営のアルベルゲMAJALAVA。スペイン語のjaはハ行なのでマハラバと読むのか?マハラジャなら分かるがマハラバ?手ごろな時間2時に到着する。近代的で綺麗なアルベルゲだ。朝食付きで15ユーロ。もうこの値段にも慣れたので驚かなくなった。お陰でユーロの減りが早い。 2時だけど今日の宿泊者は私たちが最初だった。受付簿に書かれているエディスの誕生日を見たら私より半年早い生まれだった。じゃぁ同い年という事か。5・6才上かと思ってたよ。急にエディスが若く見えるようになったからいい加減なもんだ。 ベッドルームには2段ベッドが6台一列に並んでいたので、二人して両端の下段をゲットする。端っこが好きなのは日本人だけじゃないようだ。二人の間にはベッドが4台も並んでいる。シャワーは男女共用のが一部屋に2つあるのだが、着替えのスペースがないので入り方を考える。エディスに先に使ってもらい、その間に買い物とキャッシングしに行くと伝える。 銀行はすぐ見つからなかったので、地元の人に教えてもらって辿り着く。今回もどういう訳かATMの操作で失敗する。中にいた行員を呼んで無事に300ユーロゲット。手持ちの現金が100ユーロを切っていたので早めに追加できて安心した。銀の道は予想以上に金が掛かるし、これから後は小さな村が数日続くので銀行にありつけない可能性があり、路銀が尽きてしまう心配があったのだ。ここでキャッシングできて良かった。スーパーはシエスタに入ってしまったのでガチョン。 アルベルゲに戻ったら、エディスとオスピタレラが共にランチに行くそうだ。留守は私だけになってしまうので、「巡礼が来たらあなたがオスピタレロね」と冗談を言われる。それも面白そうなので、誰かやってこないかなと期待したが、そういうことはなかった。 5時を過ぎたのでスーパーへ買出しに行って来る。今日も1リットルビールに8Pチーズ、串刺しピクルス、たまねぎ1個、スープの素、トマト、6個入りコッペパン、それとファンタオレンジで合計8.69ユーロ。串刺しピクルスは高いしそんなに旨いものではないのだがたまに食べたくなる。日本の漬物が食べたいからかな。一人だけ残ったアルベルゲで一人宴会をする。 夕方、私営アルベルゲに泊まっているベルギー夫妻が遊びに来たので、みんなで明日の巡礼路探しに行く。黄色い矢印が途切れたところに地元の年寄りが固まっていたので教えてもらう。ベルギー夫妻はスペイン語が達者なので、こんなときは強い味方だ。エディスはスペイン語しか話さない地元の人に対してもフランス語を貫き通す。 こんなに大きくて近代的で奇麗なアルベルゲなのに、今晩の泊り客は私とエディスだけだった。もう5月も半ばで巡礼シーズンは始まっている筈なのに閑古鳥が鳴いている。やっぱり銀の道は歩く人が極端に少ないのが分かる。 銀の道21へつづく |