銀の道23  Baños de Montemayor - Alba oraya  山の中

5月19日
 ここのアルベルゲは朝食が付く。まぁいつものパンとコーヒー程度なんだが一応食べられれば取り合えず歩き出すことができる。中国系カナダの子が私の腰を心配してくれてる。ここは温泉があるので効くんじゃないかと言っているようだが、こんな山の中で連泊しても面白いことはないだろう。でもエディスはここに連泊して、今日は快適な温泉付きホテル泊まりのようなことを言っている。へーそうなんだ。

 今日は12.4kmのショートコースと決めているのでゆっくりと8時に出発する。村の中から既に急坂が続いていて200mほど前にはベルギー夫婦が歩いているのが見える。相変わらず立ち止まっては向かい合ってお喋りをしているので滅茶苦茶遅い。少し歩いたところからは村全体が見渡せて中々いい景色。湯気が立ち上っている所があるので、あそこに温泉があるらしい。

 ずっと山の中だがショートコースと言うのが頭にあるので気楽でいられる。次の村には早速アルベルゲがあった。ここは10kmごとに3つのアルベルゲがあると言う珍しい行程。今日は12.4kmだが明日は20.2kmで明後日にロングコースが控えている。長距離に入る前に全員が泊まるであろうアルベルゲがあるので、どこに泊まるかは旨く調整する必要がありそうだ。村外れには巡礼用のモニュメントがあった。ネットの巡礼記でも見たことあるやつだ。遠くから見ると蛇がのたくってるようで気味悪かったが、近くで見たら巡礼路の地図だと言うのが分かった。センス悪っ。


 深い山の中、土の道を歩き続けるので、地形そのものをなぞって歩いている感じだ。橋もトンネルもない。こんな山道なのにローマ時代の道の名残があるようで立派な案内板が立っていた。峠みたいのはないので遠望は望めないけど風景は山独特で悪くない。石で囲われた斜面に羊が放牧されてたり牛も馬もいる。細い巡礼路には時々越えられない水溜りがあるが、大体そういう時は少し戻ると先人が付けた迂回路があるものだ。そんな迂回路を今日はふたつ歩いた。


 最後に現れたラスボスの急坂を越えると程なくAlba Sorayaの村が見えて、私営アルベルゲは村の入り口にあった。11時半、私が一番乗りだった。宿代10ユーロで夕食も10ユーロで7時から。村にはスーパーがないのでお願いする。

 宿の主人は今日はペリグリノは何人くらい居るかと聞いてきたので、昨日泊まったアルベルゲの人数を言ってみる。だが実際は自分の知らない巡礼が何人も泊まったり通過して行った。これらは今日通り越してきたアルベルゲに泊まっていた人たちかも知れない。

 ベルギー夫婦もやってきて一緒のテーブルでビールを飲む。夫婦はここには泊まらずにひとつ先の村にあるアルベルゲに泊まるそうだ。同じテーブルには来年四国遍路に行くというドイツ人もいる。ベルギー夫婦の奥さんが自分は75才と発表してくれた。グレート。

 昼飯にはコッペパンに8Pチーズを2個挟んで食べる。パンがパサパサで飲み込み辛いがチーズの水分が助けてくれる。

 いつも遅く到着する中国系カナディアン、今日は記録破りの6時半に到着してきた。私と同じ宿をスタートしたのに到着が7時間も遅い。どー言う歩き方をしてるんだろう。昼寝でもしない限り、こんなに掛ることはないだろう。

 全部で十数人の宿泊者がいるのに、夕食を申し込んでいたのは意外や私を含めて3人だけだった。他の人たちは食料を持っているようで、キッチンで何か作って外のベンチで食べたりしている。一緒に食べたのはフランス婦人とイギリス紳士。けばいフランスおばさんは私のバックパックは何キロあるのかと聞いて、やれ重すぎるだの減らせだのとやかましく言っている。自分のは5kgで巡礼路を短距離だけ歩いているらしい。食料は持たなくてもバルで食べればいいなんて言ってるので、この人は本当に銀の道を知ってるのかと思った。身なりも巡礼ぽくなかったし。察するに、このおばさんは人のことを思ってと言うより自分の考えを押し付けたいだけの気がした。

 おばさんが夕飯に出たポークソテーをパンに挟んでボカディージョにし出した。明日の弁当にするらしい。それにヒントを得て、自分も自前のパンを出してきて肉とレタスを挟んで明日の朝飯用にする。口うるさいおばさんも役に立った。包むためのアルミホイルはここのおカミさんから貰うことが出来た。

 イギリス紳士はとても知性を感じる人で、英語ネイティブなのに分かりやすい英語を喋ってくれた。イギリス人でもこういう喋り方が出来る人もいるんだなぁと感心する。聞き取りやすい発音と、文をなるべく短くしてくれるので私でも何となく理解できる。この人は昼間、寒さを感じる屋根つきの屋外に居たので、寒くないのと聞いたところ、私の住むイギリスは太陽が出ないのでこの方がいいんだなんて言ってた。イギリスに白夜はないだろうが、そういう地域もあるんだなぁ。寒いのでオーナーは暖炉に火を入れてくれた。たき火や暖炉の火が燃えるのを見るのは大好きだ。


銀の道24へつづく