銀の道24 Alba Soraya - Fuenterrble de Salvaterra アンドレア 5月20日 Alba Soraya7時25スタート。女の子2人組も一緒にスタートする。昨日聞いたところではアルメニアと思ったが、ドイツだった。スペインでドイツはアレマニアなので聞き間違えたようだ。この二人は若いのでさすがに歩くのが早く見る見る離されてしまう。 ゆるい坂を上ったり下りたりしながら1時間以上歩いて、そろそろ朝飯にしたいなぁと手ごろな所を物色していたら大石があったので腰掛ける。昨日作っておいた豚肉ソテーを挟んだボカディージョで、一緒に挟んだレタスとトマトが水分が多くて目茶美味い。ドレッシングも効いている。その前を昨日一緒だった夫婦巡礼とソロの男性が通り過ぎて行った。同じ方向を進むので、歩いていると中々出会わないが、こうやってストップしていると会う確立は格段に上がる。 この辺りの家畜用の石柵には所々に立っているローマ時代の石柱が柵の一部として転用してあった。凄いことをするもんだスペイン人。次の村にはバルがあって、アルベルゲの看板も掲げている。ベルギー夫婦はここに泊まったようだ。今の私より1時間半は先行しているから追いつかないかな。 村に入るとジャーマンシェパードが向こうから吼えながらやって来た。犬は後ろを見せると危険なので向き直って日本語で「止まれ止まれ」と言ってみる。近くまで来るが掛かっては来ないで牙を剥いてやがる。石をぶつけたくなった。すぐ近くに飼い主のおばちゃんが居て、何か声を掛けたら戻っていったが、犬は飼い主が近くにいると調子付くから困る。良かった、村人が見ている手前こっちもスティックで攻撃の構えを取らなかったので。 今日もお決まりの大きな水溜まりが現れたが、その隣に立派な歩行者用の鉄の橋ができていた。まだ最近作られたもののようだ。きっと巡礼者のために作ってくれたのかも知れない。こんなのをわざわざ作るくらいだから、ここは雨が降ると大きく水没してしまうのだろう。ありがたいことです。 大きな岩のある分岐点で矢印が意味不明なところが出てきた。カップルの巡礼がいたので、互いにGPSを取り出して協議する。結果は、どちらも先に行ったところで合流するのが分かった。案の定、しばらく歩いた先で合流する別の道が現れた。丁度そこには別の道を歩いてきたベルギー夫婦らしき人影が見える。遠すぎてハッキリとは分からないが、立ち止まってお決まりの協議をしているので間違いないだろう。歩くのが遅い夫婦だが、さすがに離れ過ぎているので中々追いつかず、町に入る手前でやっと追いつく。 3人で一緒にアルベルゲを探そうとしていたところに向こうからエディス登場。エディスは2日前に温泉ホテルで連泊した筈じゃ?ここに居るのはおかしいだろう。更に我々より先に到着してるので、キセルしたのはすぐ分かったが、逆に自分から「ユーはコチェ(電車)を使ったのか?」とトボけたことを言っている。エディスはバックパックを背負っていないので、既にアルベルゲに入ったようだ。これからスーパーへ行くと言うので、我々はアルベルゲを目指す。 ここは銀の道では有名なアルベルゲらしい。大きくてユニークな建物が通りにあったのですぐ分かった。ベッド数70で夫婦ものには個室が提供されるようだ。チェックイン(ドナティーボ:寄付)して部屋に案内される。大きなベッドルームで2段ベッドが10台ほど入っていた。早い到着なので好きなベッドを取り放題。夜中に一度はトイレに起きる私はトイレに近い下段をゲットする。 村のスーパーはペリグリノ(巡礼者)と言う名前だった。今日も1リットルビールは外せない。それとトマトにバナナ4本、生ハムに珍しくレンズ豆の瓶詰めで7.37ユーロ。今からの昼飯と明日の行動食だ。夕飯と明日朝はアルベルゲで出してくれるので有難い。 アルベルゲのキッチンは受付の隣の小さな部屋だった。食堂は大きなのがあるが、そこは全員が食べるための部屋で普段は使わないらしい。受付の隣のテーブルで食べることにさせてもらう。後から何人も受付にやってくるので、ちょっと肩身が狭いかな。 謎のカップルも到着してきたが、大部屋ではなく二人用の個室だった。ワンルームをゲットしたねと何となく言ってみると笑っている。個室には違いないが、すごく狭い部屋だったので、大部屋とどっちがいいか微妙なところだ。 古い教会ツアーがあるそうなので参加してみる。案内人はアルベルゲのオスピタレロだった。入口外にローマ時代の遺跡がある教会で、遺跡の説明をしているが何を言っているのかさっぱり分からない。当たり前だが。 聖堂の中に入っていくと木彫りの大きな人形が何体もあった。これはお祭りで神輿の上に設置して使うようだ。鐘楼にも上がらせてくれ、ここでも何やら説明している。サービス満点。 教会の床には平たい大きな石が敷き詰めてあり、その下は全て墓のようだ。スペインの教会にはこういうスタイルがある。日本人からしたら足もとに遺骸があるのは余り気持ちのいいものではないが、所変われば品かわるなんだろう。言葉は分からなくても見ごたえのあるツアーだった。オスピタレロは修道士らしい。 アンドレア 戻ってきてボーっとしていると中庭に見たような人が!坊主頭だけど女性だ。エッ、顔も見覚えがある。この人は日本人のお嬢さんが数年前にサンチャゴ巡礼したブログにずっと登場していた女性だとすぐ分かった。特徴あり過ぎ!何故か私はこの人の名前を覚えていた。「アンドレア!?」声を掛けると怪訝な顔をしている。「ユーの名前だよ、アンドレア?」答えはイエスだった。鳥肌が立ちそうだった。いや、実際立っていたかもしれない。片言英語で説明すると「エリコ」と言うので、そうだと言うとアンドレアは小さな紙片を出して見せた。そこにはエリコさんの名前や住所がアルファベットで書かれているようだ。なんでこの紙を持ち歩いているのか謎だったが、あとでエリコさんにネットで報告したら、アンドレアは毎年巡礼先から絵葉書を送ってくれるので、その絵葉書に貼り付けるための紙片なのだと教わった。 いやー、事実は小説よりも奇なりがまたあった。アンドレアも遠く離れたスペインで(アンドレアはオーストリア)知らない日本人から自分の名前を言われてさぞやビックリしたことだろう。アンドレアはスマホを持っていたので、エリコさんのサイトを教えて上げたらそこに自分の写真を見つけては「これ私だよ」と嬉しそうに報告してくれる。その後もずっとエリコさんのページを見て楽しそうにしていたので私も嬉しくなり、心がほっこりするようだった。 夕食は全員で大きなテーブルを囲んで食べるスタイルだった。アンドレアは私の隣の席にやって来てくれたし、食後にミサに行ったときも私の隣にやって来てくれたので私との出会いを喜んでくれているのが分かった。この道は本当に不思議で面白い。カミーノマジックは実在する。しかも何度も。 銀の道25へつづく |