銀の道28  Salamanca - Calsada de Valdundel その名はギャエレ

5月24日
 サラマンカ・ホテルアメファ。7時から浴槽にお湯を張って腰のために半身浴としゃれ込む。こんなことするの初めてだが、こんなことが出来る宿も初めてかな。まだ若干腹が重たいのでヨーグルト2個と残りのオレンジジュースを飲んで軽めの朝飯とする。

 8時出発。昨日見つけておいたマヨール広場出口にある道標を踏んで歩き始める。キョロキョロしながらも大きなサラマンカの脱出に成功する。昨日一日休養日にしたので疲れが取れている筈だが妙に体が重くバックパックも重たく感じる。休養日に身軽な格好で歩いたので感覚が狂ったか?


 スペインにある丸い建物は殆どが闘牛場だ。日本で言えば国技にでもなるんかな?でも闘牛は野蛮だし動物愛護の観点からも問題だとして、現在ではスペイン国内でも賛否両論あるそうだ。バルのテレビで闘牛中継を見たことがあるが、確かに残酷極まりなく唖然とした。

 スペインで町の境界を示すのは左のような看板だ。サラマンカの看板だが、サラマンカから出る時は赤い斜線があって、入る時には町の名前だけが記されている。最初見た時は斜線の意味が分からなかったが慣れると分かりやすい。

 曲がるところの表示が不鮮明だったので巡礼路を見失う。歩いて行く途中にCastellanos de Villiquera村の表示に従い曲がることにする。自分の方向感覚とは違っていたが、GPSで確認したら間違ってなかった。どうも自分の勘はあてにならない。

 12時にCalsada de Valdundel村のアルベルゲ到着。2段ベッドが4台、定員8名だけの小さなアルベルゲだ。エディスに謎のカップルと他にも既に入っており、下段ベッドは空いてなかった。残念。上のベッドに寝袋を広げていたところ、謎のカップルの女性が私の腰を気遣ってくれ下段と交換してくれる。素直に好意を受け取らせてもらう。ありがたや。歩き出せば絶好調になるのだが、座るとテキ面なので上段ベッドの上り下りはまだ恐怖だ。

 ここは早い時間から開放されていて、巡礼は好きな時間にやってきてベッドやシャワーを利用できる私の大好きなスタイルだ。オスピタレラが後からやってきてチェックインできる。今日は5ユーロ。銀の道の中盤までは高いところが多かったが、ここいらから下がると言うならありがたい。

 村のスーパーを探して今日も1リットルビールにトマト、平たい桃2、ヨーグルト4、でっかいパプリカと卵3個で4ユーロ。パプリカを刻んでぺペロンチーノの素で味付けして卵を入れる。今日は即席ベジタリアンになってみる。食べすぎ注意報発令中なので丁度いいくらいの量だ。ひとつしかないテーブルで、みんなそれぞれ自分たちの食料を食べる。

 謎のカップルに日記帳に名前を書いてもらう。Gaelleはギャエレと読むそうだ。顔も迫力あるが名前も凄かった。慣れるといつも笑顔で接してくれるのでもう怖いと思うことはなくなって、会えば親しみさえ湧くようになった。少年はLoanでロアナと読むらしいがハッキリしない。

 一眠りして起きたら、エディスが7時のミサに誘ってくれるので付いていく。ギャエレとカナダのおじさんも一緒に村の教会まで歩いて行く。今日は水曜日とド平日にも関わらず教会の中は地元の人たちでいっぱいだった。60人くらいはいるようだ。田舎の人は信心深い。ミサが終わったと思ったら、後ろの方から男性コーラスが始まった。前の席には女性が陣取っていて、それに呼応して女性のコーラスも始まる。男女コーラスの立派なコラボだ。この教会は男女の席が前と後ろにハッキリと分かれていたことをこの時気づく。

 帰りに、男女の席が前と後ろだったとギャエレに言ったら、フランスも昔はそうだったと教えてくれた。そうそう、ギャエレはスペイン人かと思っていたがフランス人だった。もちろん少年もフランス人。でも怖くて二人の関係は聞けなかった。ギャエレが日本はどうなんだと聞いてきたので、日本は左右に分かれていたけど今はミックスと答えたら、フランスも同じだそうだ。みんなで途中のバルに寄ろうと言うので私は2ユーロのコーラを飲んでみる。高いコーラだな。スーパーのビールなら2リットルだよ。

 エディスがトマトと豆のスープで夕飯にしてるので、私は前にエディスがやってたのを思い出して、ナイフとフォークでトマトを食べてみることにする。意外と食べやすいのに驚いた。こんな簡単なことなのに生まれて初めてやってみるのだから習慣とは恐ろしいものだ。

 毎朝早く出立するエディスがバックパックの詰めなおしを始めたので私も明日の準備をしておくことにする。暗いうちに出発する人は寝ている人を起こさないようにバックパックをキッチンなどに運び込んでやるのだが、真っ暗なベッド周りをライトで照らしながらの準備だと忘れ物の危険度が増す。明るい前日にできることはやっておくのが肝要だ。エディスは明日の宿は私営アルベルゲを予約したそうだが、私は安い公営を目指す。

 いつも枕の下の入れておくタブレットが凄く発熱していたのを発見する。こんなに熱くなったのは初めてだ。電源を入れたらバッテリーがゼロで立ち上がらない。何の理由か分からないが暴走したようだ。すぐには電源が入らなかったが、運を天にまかせて充電をしてから電源を入れたら無事に起動してくれたので助かった。このタブレットには地図情報からアルベルゲの位置、旅に必要な各種テキストデータが入っているので巡礼の必需品なのだ。起動しなくなった時の対応策をあれこれ考えてしまった。


銀の道29へつづく