銀の道30  El Cubo del Vino - Villa nueva de Campean ヒョウ稲妻

5月26日
 6時からベルギー夫婦エディス達と各人持っている食料で朝メシ。雨装備をして小雨の中を7時10に出発。暗~い。雨降りなのに朝焼け。

 カナダの男性と一緒にスタートしたが、この人は歩くのが遅いのでさっさとぶっちぎる。相変わらずのんびり歩いているベルギー夫婦を抜き、暫くいった先でコリアのおばちゃんと少しの間喋りながら歩く。この人とは昨日が初対面だったが、前に仲良くなった韓国男性を知っていた関係ですぐ打ち解けられる。おばちゃんだけど私より幾つも若いようだが勿論そんなのは聞かない。英語が達者だがコリアの喋る英語は聞き取りやすいので楽しく会話ができる。でも私の知らない単語が出てくるとそこでストップするので勘弁。

 雨は段々と強くなってきて、遠くで雷が光っている。それも横に走る稲妻が見えるので、高い山でもないのに変だなぁと思った。あんなのがこっちに来なくちゃいいがと願う。段々おばちゃんとの距離が開いてきて、そのうち一人旅に。

 エディスに追い付いた頃から雷が激しくなり雹まで降ってきた。イテテテテだ。運良くすぐの所に枝を張った木があったので逃げ込む。5分ほど木の下で雨宿りするが、エディスはサバビエンとか言いながら歩き出してしまう。雷は恐いけど雨は平気のようだ。しかし、本降りの中、粘土質の丘が続く泥道なので慎重に歩かないと滑って転んで偉いこっちゃになりそうだ。一番酷い状況の時に二人なので精神的に助かった気がした。そう考えるとコリアのおばちゃんは一人でこの天気の中を可愛そうだな。

 エディスと矢印のない分岐点で協議している最中にコリアのおばちゃんが追いついてきて、その後は三人で一緒に歩いていく。ほどなくアルベルゲの有る村にたどり着く。窪地にある村は突然姿を現すので拍子抜けする。今日はこんな天気なのでショートコースで助かった。

 村に入ったすぐの所に私営のアルベルゲがあって、エディスはここに泊まるそうだ。私とおばちゃんは今日も安い公営だ。小さい村だが公営の場所が分かりづらかったので村人に教えてもらったら脇道に入った所だった。管理人はいないけど扉は開いていて好きなベッドも取れるしシャワーも使える。一番好きなタイプのアルベルゲだ。

 エディスが後からやってきた。あれ、私営はどうしたのと聞くと、レセプションに居た男の態度が悪かったようだ。ギーギーと妙な擬音を出してそれを表現している。それでこっちに来たと言うことか。今日は全員泥まみれだが皆一緒なのでそれも楽しい。

 外から戻ってくるとコリアおばちゃんが男性用シャワー室から出てきたところで私を見たら慌てている。女性用のシャワーはいつまで経っても水しか出ないので男性用を使わせてもらったそうだ。アルベルゲなんか男女兼用が普通なので全然オッケーと伝えた(つもり)。

 熱いシャワーを浴びて洗濯。午前中の苦労が嘘みたいだ。太陽も顔を出してきたので折り畳み式の物干しを道端に広げて洗った物を広げてから、エディスとおばちゃんが先に行ってる村唯一のバルへと足を運ぶ。そこには2日一緒だったカナダ男性と若い女子がトスターダ(トースト)の昼飯を食べ終わったところで、これから次のサモラへ出発するところだった。

 女子のバックパックの背中に面白いものを発見。マッサージ、ドナティーボと読める。この子はマッサージをして路銀を稼ぎながら巡礼しているようだ。エディスが腰が痛いんだからやってもらえばと目でサインを送っている。でも坐骨神経痛はマッサージじゃ治らないだろう。もみ返しと言うのがあるそうだから、逆に悪くなったらそっちの方が心配だ。面白い背中の写真だけ撮らせてもらう。

 エディスはここで定食を食べるそうだが私は食料があるのでアルベルゲに戻ってバゲットにチーズとコーヒーで軽い昼飯にする。コリアおばちゃんも同じテーブルで似たようなことをしている。

 2時間遅れてベルギー夫婦がやっと到着してきた。歩くのが人一倍遅いのに道に迷ってずっとカルテラ(舗装路)を歩いてきたそうだ。天気が悪い中、距離も長くて大変だったらしい。2段ベッドが5台の小さなアルベルゲだが、夫婦の分も下段が空いていたので良かった。

 パンを食べてはみたけど、どうも物足りないのでまたバルへと足を運ぶ。エディスと一緒のテーブルにギャエレ達も座っていた。二人はプレート料理を食べていたので、幾らなのか聞いたら6.5ユーロと安いのでそれを頼むことにする。それとグラスのビール。ベルギー夫婦もやってきて、私含めて6人でひとつのテーブルを囲む。全員がフランス語なのでちんぷんかんぷん。

 ギャエレ達はこれからサモラまで歩くと言っている。えーっ、サモラまで19kmもあるんだよ。分かってるの?現在3時なので歩くのが早い二人でも到着は8時だろう。本気か!それなのに急ぐ風でもなく?気にお喋りを続けている神経がわからん。少年にサモラには何時に着くのか聞いたら、少し考えてやっぱり8時と言っている。事態を理解はしてるようだ。サモラのアルベルゲには予約もしてないって言うし、ギャエレがスペイン語を話せるのでそれで気楽でいられるんか?

 夕方になったら(と言っても5時はまだ真昼間)トラックの販売車がアルベルゲの隣にやってきたのでみんなでお買い物。でもさすがに品薄。ヨーグルト4つで2.95ユーロもした。移動販売だから仕方ないんか。オレンジジュースは6個単位でないと売らないと言うので諦める。ヨーグルトは果実が入っていて旨かった。ただ高いだけじゃなかった。

 コリアのおばちゃんに日記帳に名前を書いてもらう。ハングルでカンヨンソンと読むらしい。64歳なので私より3つ年下か。和風マリアカードを進呈する。首を虫に刺されて赤くしているので友達の開業医が持たせてくれた塗り薬を貸してあげる。日本に帰って来てから日記をパソコンで起こしていたらおばちゃんはメルアドを書いていてくれたのを見つけたので繋がったら写真を送ってやろう。

 またみんなでバルへ行く。何しろ小さな村なので、村唯一のバルしか遊ぶところがない。3人でコラカオを飲んでいるとギャエレ達がやってきた。あれ、サモラに行ったんじゃなかったのか。さすがに無謀と思ったようで、この村の私営アルベルゲにチェックインしたそうだ。それが正解だよ。ビールをエディスと私に奢ってくれチンチンしようと言っている。チンチンはスペイン語で乾杯だ。サモラへのハード歩きがなくなったので気が楽になったのかも知れないな。この写真はギャエレとエディスが楽しそうに笑っていてお気に入りの一枚だ。

 8時に管理人がやってきて、やっとチェックイン手続きができる。ここは5ユーロと安かった。やっぱり歩き始めた頃より宿代が安くなっているらしいので嬉しい。


銀の道31へつづく