銀の道34   Granja de Moreruela - Tabara  良いベルゲ タバラ

5月30日
 6時50、グランハのアルベルゲを出発。町の中からアストルガ方面とサナブレス方面への道標がしつこく何度も出てくる。この町が分岐点なので、ここで違った方へ歩き出したら次に合流するのは360km先のコンポステラだ。取り返しが付かないと心配してくれてるのが分かる。ムチャスグラシアス。

 今日はTabara迄の25.3km。遠くに昨日の宿で一緒だった夫婦連れを見ながら歩いて行くが、二人が日陰で休んだところを抜いたらそれ切り一人歩きになる。


 暫く行くと湖が出てきて、その両側には切り立った岸壁が現れる。ダイナミックなその風景はギリシャ神話の映画に出てくるようなひとコマだ。素晴らしい景観に写真を撮りながら進むと、これまた雰囲気のある古い橋が登場。またまた写真を撮りながら橋を渡り終えるとあらぬ方向へ矢印が伸びている。

 えっ、このガードレールの切れ目を通って橋の下へ行けと?誰もが不審に思うのか、矢印が普段の5倍付いている。マジか!と思うが巡礼路を外れるのは嫌なので滑落しないように注意深く降りていく。まぁそれからが凄い道だった。岸壁の道なき道を登り降り、幅が30cmしかなく踏み外すと湖へボチャンの綱渡りのような道も進む。もちろん、落ちないよう夢中なので残念ながらここで写真を撮る余裕はない。











 対岸から見たときはギリシャ神話みたいだなんて喜んで写真を撮っていたのに、結局この崖の上までやって来てしまった。こんな所で足を踏み外して湖に落ちたら誰も助けは来ないだろう。良かった、無事に越えられた。安心した所でバナナを出してエネルギー補給。ひと休みしてたら野生の鹿が10m前を通りすぎて行く。野兎は何度も見たが鹿は初めてだ。そのくらい人が来ない道と言うことか。こんな道だと手押し車を引きながら巡礼しているドイツの夫婦やオランダのベンには通れないだろなと思った。

 日本人が銀の道を歩いたブログは幾つか読んだことがあるが、誰もこのスペシャルな道に言及してなかったので、前の人たちは舗装路を行ったのかも知れない。ここでお役立ち情報:雨の日にこの道は歩かない方が懸命です。滑って転ぶだけじゃ済みません。最悪、死んじゃいますよ。

 ずっと歩いて行くと村が見えてきた。どうやらRosa村のようだ。ロサからタバラへは14km、3時間か3時間半と言うところだ。50分歩いて次の村に入る。ここはFaramontas de Tabaraらしい。ここからタバラへは7kmで、既に遠くにタバラの町が見えている。もうすぐだと分かってとてもラッキーな気持ちになる。この辺りは珍しく村が頻繁に現れるので安心して歩くことができる。ちょっと疲れているので村のバルでコラカオ1.5ユーロを飲んでエネルギー補給しておく。少し休んで腹に何か入れると力が蘇る。

 この辺りにも新しい線路の敷設現場があった。前に見たのと同じ線路が続いているのかも知れないな。平坦で特徴のない道を延々と歩く。

 タバラの町に入るとすぐ教会があった。ムセオと書いてあるので古い教会を利用した博物館のようだ。スタンプが欲しいので中に入ってみる。受付に女の子がいてスタンプを押してくれるが勝手に展示物の説明まで始め出した。暇でしょーがない所に私が現れたってことなんか!?スペイン語なのでさっぱり分からないので有りがた迷惑なんだがな。ここは入場料はドナティーボらしく受け付けに置かれたザルに硬貨がいっぱい入っている。聞いても分からない説明だったけど、ドナティーボと言いながら0.5ユーロ硬貨を入れてみる。公営アルベルゲの大まかな位置も教わっておく。

 町の中心らしい本通りを越えると教わったとおり広場があった。そこに「A→」の矢印を発見。広場からは大分離れていたが、矢印を追いながら1時少し前にタバラのアルベルゲに到着。写真で見るよりずっと新しく見える建物だった。後ろにビルが写っているがアルベルゲは茶色い平屋の建物だ。オープンは2時となっていたが、門の前に車が停まっていたのでオスピタレロがいるのかとフェンスの中に入っていくと出迎えてくれた。「2時?」と尋ねると入ってもいいと言ってくれたので嬉しくなる。暑い中を歩いてきたので一刻も早くシャワーを浴びたかったから。

※お役立ち情報
 Aが付いた矢印はアルベルゲへ導くもので巡礼路とは別ものです。
 アルベルゲを探すときはA付きの矢印を探しましょう。

 和風マリアカードを「サンタマリア デ ハポン」と言いながら進呈する。すると壁にいっぱい下がっているアクセサリーを指してスペイン語で何か言っている。理解できないでいると、いま上げたカードを自分の胸に当てて、次にアクセサリーを私の方に指すのでプレゼントしてくれると言うのが分かる。矢印が描かれた皮製のネックレスタイプのを頂くことにする。これはバックパックに吊るしているホタテ貝の隣に下げることにした。

 夕方7時からセナ(夕飯)で、朝食に洗濯までしてくれてドナティーボで良いそうだ。年配の男性一人で運営しているアルベルゲらしいが、本当に奉仕の精神でやっているのが伝わってくる。今日のタバラには夕飯付きで15ユーロのホテル情報があったので、サラマンカでのゴージャス一人部屋が思い出されて少し迷ったが、こっちに来て正解だった。

※お役立ち情報
 タバラの公営アルベルゲは町外れにありますがお勧めです。きっと良い思い出になることを受けあいます。

 早速シャワーを使わせてもらう。洗濯しなくていいのはとても楽チン。のんびりしてたら2時10分だった。しまった、シエスタに入ってしまった。仕方なくバルでサラダとビールで昼飯にする。食後にアイスも食べたので合計11ユーロもした。高っ!エンサラダが6だったからビールが3でアイスが2か!?ぼったくりだろう。思いがけず高くついたがWi-Fiがあったのでゆっくりする。

 5時半になったのでスーパーへ買い物に出かける。石鹸が終わりそうなので小さいのを買っておく。缶ビールにコーラ、ヨーグルト2で4ユーロほど。夕飯と朝メシはアルベルゲで食べられるし、明日のサンタマルタ迄は22.6km。行動食にはバナナが1本あるので明日はこれで問題ないだろう。その先はアルベルゲは有っても37km店がないらしいから、サンタマルタで多めに買うのを忘れないようにしなくては。

 後からやってきた巡礼者はイギリス人3人とスイス人男性にドイツの女性。最後にカルロスも到着してきた。イギリス組はソロで歩いていたが巡礼中に知り合ったらしい。スイスの人は左手が親指しかなく手のひらもそこだけだった。なので力仕事ができないのか腕全体がとても細い。でもその手を隠すようなことはせず上手に使って色々なことをしていたし明るい人だったのでメンタルが強いんだなぁと尊敬した。イギリス組は大人しい人と賑やかなおっちゃんがいて色々話しかけてくる。ウェールズの人らしく、ウェールズドラゴンがどうのこうのと言っているが何となくしか分からない。この後この人のことはウェールズドラゴンと呼ぶことにした。この人たちとは18日後にコンポステラで再会する。

 全員の洗濯物が入った洗濯機が止まったので、オスピタレロが料理の手を止めて大量の洗濯物を外のロープに干しだした。ドイツの女性が「私達が干すからユーはユー飯を作って」と提案する。私も暇なので干すのを手伝ってみる。一緒に何かをやると一体感が高まって楽しい。女性(50位)は昨年は北の道を歩いたそうだがバスや電車も使ったらしい。聞き取れず理解できない顔をしていたら簡単な英語にしてくれるのが嬉しい。

 このアルベルゲは2段ベッドが7つ。今は全て下段が埋まっている。このまま追加がやってこないと上段が空いているので快適だな。明日のサンタマルタの公営が16ベッドあるので、このメンバーがそのまま移動するだけなら下段ゲットは余裕だ。

 夕食にはなんとパエージャを作ってくれた。これは嬉しい。スペイン人が作ってくれる本場のパエージャだ。ワインにコーラ、スペインの地酒まで出してくれて楽しくワイワイと過ごすことができた。強い酒なので私が一口飲んではむせるのが受けている。オスピタレロに感謝。
 下の写真、酒瓶からして手作り感が漂っているのが地元の強い酒です。




銀の道35へつづく