銀の道39 Asturianos - Requejo  こりずにまた迷う

6月4日
 アルベルゲでヨーグルトだけ食べて7時5に出発。玄関前のイスに座っていたギャエレが手を振って見送ってくれる。妖精みたいなイタリアじいさんと歩き始めるが鈍いので先行する。昨日からずっと山の中なので最初から上り下りの連続。座るのに手頃な石があったのでビスケットを食べながら小休止していると、爺さんがお愛想を言いながら通り過ぎて行った。私より10歳くらい上に見えるが元気だ。

 しばらく歩いていくと100mほど先で昨日のアルベルゲで一緒だったスペイン人らしい夫婦が道端で協議をしている。分岐がある訳でもない山の中の一本道なのに変だな?声を掛けてみると、ここはカミーノとは違うんじゃないのかと言っている(らしい)。夫のタブレットには日本で良く見ていたEROSKIサイトの地図がダウンロードされていた。自分も心配になったのでバックパックからタブレットを引っ張り出してGPSで確認すると確かに巡礼路からは外れていて、今日の中継点サナブリアは逆の方になっていた。3人で100mほど戻ってみると、藪に隠れた道標を発見する。これを見過ごしたので直進してしまったのか。道標には右折のしるしがあり、巡礼路は何気に歩いていると見落としてしまうような細い道だった。私もこの夫婦がいなかったら何処までも歩いていってしまったことだろう。危ないあぶない。後続の巡礼者のために夫の方が道標が見えやすいように藪を払っていた。

 その縁でしばらくの間、この夫婦と一緒に歩くことになった。二人とも写真が好きなようで所々で足を止めて写真を撮っている。奥さんの方が村の中にあった教会の扉にペトロとパウロが刻まれていると教えてくれる。

※何日も後にやっとわかったことだが、この二人はフランスとイギリス人でお互いに夫婦でも何でもなくソロ同士だった。そして数日後に私は二人とは何日も一緒に行動する仲になっていくのだからカミーノとは不思議なもんだ。

 10時半、サナブリアの町に入った所で私営のアルベルゲが道沿いにあった。2日前に一緒だったスペイン人が歩いていたので声を掛けてみる。彼はここに泊まるらしい。私は次のレケホ迄行くと伝えたら、15kmもあるから止せと言われるが地図では12kmだ。3時間で着くはず。到着予測は1時半なので手ごろだ。バモスと言って分かれる。

 道の先に聳え立つような丘があって、その上に城が建っていた。下から見上げるのでなかなかの威容だ。写真を撮っていたらギャエレ達二人がやって来た。この町のバルで何か食べるそうだ。私も何か食べたいかなと思いながら町を通り越してしまう。この町は城があるくらいだから観光地になっていた。土産物屋には欲しかった絵葉書が売られていたが、簡単に見つかるとすぐに買わなくてもいいかなな気持ちになってスルーしてしまう。アルベルゲのある町で買えばいいやと思ったが、そのあと何日も絵葉書に出会うことはなかった。町で食べることもできなかったしチャンスに後ろ髪はないのだ。

 町を抜ける所でカミーノを見失っていることに気づく。て言うか、町に入った所から既に矢印はなかったので、すぐ巡礼路を外れてしまったらしい。店の前にいる人に教えてもらったが、この人は巡礼路を知らなかったと見え次の町方面だけ教えられたので矢印がない舗装路を延々と歩く羽目になる。

 とんでもない方向違いだと取り返すのに何時間もかかる。そうなるのを心配してタブレットを出してGPSで2度も確認しながら歩き続ける。坂を上ってから長い下りになったので、地図の高低表だとレケホ村へ続く道はそうなっているので、もう着くか、意外に近かったなと糠喜びしてからガッカリすることになった。しかし、この村の中にも矢印を発見できたのでうれしくなる。本線とは違うがここも巡礼の派生路になっているようだ。

 遠くから子犬がキャンキャン吼えながらやって来た。小さいのに凄い強気。こちらが立ち止まることなく近づいていくと後ずさりして逃げていき、犬の縄張りから離れて行くとまた吼えながら追っかけてくる。昨年、ポルトガルの道でこんな風に良く吠える子犬を無視してたら後ろからズボンに噛みつかれたことがあったので、子犬だからと油断してはいけない。近づいてきたら振り向くとぱっと逃げていき、それを4・5回繰り返している。やかましいやっちゃな。こんなのは片っ端からパチンコで撃ってやったらどんなにスッキリするだろう。

 やっと自分の地図にも載っているオテロ村を示す表示が現れてきたので気を良くする。ここからならオテロ村を経由しないで直接レケホを目指すほうが合理的らしいので、分岐は曲がらずに直進する。ほどなくTrife村の表示が出たらもうレケホの村が見えてきた。これでやっと一安心。今回も迷った時間が長かった。なかなか学習しない。

 村に入っていくと買い物帰りのおばさんが「アルベルゲ?」と声を掛けてくれたので「ムニシパル(公営)」と答える。へー、たまにはこっちから聞く前に声を掛けてくれることもあるんだな。着いて来いと言うので案内してくれるようだ。一緒に歩いているとバックパックを背負っていない身軽な格好ながら夫婦の巡礼らしい二人が歩いてきたので「ペリグリノ?」と声をかけたらそうだった。おばさんは「連中はプリバドさ(私営)」と言ったので、何で分かるんだろうと不思議だった。アルベルゲに着くと中に一緒に入っていくので、お客を連れてきてやったよ的なことなのかと思っていたら、パスポートを出してと言うので、ここでおばさんがオスピタレラだと言うことが分かった。どうりで。

 今日は5ユーロだった。安いと嬉しい。ベッドルームは広くて2段ベッドが10台並んでいた。先着はまだイタリア人が一人だけだったので気に入ったベッドをゲットする。シエスタの2時が近づいているので、シャワーの前に買い物に行かなくては。おばさんにスーパーの場所を教えてもらいサンダルに履き替えて出かけていく。このサンダルも百均で買った安物だが、買ったときは形もしっかりして見えたが履いていると底がぺしゃんこになって小石交じりの道では痛くて仕方がない。どっかでもっとマシなのと交換したいな。

 小さなスーパーで買い物していたらギャエレ達二人が到着してくる。ギャエレはアルベルゲにチェックインする前に買い物しちゃうんだな。私は何よりもチェックインしないと落ち着かないのでアルベルゲ到着が最優先だ。

 二人はいつもスーパーから食材を買ってきてはアルベルゲでしっかり料理を作って食べている。私も同じように節約してるが、簡単に食べられる物しか買わない私は二人とは月とスッポンのようだ。今日買ったのは缶ビール2、トマト2、ヨーグルト4、オレンジ、コーラ、パン、ハム、チーズで9ユーロ。今日のアルベルゲにはキッチンも食堂もないのでベッドルームのイスで工夫して食べる。と言うことは、ギャエレ達はアルベルゲに入る前に買い物してしまったのでキッチンが無いことを知らないのか。

 夕方、村の中をぶらついて明日のカミーノを確認してたら2泊一緒だった夫婦が私営アルベルゲから出てきたのでオーッと再会を喜ぶ。デンマークの何とかからやって来たそうだ。名前を聞いても発音が難しくてまったく覚えられないが一緒に写真を撮らせてもらう。デンマークと言えば人魚姫の銅像とグリム童話しか知らないので「グリムグリム」と言うと何となく通じているようだ。昨日は私が巡礼路を見失った城壁の町サナブリアに泊まったので今日はショートコースだと言ってた。その前は私と同じアストゥリアスだったので2日ともショートじゃん。奥さんは細身で体力なさそうなので無理はしなさそうだった。小さな村なのに私営と公営あわせてアルベルゲが3つもあってホテルもある。何かの拠点なのだろうか?

 オスピタレラがやって来て、明日のカミーノ重要情報を教えてくれるそうだ。レケホから少し行った先のカミーノは進入できなくて舗装路を行き、8キロ行ったところでカミーノに復帰できるそうだ。また舗装路を行ってPadorneloを1.5km過ぎたらカミーノに入る。舗装路はその先Aaberosから通行止めになって4キロ迂回するそうだ。カミーノを行けばルビアンまでの距離も短くてすむそうだ。書き留めない限り覚えられない自信がある。


銀の道40へつづく