銀の道45  Xunqueira - Ourense  オンセンの町オウレンセ

6月10日
 シュンケイラのアルベルゲ。朝飯にスープを作りパン、トマト、ヨーグルトにトムから貰ったオレンジジュース。なかなか充実している。7時5分に一人でスタートする。5人でオウレンセで連泊する手筈になってはいるが、ほかの全員はすでに出発していた。村外れのアルベルゲから出て、昨日買い物した村の中まで入ってきたら巡礼路を分かってないことに気がつく(こらー)。村の広場まで来れば自然と道は見つかると思っていたが甘かった。田舎の村なのに矢印もないし困ったな。それでも広場の辺りをグルグル回り何とか矢印を見つけ村を脱出する。



 けもの道みたいな巡礼路を進んで行きやがて舗装路にでる。村の手前に早朝から開いてるバルがあったので休憩していくことにする。今日もコラカオ。バルではコーヒーは飲まなくなって朝ならコラカオが定番になった。何故かと言うとコラカオは牛乳にココアの粉を入れるからエネルギーになる。カフェコンレチェにもたっぷりの牛乳を入れるが割合から言ったらコラカオの圧倒的勝利。小さなクッキーを4枚もおまけにつけてくれる。

 外のテラスで飲んでいると、見たことないグループ巡礼が前を通って行った。みんな割と軽装。オウレンセからサンチャゴまでは100kmちょっとかな。巡礼あるあるで、100kmを徒歩で歩いたことが証明されると巡礼証明書が発行されるので、ここ銀の道でもオウレンセからスタートする人はいるようだ。

 山から下りてくる道なので、オウレンセの町並みが遠くに見え出した。やっぱりとても大きな町のようだ。ずっと山村ばかり伝って歩いてきたので久しぶりの都会だ。はるか遠くに大きく白い蒸気が立ち上っているのが見える。オウレンセ温泉の湯煙かな?でもこれは近くまでやって来たら工場のただの煙突だと判明する。それにしてもでっかい煙突だ。何の工場なんだろう。

 町の手前から公道レースみたいのをやっていて、派手にペイントした車が猛スピードで走りまくっている。なんと日本のスズキが殆どのようなので意外。一団が走り去って暫く経つとまたやってくる。やかましいし危険も感じる。いいんかこんな公道でレースやって。

 都会の道路わきを歩くのは疲れる。休みたいけど車がバンバン走っているので落ち着かないし少し危険も感じる。大きな道路反対側のテラス席から手を振る人がいた。見るといつものドイツの夫婦だった。誠に愛想がいい。彼らもオウレンセに泊まるんだろうな。

 いい加減何かを食べたくなったのでガードレールの内側に腰掛けてカステラとバナナでエネルギー補給をしておく。近くに道路標識があって、オウレンセまで4kmとあった。既にオウレンセに入った気になっていたが、まだ手前だったのか。誰かのブログに「行けども行けどもオウレンセ」と言うのがあったが、誠にそのとおりだった。

 広い道路から村方面へと導いてくれる矢印を見つけたので喧騒からやっと開放される。車も通らないような村の道を歩いていたら後ろから声が掛かった。トムとリリアンが一歩入った路地のバルで休んでいたのだった。そこからは3人で一緒に歩くことになる。都会に入る手前で一緒になれて良かった。もしかしたらあそこで私がやって来るのを待っててくれたのかな?

 もうすっかり都会の真ん中にやって来たので巡礼路もわからなくなってしまった。私が必殺GPSを見せてこっちだよと言ってるのに、トムは独自の構想があるらしく、こっちこっちな感じで聞く耳を持たないようだ。リリアンはお任せモードに入っている。トムの脳内GPSも精度がいいようで、ほどなく街のど真ん中にある温泉プールまでたどり着いた。へー、ここだったんだ。多くの若者が水着で楽しんでいるが、さすがにここには年配者はいなかった。私もここに入るには少し勇気が要りそうだ。

 少し歩くと広場に出る。たぶんスペインにはどこにもあるマヨール広場だろう。広場に面した会堂から着飾った一団がワイワイと出てきた。どうやら結婚式を終えた人たちのようだ。どういう訳だか関係者らしき女性から中に招き入れられる。着飾った人たちの間をすり抜けて入らせてもらうのだが、その人たちと比べると情けないくらいなギャップがある。バックパックを背負ったむさくるしい格好で場違いと思われるほどの立派な建物の中に入るので、いいのかなな気分だ。恰好を見れば巡礼だと言うことは分かってるだろうが、我々はフランス、イギリス、日本からの巡礼者だと伝える。三人とも別々の国からやって来た外国人たちだとは少し驚いたかも知れない。

 大きな部屋は何か特別な会議が行われるようで超豪華。何か説明してくれてるようだがさっぱり分からない。そこへ女性の上司と思われる紳士が登場。一緒になって説明をしてくれるが、これもスペイン語なのでチンプンカンプン。トムとリリアンはスペイン語が堪能なので理解してるようだ。

. 女性の方にカメラを渡してみんなで一緒に写真を撮ってもらう。この日の夕方になって分かったことだが、この紳士はオウレンセの市長だった。会堂は市の議事堂で大きな会議室はオウレンセの市議会議場のようだ。それでやたら立派だったのか。この時は全然分からなかったので、市長と一緒に写真を撮って貰ってもその価値も感激も感じなかったのが残念。

 ギャエレ達は一緒じゃないし、取り合えず我々3人が予約してもらったオスタルを見つけよう。GPSもあるし市内地図もあるので苦労もせずに見つけることに成功する。チェックインはスペイン語が堪能な二人におまかせだ。私とトムがツインで一人19.5ユーロ。リリアンは一人部屋なので少し高いようだ。

 トムと二人部屋になったがトムの英語は殆ど聞き取れない。イギリス英語はアメリカ英語より聞き取りやすいと噂だが、元々トムは活舌が悪く口の中でモゴモゴ言うのでさっぱり分からない。暫く前に一緒になったイギリス紳士はとても分かりやすい英語を喋ってくれたが、トムには聞き取りやすい英語という発想がないらしい。トムは歳も歳だし幾らか脳軟化なんかな。(こら)

 近くに大きなスーパーがあるのを確認済みなので買出しに行ってくる。缶ビール2に今回の旅で初のバケツ野菜、ヨーグルト4、コーラに具入りのパンを2個買って帰る。このオスタルは鍵が面倒くさい。まず受付がいる目の前の扉に鍵が掛かっている。鍵は一部屋に1本なのでトムが出かけるかも知れないので私は持って出てない。最初の扉は受け付け嬢がカウンター内のスイッチで空けてくれるが中に入って部屋の階へ行くための扉にまた鍵が。それは受付から遠隔操作できないので来てもらって開けて貰わなくてはならない。そして最後が部屋の鍵。面倒なので鍵をもう1本貸してと言って見るも、それは不可能らしい。二人で一部屋だと面倒くさいことこの上ない。

 部屋にリリアンがやって来た。温泉に入るための水着を買ってきたそうだ。え、温泉に行くことになってるの?いつ?今日の5時にマヨール広場に集合して無料の温泉まで行くそうだ。言葉が分からないので仕方ないが、そんな楽しいことが決まっていることを知らなかった。水着はデカトロンで安く買えるそうだ。デカトロンはヨーロッパでは良く知られたデパートらしい。場所を教えてもらってトムと行ってくる。地元の人にちょっと教えてもらって到着。私は一番安い3.95ユーロの無地を買うが、トムは色の切り替えが入ってポケット付のを買った。7ユーロらしい。爺ちゃんだけどイギリス紳士なのでお洒落のようだ。

 オスタルへ帰るのかと思ったが、トムは携帯の何とかが必要とかで携帯の会社を探すようだ。あっちかこっちかと付き合わされるが、部屋の鍵はトムしか持ってないので先に帰るという訳に行かないので面倒くさい。途中で黄色い郵便ポストを見つけたので、絵葉書を買うことを思い出した。オウレンセは大きな町なので、この町で買っておかなくては。

 レジ袋にタオルとサンダルを入れてマヨール広場に集合。5時だがスペインの夕暮れは10時なので遊ぶには十分ある。ギャエレ達は少し遅れてきたが、ここから乗るバスの時間迄には余裕がたっぷりのようだ。ソコトレインと言う、ヨーロッパにはあちこちにある蒸気機関車を模した観光バスで移動するそうだ。これは何度も目にしたが乗るのは初めてなので嬉しい。郊外に3つある温泉施設のどこまで乗っても0.85ユーロと格安。

 ガタゴトと観光客の視線を浴びながら無料のテルマエへ。大きな露天風呂で100人位の人たちが湯に浸かったり水着のまま芝生の上で寛いでいる。想像してたのよりずっと開放的で楽しそう。隣には日本語で「温泉」と書かれた4ユーロのテルマエがあったが、無料の温泉が目の前にあるのに利用する人いるのかな?有料の温泉は日本の温泉技術者を招いて作ったらしい。それで「温泉」の文字があるのか。オウレンセのオンセン。何かお茶目な響きがある。

 湯船の余ったお湯を川原に放流してるので川原にも幾つも小さな湯船が掘ってあった。係りが常駐していて湯の温度を計っては水を加えて調整しているので無料じゃ申し訳ないようだ。長いこと湯に浸かっているとノボセて来るので、その水を両手に受けて頭に掛けるのが気持ち良かった。プラスチックの手桶を持っている人がいるけど、このためだったのか。

 日本と違って温度は低めかと想像してたが適温だった。汗が流れるほど浸かって腰の治療に専念する。効いてくれるといいのだが。のんびり浸かった後はみんなで芝生の上で陽に当たりながら長い時間まったり。誰もタオルで拭く人はいなくて自然乾燥させてから上に着ていた。合理的。

※お役立ち情報
 無料温泉は水着着用です。短パンなど水着以外で利用すると係に注意されて出されるそうですよ。貴重な体験ができるのでオウレンセに来たらぜひ入ってください。

 帰りは普通のバスがやってきた。でも料金は同じ。帰りもユニークな橋の横を通る。この橋は見事にカーブしたあの上を歩けるそうだ。おーこわ。

 帰りはマヨール広場じゃなくて別の所で降りたが、この近くで何かイベントがあるようだ。ギャエレはそれを知ってたのかな。祭りの出店があったので5人で野外テーブルを囲んで一杯やる。トムが最初にポルトガルワインを全員に奢ったので私も2杯目を全員に奢ってみる。女性人はワイン屋の隣で焼いていた肉を皿にひと盛り買ってくれた。結局そんなことを何度も繰り返す。トムがルアンにワインを勧めた時、ギャエレがマジ顔になって止めていたので二人の謎がまた深まった。あの止め方は友達じゃなくて保護者の顔だったな。

 昼間、会堂を案内してくれた紳士がやって来た。あれ、あの人は昼間の人だよねとみんなに確認する。その紳士がやってくると店の人たちがやたらと一緒に写真を撮りたがっているので、どういう人なんか聞いたらオウレンセの市長だった。フレンドリーに会堂を案内してくれて謎だったのがやっと解明した。まぁ知らなかったのは私だけだったようだけど。

 自分だけでオウレンセにやって来たなら海パンも買えなかったろうし、歩きで行けない郊外に温泉があると知った時点で入るのは諦めただろう。みんなのお陰でとても良い一日になったので仲間に感謝だ。しかも明日もみんなで過ごす楽しい一日が控えているのだ。


銀の道46へつづく