スペインのモーニングサービス

 歩き24日目の6月6日。最近では遅めの7時半に出発する。大都市レオンをやっと抜けた辺りのバルでカフェコンレチェを頼んだら、小さなコップにオレンジジュースと小さいケーキも出てきた。頼んでいないのが出てきたので聞いたら、それでいいらしい。日本でいうモーニングサービスのようだ。スペインにもこういうサービスがあるんだなぁ。朝飯の足しくらいにはなるのでありがたく頂く。
 ずっと歩いた道端にある普通の民家の軒先にスタンプが置いてあり、水や菓子まで自由に食べていいらしい。普通の人が巡礼者のために接待してくれてるようなので、スタンプを押させてもらっていたら窓が開き、一緒に置いてあるノートに名前を記入してくれと言ってるようなのでアルファベットと漢字で記させてもらったが、Japanと書くのを忘れたので日本から来たと伝わるかなぁ?以前、エミールが「みっしゃん、日本語があるよ」と言うので見たところハングルだったし、欧米人にはハングルと漢字の見分けがつかないらしい。
 12時半ころ、ビジャダンゴスの手前で朴親子と4日ぶりに再会したので息子とハグして再会を喜ぶ。もうハグにも慣れて、そうすると握手というのは他人行儀な気がしてくる。となると、欧米の人からしたら日本人がするお辞儀の挨拶は随分と他人行儀で相手との間に壁を作って見えるんだろなぁと感じる。この親子はもっと先まで行ってる筈だが、聞いたらレオンで2泊したので私が追いついたのが分かった。しかし朴親子と会うのはこれが最後となってしまった。アンニョンシスターズも一緒に休んでいたが、この子達とはハグするほどの仲ではないので手を上げて挨拶しておく。食料が尽きていたのでここでオレンジジュースを飲んでエネルギーを補充しておく。その後、アンニョンシスターズの後に付いて歩いていたら泊まろうと予定していたビジャダンゴスの村外れまで来てしまい、あやうくを通り越してしまいそうになった。タブレットのGPSで確認したら、やっぱり公営アルベルゲを通り越していた。てっきりアンニョンシスターズも私と同じアルベルゲを目指しているのと勝手に勘違いしていたが、もっと先の村を目指すようだ。何度も同じ宿になったアンニョンシスターズともこれを最後に会うことはなかった。
 数百メートル戻って宿を捜しあてる。チェックイン後、シエスタの始まる2時が近づいていたのでシャワーの前に買出しに行っておく。シエスタ、とても迷惑。いつものようにビール2、トマト、リンゴ、生ハム、サクランボを買い4.9ユーロ。シャワーを浴びて一通り飲み食いしてからスパゲティを作ってみる。アルベルゲにあったのはケチャップでなくトマトジュースだったが、トマト味なので使わせてもらい塩を余計に入れればそれなりの味になった。料理の応用も少しは出来るようになったかな?
 口淋しいので自販機のカフェコンレチェを飲もうとしたが、これは自分でカップをセットしてからコインを入れないとカップなしの所にコーヒーが出てくるので危険なのが分かった。すんでの所でコーヒーを無駄にするところだった。このアルベルゲで巡礼初日に泊まったフランスのジットで一緒になった韓国のチューヤンと19日ぶりに再会する。こっちは名前を覚えてたが、チューヤンは忘れてた。ひどいぞチューヤン。チューヤンは二十代なのでもっと先を歩いているかと思っていたが、レオンで妹と待ち合わせて巡礼を一緒に再開したそうなので、それでこちらと日程が合ったようだ。19日前に会った時もアルベルゲでカップめんを食べていて、今日も相変わらずカップめんを食べている。


中世の祭り

 歩き25日目の6月7日。今日は日曜日。ドミンゴは商店が閉まっているので要注意だ。下手をすると喰いっぱぐれる。出発前に宿で変なパンとプラムを食べておく。7時25、ビジャダンゴスを出発。途中、オレンジを食べながら休むほかは、ほぼずっと歩き続ける。10時15、目的のオスピタル・デ・オルビゴに着いてしまう。3時間しか歩いてないし、疲れてもいないので勿体ない気がしないでもないが、ガウディの巡礼博物館があるアストルガには絶対に泊まりたいので後の工程を考えるとここで泊まるのがいいのだ。そこそこの規模の町で、町の入口にはカラフルな横断幕が幾重にも張られていた。町中へ続く長くて古い石橋を見たら有名な決闘の伝説がある橋と言うのを思い出した。ここだったんだぁ、良かった気がつかずに通り過ぎないで。通りの大きな掲示板には騎馬に乗って大きな槍を持った中世の騎士の絵があったので間違いないと確信する。
 中世のころ、ある騎士が王妃のために、この橋を渡ろうとする騎士100人と決闘して全て打ち負かしたという伝説らしい。橋は凄く長いが、水が流れているところは少ししかなく、乾いている広場には中世のテントらしいものが幾つも張られてたり、中世ぽい旗が立っていたり沢山の人達がいるので何かお祭りがあるようだ。もしかしたら、その伝説のお祭りかも知れないと心が躍る。
 公営アルベルゲは巡礼路沿いで町のメインストリートを貫くところにあったので迷うことはなかった。張り紙に11時受付とあるので待っていると、その前を何人も巡礼達が通り過ぎて行く。この先のアストルガまで行くのかな?ここからだと17.3キロの道のりなので4時間はかかるだろう。日が高くなってからの4時間はきつい。
 扉が開いたので中で待たせてもらうことにして入っていくと、20分も前なのに受付を開始してくれた。5ユーロ。どこのアルベルゲもこうしてくれると助かるのだが、こういうのは滅多にあることではない。冷たい水までもらえたし、持参の和風マリア様のカードを進呈するととても喜んでもらえた。このカードを上げると例外なく喜ばれるので、わざわざ日本から持ってきて本当に良かったと思う。すぐにトーマス親子もやってきて、自分のベッドの隣になった。知り合いと同じ宿なると言葉は片言で大したコミュニケーションが取れなくても凄く嬉しい。
 祭りを見物しに出かけていく。雑貨屋で缶ビールを買って1ユーロ出したらお釣をくれないので待っていたら「ウンユーロ」と言われてしまった。いつもはその半額程度なので、雑貨屋なのに祭り価格か!?広場に祭り用の大きなテントが張られていて、中で大きなチョリソーを焼いているので食べたくなり頼んだら、パンに挟んでボカディージョにするそうだ。飲み物を聞かれたが、さっきの缶ビールを持っているので見せたらOKだった。大きなチョリソーで腹いっぱいになる。


中世の祭り

 通りや出店には中世のコスプレをした人が売り子になっていて、一般の人たちも沢山コスプレして歩いている。日本で言えば夏祭りに浴衣で歩いているようなものなのかな?十字軍の格好をした人はでかい剣まで携えてるし、相当な力の入れようだ。あれ?暫く前に山の中で会ったマルセリーノが中世の巡礼の格好で座っているので「マルセリーノ」と声を掛けるけど、私のことを覚えてたのかなぁ。前回は撮れなかったが、今度は一緒に写真を撮る。

 テレビで一度見たことがある、丸いスカートみたいのを空中でグルグル廻す大道芸や本格的なベリーダンスまで道端で披露していてとても楽しい。子供用のメリーゴーランドや前後に大きく揺れる海賊船もみんなヨイショヨイショと手動なのが微笑ましい。離れた橋の下でも色々なイベントをやっているらしいので暑い中を面倒がらずに意欲的に歩き回る。もしかしたらこんな祭りに出会えるのは一生に一度のチャンスなので長いあいだ見物しまくる。この町に早めに着いて調度良かったのだ。
 アルベルゲに戻って自販機のビールを飲み、一休みしてから買出しに出かけたらシエスタになっていた。おまけに祭りにもシエスタがあるのでビックリ。出店も大きな布を掛けてシエスタ中だ、日本じゃ有り得ない。

 シエスタが終わる5時過ぎに改めて出かけていくと、伝説の橋の方が賑やかなので、これはもしや伝説の決闘の再現があるのかと心躍らせながら行って見ると、確かにそんな雰囲気が感じられる。橋の下には特設観覧席があって、多くの人たちがコスプレ姿で見物している。広場を挟んだ観覧席の反対側にも人垣ができていて、どうやらあの広場でイベントが行われるようだ。橋の上も人人人で、ここで見るより下に下りて行ったほうが良く見えそうなので降りる階段を見つけて柵の近くに陣取る。イベントが始まりそうな時間になったら私の前にロープが張り直され、その前にいた人たちは全員がどかされてしまったので、一番前で見られることになってしまった。なんて幸運。隣の女の子は背中が大きく開いた服を着ていて、その背中に「不良少女」と入れ墨してあったので笑った。意味がわかってるのかな?

 イベントはコスプレした人達が音楽を鳴らしながら延々と行進し、最後に伝説の騎士が馬に乗って登場だ。広場で武器を使った騎士の腕前の披露が始まって、失敗すると爆笑で成功すると歓声が沸いた。悪役もちゃんと用意してあって、その騎士が何か悪さをすると一斉にブーイングが起きるのもお約束か。かれこれ2時間ほど堪能して、そろそろ夕飯を食べたいと思い、7時半に買い物しながらアルベルゲに戻ることにする。目星を付けておいた店にはトマトやヨーグルトがなかったけど、ビール2と明日用のオレンジジュースとピクルスを買っておく。これじゃ夕飯には役不足なので、出店の屋台で売っていた茹でた大きなジャガイモの上にチーズ、ハム、コーン、人参をトッピングして貰って5ユーロ。こういうのもたまには良いかも、お祭りだし。アルベルゲに戻って中庭のベンチで早速食べてみたら温かくて旨いし、屋台の食べ物ということでちょっとウキウキ感がある。祭りなので特別なのだろうが、アルベルゲの中に一般の人達がやたらと入ってきてキョロキョロしている。ここはイベント会場じゃなくて我々が泊まっている宿なんだけどなぁ。


奇特な男性

 歩き26日目の6月8日。7時過ぎにオルビゴを出発。昨日はあれだけ通りに掛かっていた祭り用の旗や横断幕が今朝はきれいに片付いている。昨日の祭りは数日間のあいだの一日じゃなくて、昨日だけの祭りだったのかも知れない。だとしたら、あんな素晴らしいイベントが偶然見られて凄いラッキーだったのだ。
 山の中に石作りの立派なテーブルが二つ置いてあり、ひとつには既に男性二人組みが食事してるので空ている方で自分も朝飯にしようとしたら何やら声が掛かってきた。ジョイナスと言う単語が聞き取れたので、一緒に食べようと言ってくれてるのが分かる。早速荷物ごと移動して一緒に食べさせてもらうことにする。イスラエルの若者で、中間地点のレオンからスタートしたそうだ。英語ネイティブでない人の英語は聞き取りやすい。でも、もともとが片言英語しか喋れないので分からないときは何度も聞きなおすことになるのは仕方ないが。そんなときのアイスピークイングリッシュベリーリトルは私の定番だ。

 丘越え途中で無料サービスをしている奇特な男性がいた。スタンプも置いてあり、せっせと大きなスイカを切ってはやってくる巡礼者に大判振舞いしている。屋台にはその他にバナナやチェリーなどの果物やジュースも沢山並んでいる。一応、寄付用の入れ物も置いてあるが、それがちっとも主張してないのだ。エライ人がいるもんだと感心し、少しばかりコインを入れる。その人が素手でノコギリを使って木を切り出したので思い出し、2、3回使っただけの皮手袋をドネティーボ(寄付)と言って渡したら嬉しそうにしてくれたので良かった。手袋も必要と思い日本から新品を持参してきたが、余り必要ないのが分かったから、使わないのに持ち歩くのも嫌だったので山の中で仙人みたいなアルベルゲを運営しているトマスのアルベルゲに行ったら上げようと思っていたのだが、調度いい人がその前にいて良かった。
 12時少し前にアストルガのアルベルゲに到着。凄く立派でホテルみたいな入口だがここも5ユーロ。片方が口うるさいコリアのおっさん二人組とイーデンに再会する。いつものルーチンをこなしてから買い物に出かけて行くがさっぱり見つからず、かなり歩いてしまった所に大きなスーパーマーケットを発見する。今までで最大のスーパーだ。パン売り場には専門の人がいて注文すると袋に入れて値段のバーコードを貼り付けてくれる。野菜売り場も同様に、トマトなら数個を野菜専門の人に渡すと秤で計って値段を決めバーコードを貼り付けてくれる。あとで知ったが、スペインもフランスもみんな同じスタイルだった。日本みたいに1個幾らだと大きさが気になるが目方だから小さいのも大きいのも同じ値段なので、こっちの方式の方が正しい気がする。ここでチーズを買ってみたが、味なしだった。インスタントスープも買ったので、その中に入れて食べたらまずまずになったので良かったが、あの味なし豆腐みたいなチーズをモソモソ食べるのは頂けない。運良くスープの素も買っておいたので運が良かった。
 アルベルゲでスイスの姉弟にも再会する。相変わらず姉ちゃんが甲斐甲斐しく弟の面倒をみてやっている。本当にエライ姉ちゃんだ。次ぐ日のバルで会った時に向こうからブエン・カミーノと挨拶してくれた以降はパッタリ会うことはなくなってしまったが、時々思い出しては、あの姉弟は無事にゴール出来たかなぁと気に掛けていた。


 歩き27日目の6月9日。アストルガを7時ちょっとに出発する。昨日見られなかったガウディの司教館に入りたかったが、入り口の案内には11時オープンと書いてあるので諦める。スペイン人、もっと仕事しろよ。
 アストルガは大きな街で、アルベルゲの収容人数も80名と相当な数だ。そこから出発する人も相当な数なので、ほぼ一斉に出発する朝の順礼道は行列のようになっているのでちょっと楽しい。時間とともに徐々にその列は長くなるので密集することもなくなり、それぞれのタイミングに合った町や村のアルベルゲに宿泊するのを繰り返しながら、全員が何百キロ先のコンポステラを目指し歩いていく。
 最初の村で、昨日買っておいたハム入りのパンと一昨日のジュースで朝飯にする。ハム入りのパンが意外なほど旨いので、見つけたらまた買いたい。今日はどこまで進むか考えてなかったので、ここで作戦タイムだ。明日は峠越えがあるので、どうしてもその手前の村に泊まるのが良策だ。

 と言うことで、今日の宿ラバナル・デル・カミーノの公営アルベルゲに12時半到着。すぐ前に5ユーロと大きく書かれた私営があるのだが、やっぱり公営があるなら公営に泊まりたい。宿泊費が安いことも勿論だが、公営には歴史があってその地を代表しているように思うから。だが、この旅で一番オンボロのアルベルゲだった。帰ってきてからBSで放送された平岳大のスペイン巡礼の録画を見返して見たら、隣の私営に泊まっていて快適のようだった。それが分かっていたら同じ値段なんだから私営に泊まったんだが、残念〜。
 村の2箇所で買い物をしてアルベルゲの外のベンチで酒盛りする。建物からかなり離れているのでWiFiは届かないだろうと思ったらちゃんと届く。建物はオンボロだけどWiFiは強力のようだ。空模様が変だ、雨にならなくちゃいいが。洗濯物干してるし、明日の山越えが心配だ。
 夜、食堂のテーブルで一人黙々と紙巻タバコを作っているブラジル人がいたので見せてもらい写真も撮らせてもらう。スキンヘッドの渋いおっさんなので紙巻き姿がとても絵になる。映画やテレビでは見た事あるが、本物は初めて見た。

雨の山越え

 歩き28日目の6月10日。朝からバシャバシャと音を立てて雨が降り続いていてカミナリも鳴っている。嫌だなぁ〜、今日は山越えなのに最悪。でもみんな果敢に雨の中を出発していく。小雨になってくれないかなと、一番遅い出発にする。みんなが出て行ったあとでバナナと小さなパンを食べてたら、ブラジル人グループが食べ残していったパンと牛乳がテーブルに残っていたので、それも食べさせて貰う。これで歩くためのスタミナがが大分補充されただろうし、雨降りの山の中では腰を下ろして食べられるような場所は皆無だろうから、これはとても幸運な気がする。歩き旅では食事は歩き続けるためのエネルギーを補充するのだという意識が強く、持ち歩く食糧も全て歩き続けるために必要な追加エネルギーだ。食べ物がない時にエネルギーが尽きると大変なことになるのは経験から分かっているので、いつも持ち歩く食料には気を使うようになった。
 荷物をビニール袋に入れなおし、カッパの上下を着込んで自分も7時前に出発する。小さな村なので、すぐ山の中に入っていく。周りには誰いないし、ピカッと光るとビクッとする。金属のスティック2本持ってるし、建物もないし、山の中の雷は本当に怖い。ピカッガラガラドッシャーン。
 暫く歩いたら舗装道路と巡礼路が並行している所に出たので、こんな時は舗装路を歩いてしまえ。舗装路はアップダウンも少ないし、何より道が水浸しになっていないところが良い。山の中の泥道巡礼路では靴がすぐ水浸しになってしまい、中でガバガバと音がするようになってしまうのだ。靴がびしょ濡れになると後が大変。と言っても、舗装路をずっと歩ける訳もなし、遅かれ早かれ水浸しになってしまうのだが。

 フォンセバドンと言う、以前は廃村だった村に到着した。まったく無人の村だったが、巡礼が沢山通るのでアルベルゲが1軒2軒と出来てきて、それによって徐々に復活していくような村だ。村のメインストリートは泥沼の濁流状態だったので、水の流れが少しでも少ない所を選びながら上へ上へと歩いていく。一軒のバル兼私営アルベルゲに巡礼が集まっていたので地獄に仏と入って行く。もちろん、カッパを着て入って行く訳には行かないので外で脱いで、ザックの上に掛けておく。中では暖炉に赤々と薪が燃え盛っているので、びしょ濡れになった背中を乾かすために背を向けておくが、ずっと居座る訳にもいかないので焼け石に水だ。バルなので只で休む訳にはいかないからカフェコンレチェを1杯飲んでおく。1ユーロと安いのだが、ポットから自分で入れて飲む方式だった。またカッパを着なおして雨の中を上へと進んでいく。

 自分的にはこの道のハイライトと思っている鉄の十字架までやってきた。巡礼者は故郷から石を運んでここに積み上げる伝統がローマ時代から続いているらしい。自分はと言うと日本から石ころを持ってくる気にはならないいので、下に転がっていた石を中心の柱の所まで上げただけにしておく。
 マンハリンのトマスのアルベルゲが見えてきた。ここも来たかったひとつだが、雨雨雨なので喜びもいまいちと言うところだ。中に入っていくと、じめじめした土間にイーデンと新しく道連れになったおばさんが居て、ほどなく二人とも出発していった。寄付して飲めるお茶を貰って飲んでいると、なにやら始まりだした。ここのオーナーのトマスはテンプル騎士団の末裔らしく、毎日時間になるとテンプル騎士団の儀式をやっているのだ。ネットで知っていたので、お、やったと思った。剣を振りかざして行われる儀式を目の前で見られたのでラッキーだった。

 途中、立ったままバナナを2本食べて、12時半ころエルアセボの村の手前でイーデンと連れの女性に追いつく。私営のアルベルゲで値段を聞いて、7ユーロと言うので泊まることに決めたらしい。他を探すのも面倒なので自分もあとに続く。レストランの中を通って宿泊する場所まで行かなくてはならないので、余りいい感じではないが、部屋まで行ったら他の巡礼者もいたし普通のアルベルゲと同じだったので、これなら落ち着いていいやと思った。いつものルーチンのあと、いつものように雑貨屋で買って宿で食べるという訳には行かないようだ。食堂がないし、小さな村には雑貨屋もなさそう。仕方ないので併設のレストランで定食を食べる。10ユーロ。イーデンがもう一人のおばさんと三人で洗濯乾燥をシェアしようと提案してきたので乗る。他人の女性と一緒に洗濯というのも初めてだが、女性側から提案してくるので問題ないだろう。7ユーロの料金の内、洗濯物がいっぱいあるというイーデンが3で、私ともう一人のおばさんが2ユーロずつになった。雨降りの日だったので洗濯物は乾かないから、これはありがたかった。


四国遍路へつづく