Ejemplo ?
歩き37日目の6月19日リゴンデ。イーデンとイタリアチームは暗いうちに出発していった。私は6時ころに起きだしてキッチンでのんびりスープを作り、昨日の残りのパンを浮かべて朝飯にする。今日も一番遅い部類の7時45に出発する。少し朝霧があり寒いくらいで清々しい。朝飯が質素過ぎたので途中の村の小奇麗なバルでカフェコンレチェとサンチャゴケーキを食べる。2.5ユーロ。サンチャゴケーキと言うのは、この辺りで良く目にするようになったお菓子で、素人目には薄くて丸いカステラに白い粉砂糖を振りまいてサンチャゴのシンボル、剣十字をかたどった「だけ」のケーキかな?バルではそれを切り分けて出してくれる。味は・・・普通。
パレスデレイに泊まろうかと思っていたけど、早い時間に着いてしまったので通過。ここの教会でスタンプを貰って中に居た神父さんらしき人と喋っている内に「Ejemplo Ejemplo(エフェンプロ)」と盛んに言うのだがさっぱり意味がわからないのでネットが使えるところで翻訳してみようとノートに書いてもらう。あとで調べたら「実例、手本」と言うスペイン語だった。会話の中で日本から来たとか、カトリックだと言ってたので褒め言葉だったのかも知れない。日本に帰ってきてから気づいたが、スペイン語の先生マルセラが良く「ポリフェンプロ」と言ってたのを思い出した。「たとえば」と言う意味だと思ったから近い意味だったようだ。この旅では英語・スペイン語の両方が入った辞書を持ってこようかどうしようか迷い狂ったが、タブレットならWiFiさえあれば翻訳もできるし他の機能もいっぱい付いているのでタブレットだけ持ってきたが、たまーにこうして辞書があると便利な場面がある。しかし、どちらもそこそこの重量があるので、ふたつは持って来たくなかったのだ。
通りかかった村のバルで果物も売っていたので買っておく。オレンジ、プラム、サクランボでたったの1.5ユーロ。日本円なら210円だ(1ユーロ140円)。ここで日本人の青年に話し掛けられる。韓国人かと思ってたが、日本のカミノデ・サンチャゴ友の会発行の見慣れた本をかざしてニコニコしているのですぐ分かった。糸数(いとかず)さん27歳。名前から分かるとおり沖縄の出身だ。久しぶりの日本人なので色々お喋りを楽しむ。糸数さんは歩き始めてまだ日が浅いらしく、道行く巡礼たちと気軽に挨拶を交わす私を珍しそうに見入っていた。そうか、まだ知らない巡礼と挨拶をするのが照れ臭い時期なんだな、初々しいやつめ。
いま買ったものを早速食べてみると、プラムと思ってたけど良く分からない物だった。硬さはリンゴ、味は桃に似ているけど形はプラムだ。歩きながらプラムもどきとサクランボを食べご機嫌。オレンジはアルベルゲまで持っていくことにする。
2時ころ、メリダのアルベルゲに到着。6ユーロ、外観も中も近代的なアルベルゲだ。昨日、夕飯を一緒にしたイタリアチームが既にチェックインしていたが部屋は隣りだった。イーデンは一緒に居ないので、歩くのが遅いイーデンは置いかれて別の町に泊まったか?
ここのシャワーも扉がないタイプだった。男女別だから問題ないが、ひとの旅日記ではミックスでも扉がないアルベルゲがあったそうだ。さすがにそんな所では私でさえドキドキものだろう。洗濯も済ませて買い物に出かけるとやっぱりシエスタで店は閉まっているが、一軒だけ近くのパン屋が開いていたので買い物ができる。パン屋なので諦めていたビールもあったのでホッとする。エステージャビール2、ヨーグルト2に大きなクロワッサン。直径6cmもあるチョリソーを4cm切ってもらったが、これはスライスして貰わなかったので食べるのに一苦労した。硬いし酸っぱいし余りに歯ごたえがあるので途中で同じ店まで行きビールを2本追加してしまい、今日は贅沢に4本も飲んでしまった。
タブレット大活躍
メリダは町としたら大きな町で、アルベルゲは分かりづらかったがタブレットのお陰ですんなり見つかった。タブレットの地図はスペインの小さな町でも細かく自分の位置を示してくれるので大助かりだ。位置だけじゃなく、タブレットを向けた方向に青い矢印が向き、タブレットを回転させるのに伴って矢印もグルグル回るからコンパスいらずだ。このGPS機能だけでもタブレットの価格分の仕事をしてくれてる気になる。実は、このタブレットの位置情報というのはWiFiがない所では機能しないと思い込んでいたのだ。でも、こっちに来てからもしやと思って位置情報をオンにしたら驚くことにスペインでも自分のいるところを地図上で示したので棚からボタモチの気持ちになった。結果から考えると位置情報というのはカーナビと同じように宇宙からのGPS電波をキャッチして得るのでネット環境は関係なかったのだ。理に叶った答えだが、それが分かるまではずっと使えないものと思い込んでいたのだから勿体ないことをした。分かってからは、数限りなくタブレットのお世話になり、迷ったらすぐタブレットを出し地図アプリを開けば問題解決だった。もうもの凄く便利。スペインのあと行くかも知れないポルトガルと、必ず行くフランスでも大活躍してくれることだろう。
コンポステラ100km手前のサリアからスタートする日本人サンチャゴツアーに出会えるかと期待していたが、まったく会うことはなかった。ネットではこの手の募集を時折目にするのだが、参加者が少なすぎて持ち上がらないツアーなのかな?価格も8日間程で50万60万と目玉が飛び出しそうな値段だ。私の今回の旅は65日間で飛行機代も含めて50万も掛かっていないだろう。それは取りも直さず毎日の倹約意識のたまものなのだが。
近くの教会の見物をしていたら、道端のテーブルに座っているイタリアチームとイーデンを発見。自分も混ざってしばしのあいだ楽しくお喋りをしていたらウェイトレスさんが全員の注文を取りにきたので、誰も何も注文せずにテーブルだけ借りてお喋りだけしていたようだ。イタリアチームで英語が話せるのは一人だけらしく、他の二人とはイタリア語で喋っているようだ。私に限って言えば、どっちみち英語もロクに話せないのだから大した問題ではない。身振り手振りと笑顔の方がここでは重要だ。イーデンは公営の騒がしさが嫌らしく私営のアルベルゲにチェックインしたそうだ。大きなカット西瓜が入った袋を下げていて、メローン(西瓜のこと)が大好きらしい。あのサイズを一人で食べるのか、腹を壊さなくちゃいいが。
ゴールのコンポステラが近くなってきたので、ここメリデからコンポステラ手前のモンテドゴソを最終宿泊地に設定すると大体みんな予定が同じになるので残りの4日間は一緒に過ごせそうな予感がする。既に買い物が済んだイーデンと別れ、イタリアチームとスーパーへ買い物に行き、同じアルベルゲに帰って行く。
バルのテラス席
歩き38日目の6月20日。朝飯にアルベルゲの食堂で昨日買っておいたベーグルを食べてみたら、不味いの何のって食べられたモンじゃない。一緒に買った甘いヨーグルトがあったので、それをたっぷり挟んで食べてみるが、やっぱりパン自体が不味いので焼け石に水だった。失敗した〜。
8時出発、最低出発時間更新だ。7時前に出発して行ったイーデンを10時20に追い越し、少し行った先のバルに寄ったらイタリアチームも休んでいたので近くのテーブルでリモンソーダ1.1ユーロを飲む。すぐイーデンもやって来てイタリアチームと出発していった。挨拶の言葉はもちろん、チャオだ。今日の宿があるアルスアはここから3kmなので一時間以内に着く、楽勝だ。
11時半に大きな町のアルスアに到着。昼飯が近いので巡礼路上にあるバルではアチコチにバックパックを下ろした巡礼達が通りのテラス席で寛いでいて、その脇を通りながらオラとかブエンカミーノと言いながら歩いていく。スペインでは例外なくバルでは前の通りにまでテーブルとイスを出して飲み食いさせていて、また欧米の人たちは店内よりも外で寛ぐのが好きなのだ。日本でこれをやったらたちまち行政指導を受けるだろう。テーブルどころか、自販機が道路にはみ出すと言って日本全国一斉に薄型自販機に交換したのが記憶に新しい。テラス席は慣れると開放感があり、薄暗い店内よりずっと寛ぐことができるのが分かったので、私も外のテーブルが空いていればいつも利用していた。
まもなくアルスアの公営アルベルゲ前に到着。受付は13時なので先に食料を買出しして近くの公園のベンチで飲みだす。1ユーロのチーズは旨くないが、同じ1ユーロでも生ハムはいつも旨い。隣のベンチでも巡礼の二人組がビールを飲んでいる。アルベルゲがオープンするまで日陰でのんびりと過ごして、これも中々いい時間だ。二人組の隣にあるゴミ箱に空き缶を捨てたら「ツーッ!」と驚いていたが、ビールは1回2本がセットなので驚かれる方が意外なんだが。
オープン10分前になったのでアルベルゲの入り口まで行ってみると、フランスおじさんが一人で待っていた。英語はまったく話さないのでボンジューと言う以外は話すことがない。フランス人はプライドが高く、英語が話せるのにわざとフランス語しか話さないと言う話を良く聞くが、英語を本当に話せないフランス人というのは多いようだ。イーデンとイタリアチーム3人組もどこかで時間待ちをしていたらしく、すぐにやってくる。仲良くなったみんなに和風マリア様のカードを上げる。
部屋に入るとイーデンのベッドが上段と分かり「オーノー」と声を上げている。本場のオーノーは新鮮な響きがある。ドイツ人だけど。私のベッドは下段なので交換してやろうかと思ったが、自分でホスピタレロに交渉して下に代えてもらっていた。さすが。イタリアチームは二つ離れたベッドに落ち着いた。3人組なので誰かは必ず上段になるようだが嫌でもなさそうだ。イタリアチームのマンマミーアも聞いてみたいな。
ここのアルベルゲもキッチンはあっても調理器具や食器を置いてないので料理することができない。州の方針なのか、そうなのかガリシア州。調理ができないので買ってきたパンを手で割ってハム・チーズを挟みボカディージョにして食べ、ミニトマトとサクランボも全部食べる。何しろパンが旨いのでボカディージョはいつも旨い。平地になってきたからか、季節的なものなのか、暑さが半端でなくなってきてもの凄く暑く、その時間に外を歩くと焼き殺されるようだ。一日の内で一番暑くなる2時から5時までシエスタやりたくなるのが分かる気がする。
イーデンが夕飯を誘ってくれたので近くのバルに食べに行く。オムレツとサラダのプレートとビールで6.5ユーロ。同じ値段なら店から買う食糧の方がずっと実力あるが、このくらいなら外食も我慢のしどころだ。帰りに明日の行動食を買って帰る。アルベルゲにはWiFiがないけどこのバルにはWiFiが飛んでいたので登録させてもらい、店を出てからもネットで遊ぶことができた。帰りにイーデンがデジカメを出して撮ってくれる。デジカメ持ってたんだイーデン、初めて見た。
プルポ
歩き39日目の6月21日。アルスアを7時10に出発する。イタリアチームは6時前に出発して、イーデンも6時半に出て行ったが、私はマイペースでいつものゆっくり時間だ。町を抜けた森の中にテント泊の巡礼者がいた。道端に帽子を置いて、中には呼び水なのか、小銭が入っていて細かくびっしりと書かれたドキュメントも置いてある。こんなの前にも見たことあったので、同じ人かな?前にも書いたが、準備もロクにせずに巡礼を開始して路銀が足りなくなったら道行く人にすがろうという根性に賛成できないので金なんか入れる気にならない。
歩くのが遅いイーデンを途中で追い越す。次の村のバルでカフェコンレチェだけ頼み、持参のパンとヨーグルトで朝飯にする。この方式はとても気に入っていて、安上がりの上に腹もそこそこになるし栄養だって物によってはちゃんと取れる。バルの外壁には雀が沢山住み着いていて、客が落とすパンくずを常食にしているようだ。人がいても怖がる様子もなく近くまでやって来てついばんでいる。近くのテーブルでは二人の巡礼がビールを飲み出したが、私は泊まる宿がある町に辿り着くまでは飲まないことに決めているのだ。
今日の宿に予定していたサンタイレネには10時に着いてしまった。さすがに早すぎるので通過してしまう。イーデンを追い越すときに、今日はサンタイレネに泊まると告げていたのでイーデンがそれを当てにして泊まろうとすると困るんだな。イーデンも早い時間に通り越してくれるといいのだが、嘘をついてしまうかとになるかとちょっと心配になる。10時だったけど、アルベルゲ前のベンチにはバックパックを下ろして寛いでいる女性が一人いたので、もう開くのを待っているようだ。今からだと3時間も待つだろうが、宿泊のタイミングは人それぞれだ。
12時、ペドロウソの公営アルベルゲに到着。自分の前に3人の巡礼が既に開くのを待っていた。まだオープンまでには大分時間があったので、ザックは入り口に置いて近くのバルまで行きビールの大ジョッキを飲ませてもらう。2.5ユーロ。ここんちのWiFiをタブレットに登録させてもらっておく。今日のアルベルゲもWiFiは無い情報なので、だとしたらこの後もこのバルで接続させてもらおう。
時間になったのでチェックイン、6ユーロだ。今日のアルベルゲのベッドは希少なシングルだった。屋根の傾斜の関係で、天井が低くなる端っこのベッドだけが2段でなくシングルなのでラッキーと喜んだのだが、太陽が移動してきたら私のベッドには日の光が燦燦と当たるようになってしまった。これは寝るときに熱々のベッドになってるなぁと考えて、上にありったけの衣類を並べておく。隣のシングルベッドにはブラジルのお姉さんが入ってきた。ブラジリアンは国旗をよくザックに付けているのですぐ分かる。顔がキツそうだけど話すと気さくな人なのが分かってよかった。このアルベルゲはキッチンが使えたので、ブラジルのお姉さんも良く分からない料理をマメに作っていた。
いつものルーチンのあと買い物に出て行くが、まだ1時50とシエスタ前なのに店がみんな閉まっている。スペイン人仕事しなさ過ぎだよ。通りにプルポ(たこ)の店が何軒かあるので、ここがプルポで有名な町なのかな?この後の村は山の中のモンテドゴソになってしまうので、タコを食べるなら最後のチャンスかも知れない。来る前からプルポは食べたいと思っていたのでプルポを売り物にしている店に入る。プルポ10ユーロとビール大2.5ユーロはいいけど、パンとコーヒーを別料金で取るってどういうことだよ。普通、定食にはワインとパンに2つの皿が出て、最後にデザートまで付いて10ユーロなのに、ここんちで14ユーロも取られてしまった。どうも観光客値段でぼられた気がして気分が悪い。
5時半を過ぎたので目をつけておいた店まで建物の日陰を伝いながら歩いていくが、2軒ともとうにシエスタは終わっている時間なのに開いていないところで気が付いた。今日はドミンゴ(日曜)だったのだ。ガーン。だからシエスタが始まる2時前にも関わらず店じまいしていたのだった。アルベルゲのすぐ隣にスーパーがあったのだが、潰れたようなので残念と思っていたが、あれもドミンゴなので休みだったのか。シエスタもドミンゴも旅人にはとても迷惑。衰退する筈だよスペイン。
アルベルゲに戻ったらスペイン人のおっさんが、前にどこそこで見たと話し掛けてきたがまったく覚えがない。そこでは幾らか会話を交わしたらしく、再会を喜んでくれているのだが申し訳ないくらい記憶にない。以前にも欧米人のおばさんが、どこそこで見たと話し掛けてくれたことがあったが、東洋人は珍しいから覚えてくれるのだろうが、こちらは逆なのでさっぱり記憶にないので誠に申し訳ない気がする。夕方、昼にビールを飲んだバルの近くまで行って本日最後のメールチェックをする。通りの反対側でも問題なく接続することが出来てとても便利。
心配の種の靴底をチェックしたら、とうとうエアーマックスのエアー部分まで浸食されてきて指で押すとプニュプニュしている。もう明日にも穴があいて空気が抜け出すのが目に見えているので苦肉の策を思い浮かべる。その方法はこうだ。ポンフェラーダで交換したペラペラサンダルの先端部分をナイフで切り取った物を、持参の強力接着剤で貼り付けて穴を塞いでしまえ作戦。早速実行に移したところ、もしかしたらこれなら持つかも知れないと気を良くする。実際に歩いてみて結果を期待しよう。
旅は道ずれ
歩き40日目の6月22日。ペドロウソを7時10に出発する。町の交差点を横切るときに、別方向から横切ってきたイタリアチームと交差点内で偶然遭遇。あらまぁだ。次の村にあったバルの壁に良く目立つオレンジ色のザックカバーを掛けたイーデンのバックパックが立て掛けてあるのを発見したので中に入っていく。カフェコンレチェを頼んで外のテーブルに座ったところでイタリアチームもすぐやって来た。ひとつのテーブルを囲んで、また5人で盛り上る。3人にはノートに名前を書いてもらった。アンジェリカは一番のひょうきん者で「サヨナラ」と言う日本語だけ知っていて、会うといつも「サヨナラ」と挨拶するので、こっちもサヨナラと答えてやる。ニコレッタはネパール語で書かれた不思議な文字のTシャツをいつも着ていて、色違いを数枚持っている。ルイゼッラは北川景子似の昔は凄い美人だったと思われる女性。アンジェリカはアンジー、ニコレッタはニコ、ルイゼッラはルイと縮めて呼び合っていた。元は同級生らしく三人は同い年、みんな仲良しだ。スタートは200km離れたポンフェラーダで、ルイの子供が以前ポンフェラーダから巡礼を開始してコンポステラまで歩いたので、それをなぞっての巡礼のようだ。片言英語の私だけど、知っている単語を拾って推測するとこんな感じだ。往年のイタリア俳優の名前を挙げてみると、みんな良く知っている。ソフィア・ローレン、クラウディア・カルディナーレ、ジーナ・ロロブリジタにマルチェロ・マストロヤンニで意味もなく大盛り上がり。ジュリオラ・チンクエッティも凄い受けて、私は「ノノギター、ノノギター」しか歌えないのだが、続けてアンジェリカが身振りも加えて楽しく全部歌ってくれた。アンジェリカ面白すぎ。
これから後は、ゴールまでの二日間をいつも5人でツルンデ歩くことに自然になる。短時間はあっても、ずっと一緒に歩くのは40日目で初めてだ。言葉が不自由な自分にもこうやって一緒に歩く友達ができたんだなぁと嬉しさが込み上げてくる。
ピッコロと言うのはイタリア語で小さいと言う意味だと教えてもらった。そう言えばドラゴンボールに登場するピッコロ大魔王と言うのがいたなと思い出して言ってみたら、アンジェリカがドラゴンボールを知っていて、カメハメハーッと一緒にやって大笑いする。アンジェリカは英語は話せないけど、いつもみんなを笑わせてくれる。
モンテドゴソが近くなってきて、遠くにローマ教皇がやってきた記念のモニュメントが見え出した。映画「サンチャゴへの道」でも登場したモニュメントだ。近くまで来ると結構な大きさで、やっとここまで来れた感激から写真をいっぱい撮る。イーデンだけが丘の上にあるモニュメントの近くに来ないので疲れているのかな?ここから数百メートルのところに500人も収容できる巨大なアルベルゲがある。前まで行ってみると13時受付開始で現在11時。巨大アルベルゲの中心にある大きなレストランも13時と書いてあるので日陰のベンチでどうしようかと相談する。
ここでパリからずっと歩いてきたというおばちゃんと会う。パリのサンジャック塔がサンチャゴ巡礼の出発地になっている話は聞いていたけど実際に歩いている人と会うのは初めてだ。私が歩いてきた倍以上の1700kmはあるんじゃなかろうか。細い体なのに凄いパワーがあるもんだ。私とおばちゃんが喋っている所を誰かが撮ってくれたが、写真で見ると一丁前に英語を喋っているように見えるがまったくの片言で、喋ると言うより手話に近い。トホホ。
上の方には私営のアルベルゲがあってレストランもあると言うので言ってみることにする。ニコレッタだけはいいと言うのでザックはニコに見てもらって4人で行ってみる。だがそこも開店は同じ13時だった。イーデンの提案で、こっちにチェックインしてランチとディナーもこっちで食べることになったようだ。私はモンテドゴソの巨大アルベルゲに泊まるのが夢だったので(安いし)、一人で別行動にして夕飯だけ一緒に食べることを約束して一時別れる。
アルベルゲに戻ってチェックインの列に並んでいると、日本人二人に会う。一人は巡礼4回もしているおっさんで、ホスピタレロの資格まで取得して免状を持ち歩いていた。その割りに無心論者で少しだけブッディスタと訳の分からないことを言っている。何でカミノに興味を持ったのか質問されたが、カトリックと言うだけで解決だから簡単便利。本当にこのことを説明し出したら、誰でも一言では済まないだろう。前にもYさんから同じ質問されたけど、尋常でない旅をしているので他の人の動機にも関心があるようだ。おっさんはスタンプだけ欲しくて開くのを待っているので、アルベルゲには泊まらないそうだ。私ともう一人の日本人女性で半分コしてと長いパンをくれて去っていったが、おっさんから得たポルトガルの情報はためになった。ポルトガルはスペインより物価が安いしアルベルゲもあるそうだ。駅にはインフォメーションもあるだろうし、宿や観光案内の地図も貰えるから心配いらないような事を言っていた。私の日にちは間違いなく余るので、そしたらポルトガル第二の都市、ポルトに行ってみようかなと言う気になってきた。
チェックイン後はいつものルーチンをこなして買い物だ。ゴソには前にも来たと言う日本人のおっさんから店の場所も聞いていて、下に1km行けばあると紹介してくれたが、タブレットの地図では上にはもっと近くにあるらしいのでタブレットを信じて行ってみると確かに小さな雑貨屋があった。タブレット様々だ。雑貨屋にはいつもの密封された生ハムはなくて、ブロックから3枚切ってもらったところ、たったの0.2ユーロだった。てことは、1ユーロ買えば15枚も食べられるってことか!いくら小さい塊と言っても、生ハムが1枚10円以下かよ、こんな安いとは想像もできなかった。今まではスライスしてもらっても合計で支払っていたので生ハムだけの値段が分からなかったのだ。日本では高級な生ハムだけどスペインではもの凄く安いのが分かった。1リットルビールその他を買ってアルベルゲでゆで卵を6個作る。それを見ていたホスピタレロが塩をコップに半分も持ってきてくれるがそんなにいらないジェスチャーをしたら「ペリグリノ(巡礼者)」と言ったので、他の人も使うからと言うことだった。ポテチは油を取りたかったから買ったのだが、日本では油を摂取したいと思うことは一度もないので、これはまた面白い感覚なんだなぁと思った。人間も油切れってあるんだな。
歓喜の丘
イーデンとイタリアチームとの夕飯が6時の約束なので5時に上のレストラン併設のアルベルゲに行ってみる。イタリアチームが外のテーブルで何やら楽しそうにしていたので仲間に入れてもらう。イタリア語だし言葉はさっぱり分からないが仲間意識があるので側にいてとても楽しい。やがてイーデンも加わり、みんなでゴソの歓喜の丘に行ってみる。この丘の上に立つと、長い距離を歩いてきた巡礼は初めてコンポステラの尖塔を目にすることが出来て歓喜の声を上げるという丘だ。みんなで写真をいっぱい撮りっこする。日本にいるとき、この丘をグーグルの衛星地図で見ていたほど憧れた歓喜の丘に今いるんだなぁと感無量だ。近くには「日本スペイン交流400周年」の石碑が建っていた。なんでこんなとこに?KYもいいとこだ。
6時過ぎからレストランでディナー。みんなは定食を食べるようだが、ニコレッタが気を使ってくれて安めのプレート料理もあるよと教えてくれる。でもみんなと同じ定食を注文し、水かワインかの選択では自分だけワインだった。こっちでは定食に付き物の飲み物選択は必ずワインか水なので、ワインを飲めない人は凄く損な気がするがそれは日本人だからか?日本ではこういうときの定番はウーロン茶だが、ウーロン茶は無いとしてもせめてワインかジュースという選択はないのかな?その水も頼めば日本のようにコップに無料で出てくる訳ではなく、必ずボトルに入ったミネラル・ウォーター有料が出てくるので、こっちの人の感覚としたらワインも水も同じなのかも知れない。今回も楽しい夕食になった。みんなイーデンがいるお陰で感謝だ。明日はみんなで6時半にスタートしようと決め、21時に自分だけ別のアルベルゲに戻っていく。
コンポステラ到着へ
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