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2007年8月前半

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07.8.15 (wed)
PLANET X「QUANTUM」DEREK SHERINIANとVIRGIL DONATIがタッグを組んだインストユニットの07年作。ゲストGtにALLAN HOLDSWORTH参加。全曲フュージョン的なインスト曲で、正直僕の琴線に触れるメロディやフレーズは殆ど感じられず、テクニック的には凄い事をやってるんでしょうが、音楽として楽しめるかと聞かれると微妙・・・。

SYMPHONY X「PARADISE LOST」アメリカのネオクラシカル・プログレッシヴ・パワーメタルの07年最新作です。彼等のアルバムも、初期の煌めきが曇りかけた凡作「TWILIGHT IN OLYMPUS」以降ご無沙汰だったんですが、会心作との噂に期待しつつ最新作を聴いてみました。

「FINAL FANATASY」のラスボス戦のBGMに使われそうな雰囲気すらある、緊張感を高めるシンフォニックでスリリングなイントロ"OCULUS EX INFERNI"から、そのままハイテンションを維持しつつ"SET THE WORLD ON FIRE(THE LIE OF LIES)"へ。タイトに引き締められたパワーメタリックな力強いヴァースから、彼等ならではの刻印がしっかりと感じられるメロディアスなサビメロ〜ネオクラシカルでテクニカルなインストパートへの展開する楽曲。"DOMINATION"は、荘厳な賛美歌風のSEをバックにテクニカルなGtリフとKeyフレーズが絡み合い、パワフルに歌い上げるVoを乗せて適度なスピード感でドライヴするダイナミックな楽曲。

"THE SERPENT'S KISS"は振幅の大きなガッツィーなGtリフを変拍子に乗せたプログレッシヴな趣の強いスタイルですが、繊細なヴァースから徐々に盛り上げて大仰なサビメロを歌い上げるVoラインも聴き所。ソロパートではフュージョン的な雰囲気すらも内包しています。タイトルトラック"PARADISE LOST"はリリカルなピアノの調べに乗せて艶やかでメランコリックなメロディを聴かせる楽曲ですが、アダルトで渋みのあるAOR的な歌メロや仄かに潜ませたアメリカン・プログレハード的なアレンジセンスに懐の深さを感じさせます。

和んだムードを一気に切り裂く、スリリングでハイテンションかつスピーディーなイントロを持つ"EVE OF SEDUCTION"は、超テクニカルなバッキングとミスマッチの妙を感じさせるヴァースでの味のある歌い回しや、ハイパーな超絶技巧をサラリと聴かせるソロパート等、プログレッシヴ・パワーメタルの醍醐味が詰まった楽曲。サビメロではライヴでのシンガロングを彷彿とさせるフレーズもあって超燃えます。HM界において「BABYLON」とか「EGYPT」いう単語が入った楽曲は大体エスニックなムードを漂わせると相場が決まってますが、"THE WALLS OF BABYLON"もご多分に漏れず、どこかエスニックな趣を感じさせるフレーズを散りばめた、テクニカルで長尺のイントロを持つプログレッシヴな楽曲。ただ単にテクニカルなだけでなく、"PAINKILLER"なんかを彷彿させるハイテンションなヴァースからスケールの大きなサビメロへ展開するあたりなどは、キャッチーさすら感じさせます。

"SEVEN"は彼等本来の魅力であるネオクラシカル・スピードメタルを思う存分堪能出来る強力なキラーチューン。疾走感満点のスピーディーな楽曲に乗せてネオクラシカルなフレーズを堂々と歌い上げるサビメロは思わずヘドバン必至の煽情力。"THE SACRIFICE"は、ピアノアレンジが耳を惹く叙情味溢れるメロウなバラードで、ネオクラシカルな気品を感じさせる歌メロが秀逸。ラストのアコギの余韻を残した締めも美しい。本編ラストの大作"REVELATION(DIVUS PENNAE EX TRAGOEDIA)"は、エピック的な勇壮さを持つイントロのGtフレーズから、緊張感溢れるGtリフが支配しつつも随所にリリカルなピアノフレーズを挿入したパワーメタリックな楽曲に突入し、大仰なサビメロ、シンフォニックでテクニカルなインストパートと場面展開しながら劇的な終焉を迎える力作。

ボーナストラックは"THE SACRIFICE"とイントロの"OCULUS EX INFERNI"の習作であろうデモ2曲で、オマケ以外の何者でもない楽曲。

初期の破天荒なスリルと懐の深いアレンジセンスを感じさせる円熟味が上手く同居した、プログレ・パワーメタラーとしての貫禄を感じさせる1枚に仕上がっている印象で、聴く前に抱いていた期待に完璧に応える充実作です。個人的に惜しむらくは、ソロのフレーズとかが余りにもハイセンスで、逆に煽情力に欠けるような気がする事。ベタな叙情フレーズがもっと欲しいところですが、野暮さ皆無の楽曲の中では浮いてしまうんでしょうね・・・。いや、でも傑作。

DREAM THEATER「SYSTEMATIC CHAOS」DREAM THEATERの、レーベル移籍しての07年最新作。"IN THE PRESENCE OF ENEMIES PT.1"は、元々1曲だった楽曲を半分に分けてアルバムのオープニングとエンディングに配置したという事らしく、この曲はその前半。組曲形式になっていて、第一部の"PRELUDE"は「TRAIN OF THOUGHT」を思わせるメタリックなGtリフと様々な音色を駆使するKeyによるインストバトルから、雄大で叙情的なメインテーマに移行する彼等らしいインスト。第二部の"RESURRECTION"は、第一部の主題を引き継ぐようなダークなメインリフに「METROPOLIS PT.2」の楽曲を思わせる歌メロを乗せた密度の濃いミドル。後半へ続く・・・的な余韻を残して終了し、リリカルなピアノのイントロをフィーチュアした"FORSAKEN"へ。バックにテクニカルなプレイを潜ませながらも全体的な印象はパワーバラード風なメロウな感触のこの曲は、サビメロやGtソロでの情感たっぷりの泣きセンスが秀逸。

"CONSTANT MOTION"は、再び「TRAIN OF THOUGHT」的なリフ主体のヘヴィな楽曲ですが、METALLICAっぽいパートがちょっと露骨過ぎて妙な雰囲気。JAMES LABRIEがこういう歌唱する時って、良い子が粋がって悪ぶってるような気恥ずかしさが伴うので、いっその事シンガーもう一人入れりゃ良いんじゃないかと思ってしまう。中間部のインストパートはアグレッシヴで格好良いです。"THE DARK ETERNAL NIGHT"もダーク&ヘヴィな路線で、チューニングを下げたグルーヴィーなヘヴィリフやザラついたエフェクトをかけたVoなんかに、最近のヘヴィロック的なアプローチを感じます。中間部はお家芸的なスリリングなインストで、ヘヴィ&ファストなGtリフやトリッキーなKeyアレンジが目まぐるしく展開していきます。

"REPENTANCE"は、本人達も「PINK FLOYDがメロウなOPETHに出会ったような感じ」と語っている通り、OPETHのメロウサイドをそのまま彷彿させるような鬱々とした叙情が浮遊するメランコリックな楽曲。後半の語り部分のゲストにOPETHのMIKAEL AKERFELDT、PAIN OF SALVATIONのDANIEL GILDENLOW、MARILLIONのSTEVE HOGARTH等が参加しているのは、正に楽曲のイメージそのまんまという感じ。イントロのKeyフレーズを聴いただけで思わず失笑してしまうくらい MUSEそのまんまな"PROPHETS OF WAR"は、MUSEのスペーシーで壮大な雰囲気をモロに彷彿とさせるコンパクトでアッパーな楽曲。JAMES LABRIEもファルセットを多用してMATTHEW BELLAMYのキモ歌唱を真似ています。

元ネタが露骨な2曲に続いては大作2連発で、"THE MINISTRY OF LOST SOULS"は、これも「METROPOLIS PT.2」を思わせる楽曲で、瑞々しい憂いを含んだメロが大きなスケールでゆったりと流れる前半が徐々に悲壮感を帯びて盛り上がって行き、ヘヴィでテクニカルなパートに雪崩れ込み、ラストは前半の叙情メロに回帰して行くというドラマティックな展開の楽曲。ラストの"IN THE PRESENCE OF ENEMIES PT.2"は1曲目の続きで、丁度1曲目のラストのパートから繋がったイントロで始まります。第三部"HERETIC"はダークなムードの中を彷徨うようにメロディが切々と漂うムーディーな楽曲。「HEY!HEY!」のシンガロングと共にテンポアップする第四部"THE SLAUGHTER OF THE DAMNED"は、勿論メロディは違いますが、何となくMETALLICAの"CREEPING DEATH"に似たような展開と構造を持ったアグレッシヴな楽曲。大仰なサビメロで盛り上げた後、第五部のテクニカルなインスト"THE RECKONING"に続きます。GtリフとトリッキーなKeyの絡みが既にこのアルバムの中でさえ頻発な雰囲気で、お馴染みすぎて新鮮味に欠けるかも・・・。そして、最後の第六部"SALVATION"は、壮大なシンセをバックにJAMES LABRIEが堂々と歌い上げて大団円を迎えます。

最近の彼等の魅力を随所にコラージュしたような今作は、共に名作である「TRAIN OF THOUGHT」と「METROPOLIS PT.2」を足してスケールダウンさせたような印象を受けます。ずっと彼等のファンだった人には非常に物足りない出来になっているような気もするのですが、初めて彼等の作品に触れる人に取っては、「これを聴いてどこにも引っかからないならDREAM THEATERを聴くのは止めた方が良い」というようなお試し盤的な感じもあり、レーベルを移籍して心機一転した彼等の、新規リスナー開拓のためのプロモーション盤なのか?と穿った見方をしてしまったり。また、ポジティヴな言い方をすれば、消化しきれているかどうかは微妙ですが、新しい影響を貪欲に取り込むオープンな姿勢も存分に感じられ、次作あたりでの新たな次元での名作の予兆を何となく感じさせる過渡期的なアルバムになっている、んでしょうかね・・・?

07.8.14 (tue)
PARADISE LOST「IN REQUIEM」イギリスの大御所ゴシックメタル07年作。今までの集大成的な傑作であった前作の内容を引き継いだ作風となっていますが、今作ではGtリフが前面に出てきて、ヘヴィネスに焦点を当てたスタイルになっているような。その分、特にヴァースでの歌メロが醸し出すメランコリシティは前作にやや劣るかな・・・。寂寥感を煽るKeyアレンジ、サビメロやソロパートでの憂いのフレーズは健在ですので、今作は重さと叙情メロのコントラストを堪能できる1枚と言えるのかもしれず、そういう意味では、より「ICON」や「DRACONIAN TIMES」の頃の路線を継承したという事なのかも。"ASH & DEBRIS"や"THE ENEMY"等は、攻撃性や重さが強調された楽曲と言えるでしょうし、"PRAISE LAMENTED SHADE"や"UNREACHABLE"等は、前作の路線をそのまま引き継いだような陰りのあるメランコリックなメロディが映える楽曲、"NEVER FOR THE DAMNED"、"REQUIEM"、"FALLEN CHILDREN"等は、ヘヴィネスとメランコリシティが交錯するドラマティックな楽曲という感じでしょうか。ボーナストラックの"SONS OF PERDITION"は何かMETALLICAの「S.T」に入ってそうな楽曲で、もしかしたらMETALLICAをもっとダークでメランコリックにしたらPARADISE LOSTになるのか?なんて思ったりして。

FREDERIKSEN-DENANDER「BAPTISM BY FIRE」FERGIE FREDERIKSENとTOMMY DENANDERがタッグを組んだ新ユニットの07年作。この組み合わせから想像されるサウンドは、HRファンがTOTOに求める音そのものなんですが、正に想像通りの楽曲が詰まったアルバムに仕上がっています。適度にエッジのあるGtと程良い彩りを加えるKeyアレンジを施した楽曲は、基本的にはAORというよりは産業ロックと呼んだ方がしっくり来る雰囲気。タイトなGtリフとリリカルなKeyアレンジに哀愁の歌メロが絡む理想的な産業チューン"LET HIM GO"、秀逸すぎる哀愁のサビメロからドラマティックなブレイクを挟んで熱いGtソロへの展開が素晴らしい"SILVER LINING"、力強いGtリフと高揚感のある歌メロが気持ち良く絡む"CROSSING OVER"、軽快なメロディアスハードチューン"MY SAVING GRACE"、RICKY PHILLIPSとの共作の色が出たブルーズ色のある"CAN'T GET ENOUGH"、スリリングなフックのあるGtフレーズが軽やかに駆け抜ける"NEVER TRY TO LOVE AGAIN"、ライトなアーバンAORにややハードなGtを絡めたような"KEEP LIGHT ON"、モロにTOTOを思わせるタイトでムーディなAOR"LEFT WITH NOTHING"等々、楽曲のクオリティは最上級。

07.8.13 (mon)
MAGNUM「PRINCESS ALICE AND THE BROKEN ARROW」イギリスのベテランHRの07年作。復活後のアルバムは、どれも結構地味な雰囲気ながらも、彼等ならではの風格ある楽曲を生み出し続けていましたが、このアルバムでもその路線に変わりはありません。むしろ、より原点回帰的な往年のサウンドを意識したのか、アコースティックを活かしたオーガニックなアレンジになっています。楽曲の内容も、正にMAGNUMという感じの仄かな郷愁と威厳に満ちた威風堂々たる楽曲が揃っており、ドラマティックな展開と雄々しいサビメロの大作"WHEN WE WERE YOUNGER"、ヘヴィなGtリフがうねる重厚な"OUT OF THE SHADOWS"、流麗なメロディラインが秀逸な"DRAGONS ARE REAL"、BOB CATLEYの歌唱が映える美しいバラード"INSIDE YOUR HEAD"、キャッチーで力強い躍動感のある"BE STRONG"、哀愁メロハー的な"YOUR LIES"、ハートウォーミングで希望に満ちたメロディの"DESPERATE TIMES"、ラストを飾る最強の悲哀に満ちたメロディを誇る名曲"YOU'LL NEVER SLEEP"等、少なくとも復活後の3作の中では最高の出来映え。特にラストの"YOU'LL NEVER SLEEP"はMAGNUMの名曲の中でもトップクラスに位置されるくらいのキラーチューン。日本盤のこの後のボートラは蛇足以外の何者でも無い。

07.8.12 (sun)
SHAKRA「INFECTED」スイスの正統派メロディアスハード07年作。前作で新機軸として導入したゴシカルなムードは今作では殆ど感じられず、彼等の本質でもあるタフなGtリフと熱いメロディを軸に据えた直球HRをプレイしています。適度に隙間のあるコンパクトなGtリフの小気味良くドライヴ感とキャッチーなサビメロが高揚感をもたらすオープニングチューン"MAKE YOUR DAY"、ハードロッキンなリフが躍動する格好良いアップテンポ"THE ONE"、グルーヴ感満点のGtリフとキャッチーな哀愁を帯びたサビメロが秀逸なミドル"PLAYING WITH FIRE"、メランコリックなトーンを感じさせるGtリフが印象的な憂いを帯びたミドル"DANCE WITH MADNESS"、ハートウォーミングなメロディをフィーチュアしたBON JOVI的なバラード"LOVE WILL FIND A WAY"、初期GOTTHARD的なエッジのある骨太のリフが主導するHRチューンですが彼等ならではの哀愁の効いた魅力的なサビメロを持った"THE CONQUEST"、彼等にしては珍しいポジティヴな爽快感を持ったサビメロの"TODAY NO NEWS"、メランコリックなメロディを切々と綴る"ACHERON'S WAY"等、王道ド真ん中の潔いHRチューン揃い。ややバラエティに欠ける感は無きにしもあらずですが、僕は大好きだ!

HAVEN「THE ROAD」アメリカの女性Voを擁するメロディックロック01年作。MATT SORUMがDrで参加しています。Voを前面に出した軽快なアレンジの楽曲。雰囲気は良い感じで、たまに良いメロディも顔を出すんですが、Voの音程も時折怪しいし、GtとKeyのアンサンブルもイマイチな感じで、ドイツの低レベルなB級メロハーに似たイナタさが漂っています。これはちょっとキツいな・・・。

07.8.6 - 11 (mon - sat)
NAGLFAR「HARVEST」スウェーデンのメロディック・ブラック07年作。オープニングの"INTO THE BLACK"はファストチューンではなく、不穏なムードを満載にしたミドル/スロー。ゆったりとしたメロディアスなGtフレーズが印象的。続く"BREATHE THROUGH ME"はいきなりブラストビートと醜悪な咆哮が乱舞するファストチューンですが、サビメロのバックのGtフレーズやソロパートで挿入されるメロディアスなパートがフックとなっています。"THE MIRRORS OF MY SOUL"は、本人達は「ロック的」とコメントしていますが、割と分かりやすいGtリフを主軸に据えたミドルテンポ。

"ODIUM GENERIS HUMANI"は、全編で激烈なブラストビートと2ビートのドラミングが交錯するブルータルな楽曲で、叙情フレーズを含んだゆったりとしたGtソロとのコントラストが鮮烈。絶叫が谺する不気味なイントロで始まる"THE DARKEST ROAD"はメロディアスなGtリフをフィーチュアした楽曲で、サビはシンガロングを誘発しそうなキャッチーさが感じられます。"WAY OF THE ROPE"もGtリフに仄かなメロディを含んでおり、ブラストビートとリフが絡みつつ突進して行く様がメロディックブラックの旨味を感じさせます。展開もドラマティックで、終盤に大きな盛り上がりを演出しています。"NECROSPIRITUS"はボーナストラックで、不穏なGtフレーズが静かに奏でられ、そのフレーズをメインリフにした突進型のアップテンポに突入します。

"PLUTONIUM REVERIES"はストレートな疾走パートとブラストビート、メランコリックなGtフレーズをフィーチュアした叙情パートがドラマティックに絡み合った楽曲。"FEEDING MOLOCH"はダークなピアノによるイントロから、ブルータリティとメランコリシティが細かく場面展開を繰り返すダイナミックな楽曲で、Gtの叙情フレーズが胸を打ちます。ラストのタイトルトラック"HARVEST"は、このアルバム中最強の叙情を有した慟哭のGtフレーズが全編で舞い踊る劇的なスローチューン。

コンスタントに良作をリリースしている彼等に託された期待に、まずは順当に応えられるアルバムになっていると思います。ブルータリティと叙情メロディのバランスも上手くまとまっており、過不足の無い印象を受けますが、その分突出した何かを感じる事が出来ないのも確かではあります。DISSECTIONの後継者たるに相応しい風格を持った傑作「SHEOL」の充実振りと比べてしまうと、どうしても物足りなさは感じてしまいます・・・。

SONATA ARCTICA「UNIA」フィンランドのメロディック・スピードメタル07年最新作。最近ではメロスピからの脱却を図っていたようですが・・・。

"IN BLACK AND WHITE"はキラキラしたKeyとザクザクしたGtリフが適度なスピード感でドライヴするアップテンポで、サビメロでは彼等らしい魅力が感じられます。"PAID IN FULL"も速度を控えめにしたアップテンポで、ヴァースの切ない歌メロが良い感じ。"FOR THE SAKE OF REVENGE"は重苦しいアレンジに乗せた物悲しいヴァースメロから大らかなサビメロへ展開するミドル。

"IT WON'T FADE"は重厚なGtリフにアグレッシヴなVoを乗せたヴァースと彼等らしい流麗なサビメロのコントラストを聴かせたミドル。中間部では様々なパート、フレーズが入り組んだ、かなり複雑な展開を見せます。"UNDER YOUR TREE"は透明感のある憂いのメロディを前面に出したミドル〜スローで、凝った展開が多いアルバムで、歌メロだけで聴かせる楽曲になっています。

"CALEB"は彼等にしてはヘヴィなGtリフが続く前半からオーケストレーションを施した盛り上がりを見せる後半へダイナミックに展開する重厚感のある楽曲。"THE VICE"は何となくBLIND GUARDIANを思わせるクワイア多用のミドルで、どこがサビメロなのか全く分からないくらい小刻みに展開する楽曲。"MY DREAM'S BUT A DROP OF FUEL FOR A NIGHTMARE"も一聴しただけでは把握できない複雑な展開を見せるプログレッシヴな楽曲で、様々なフレーズがゴージャスなアレンジと共に次から次へと展開していきます。

"THE HARVEST"はヘヴィなGtリフとクワイアを伴った歌メロがリズミックにギャロップする変わった雰囲気の楽曲。"THE WORLDS FORGOTTEN,THE WORDS FORBIDDEN"は抑制の効いた重苦しいバラードタイプの楽曲ですが、これから盛り上がるか?と思うところで尻切れトンボ的に終わってしまうのが煮え切らない印象を与えます。"FLY WITH THE BLACK SWAN"はブルージーなスライドGtをフィーチュアしたアレンジや中盤の強引な展開等、考え過ぎて本人達もワケが分からなくなってしまったような気がする楽曲。本編ラストの"GOOD ENOUGH IS GOOD ENOUGH"は美しいストリングスに切ない歌メロを乗せた、ある意味従来の彼等らしさを一番感じさせる繊細なバラード。

ボーナストラックは3曲。"THEY FOLLOW"は、彼等らしい憂いを帯びたメロディのパワーバラード。"OUT IN THE FIELDS"はGARY MOOREの名曲のカヴァーで、ぶっちゃけこの曲が一番格好良かったりして・・・。最後は"MY DREAM'S BUT A〜"のインストバージョンで、どうでも良いオマケ。

という事で、煽情力満点の歌メロと抜群の疾走感で一世を風靡したSONATA ARCTICAですが、成熟と共にマンネリ脱却を図るために凝ったアレンジを導入して本来の魅力がスポイルされてしまったBLIND GUARDIANの衰退振りを忠実にトレースしているような、嫌な予感がヒシヒシと感じられるアルバムに仕上がっています。疾走感を失ったのはまあ良いとして、前半はメロハー的な楽しみ方のできる佳曲だと思えるのですが、後半はアレンジに凝り過ぎてメロディが全く印象に残らない楽曲ばかりで、ちょっとキツい・・・。まあ歌メロ自体はブラガに比べると高いレベルをキープできそうな雰囲気は感じられるので、今は過渡期と考えるとして、今回の凝ったアレンジと彼等の魅力である美しくも悲しいメロディを上手く融合させた楽曲を生み出してくれる事を期待しましょうか・・・。

07.8.5 (sun)
MADINA LAKE「FROM THEM,THROUGH US,TO YOU」アメリカのスクリーモ・・・になるんでしょうか、4ピースのロックバンドの07年デビュー作です。何となくジャケとバンド名からMALICE MIZERを連想したりもしていたんですが、果たして・・・。

ストリングスと儚げなピアノが絡むどことなくレトロなインスト"THE AUSPICE"で始まった時には、「本当にMALICE MIZERっぽい?」なんて思ってしまったんですが、続く"HERE I STAND"が一音目からMY CHEMICAL ROMANCEそのまんまだったんで、「ああ、そっちのフォロワーね・・・」と。キャッチーなメロが疾走し、大らかなサビメロで盛り上げるという「THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE」の時のMCRの楽曲の印象に非常に近く、クオリティも高いです。続く"IN ANOTHER LIFE"も性急なスピード感で突っ走るヴァースと、雄大なサビメロのコントラストを効かせたMCR的な楽曲。

"ADALIA"もポジティヴで聴きやすいメロディが軽快に駆け抜ける楽曲で、ブリッジでの儚げなピアノアレンジがフックになっています。"HOUSE OF CARDS"は冷ややかな音色のKeyと陰りのある歌メロが絡みつつダイナミックな展開を見せる楽曲で、特に好きな曲。"NOW OR NEVER"はサビメロでのスケールの大きなシンガロングがアリーナロック的。

"PANDORA"はジャラジャラした軽いGtにファルセットを活かした歌メロを乗せた楽曲で、ニヒルなムードを感じさせるフックのある1曲。"STARS"はストリングスを絡めつつ徐々に盛り上がるヴァースから、ヘヴィリフとシンガロングが炸裂するサビメロで盛り上がるという展開の楽曲。"RIVER OF PEOPLE"はゴシック的な気怠くダークなムードが支配するミドルで、個人的にはこの曲が一番好き。サビメロも秀逸。

"ONE LAST KISS"はヘヴィロック的なGtリフにキャッチーな歌メロを乗せたHOOBASTANKを思わせる楽曲。"ME VS. WORLD"もHOOBASTANKっぽいヘヴィリフ+大らかなサビメロという雰囲気。"MORNING SADNESS"は繊細なアコギに絡む穏やかなヴァースからスケールの大きなサビメロに展開する曲。本編ラストの"TRUE LOVE"はグルーヴ感を感じさせるヘヴィリフが躍動するヴァースからキャッチーなサビメロへの流れが、これもHOOBASTANKを彷彿とさせる楽曲。

ボーナストラックが2曲。"AGAIN AND AGAIN"は爽やかなメロディを軽やかに聴かせるポップな楽曲。"ESCAPE FROM HERE"も爽快なメロディが疾走感タップリに駆け抜ける楽曲で、どちらも本編収録曲と遜色無い出来。

という感じで、前半がMY CHEMICAL ROMANCE、中盤に少しゴシック風味が入り、後半はHOOBASTANK風、みたいな感じで、売れ線バンドを節操無く良いトコ取りして、センス良くまとめたという雰囲気のアルバム。数年後も残っているかどうか非常に微妙な気はしますが、とりあえずこのアルバムのクオリティは高く、MCRの前作が好きな僕のような人なら楽しめそうな一枚です。ちょっと無難にまとまり過ぎている印象もありますが・・・。

RUSH「SNAKES & ARROWS」カナダの大御所プログレHRトリオの07年最新作です。彼等のアルバムをリアルタイムに聴くのは、実は今作が初めてだったりします。産業/メロハー好きの僕からすると、彼等のアルバムで好きなのは、シンセを大胆に導入しコンパクト&キャッチー化を図った「GRACE UNDER PRESSURE」や「POWER WINDOWS」だったりするんですが、最近はどんなサウンドになってるんでしょうか。

ダイナミックなGtリフとDrのイントロから始まる"FAR CRY"はメインリフが紛れも無くRUSHの音。RUSHの聴き所の一つでもある、多彩なBラインがハッキリと聴き取れる絶妙のサウンドバランス。ハードなアレンジにポップなメロディを乗せた「A FAREWELL TO KINGS」期の雰囲気に近い楽曲。"ARMOR AND SWORD"はアコギとやや重めのダークなリフが絡み合うグルーヴ感のあるミドル。引きずり込まれるような求心力のあるダイナミックな展開。"WORKIN' THEM ANGELS"は、軽快でポジティヴなメロディのヴァースと、重くグルーヴのあるブリッジ〜コーラスが交錯するミドルで、この曲でもアコースティック系の楽器がフックを生んでいます。

"THE LARGER BOWL"はアコギ中心の軽やかなアレンジに比較的起伏の少ない歌メロを乗せた淡いトーンの楽曲で、叙情的なGtソロが良い彩りを与えています。"SPINDRIFT"は不穏でダークなトーンのアンサンブルに危機感を煽るようなテンションのVoを乗せたRUSH流ダークプログレハードといった趣。そのムードを継承するのがプログレッシヴなインストの"THE MAIN MONKEY BUSINESS"で、ムーディでアトモスフェリックな序盤から官能的なGtソロを挟んでアグレッシヴな中盤を迎え、終盤はまた序盤同様ミステリアスなムードで幕を閉じるというダイナミックな構成の楽曲。

"THE WAY THE WIND BLOWS"は珍しくブルージーなGtフレーズがリードする楽曲ですが、繊細なアコギを交えた大らかなサビメロに展開するあたりは一筋縄では行かない感じ。"HOPE"はアコギ1本での短いインストですが、どことなくエスニックなムードが漂う美しくエモーショナルな小品。"FAITHLESS"はアコギ、Bライン、ストリングスが絡み合ってゆったりとした雄大な旋律を奏でる楽曲。"BRAVEST FACE"もアコギメインの淡々としたヴァースからサビメロで盛り上がる展開の楽曲で、やや陰りを帯びたトーンのメロディが印象的。

"GOOD NEWS FIRST"は色々と凝ったアレンジを施しつつも基本は歌メロ中心のミドルで、ダウナーなムードのヴァースから開放的なサビメロに展開する楽曲。"MALIGNANT NARCISSISM"も短いインストですが、"HOPE"とは対照的にダイナミックかつテクニカルに躍動する楽曲。ラストの"WE HOLD ON"はラストを締めるに相応しいダイナミックな展開とメロディアスな歌メロを共存させたハードチューン。

「COUNTERPARTS」期のダークで重めのGt中心のスタイルに、オーガニックでアコースティックな瑞々しさと歌メロの芳醇さを加えたような作風という印象でしょうか。節目毎に音楽性を変遷させ、そのスタイルの中で必ず名作を生み出して来た彼等ですが、このアルバムは今期の名作として語り継がれそうな雰囲気を感じさせる一枚に仕上がっています。

FALL OUT BOY「TAKE THIS TO YOUR GRAVE」アメリカのメロディック・パンク03年作。躍動感のあるリズムと小気味良いGtカッティングに乗せて、ポップで朗らかな歌メロを乗せた楽曲。確かにキャッチーでノリノリで気持ち良さそうな楽曲ではあるんですが、個人的には全く心に響いてきません・・・。やっぱ俺はこのジャンル、ダメだ。

LACUNA COIL「COMALIES」イタリアの男女ゴシックメタル02年3rd。最新作から遡って聴いてみましたが、このアルバムでは次作で顕著になるエスニックなメロディは表面化しておらず、あくまでPARADISE LOST的なヘヴィリフとダークでメランコリックなメロディを組み合わせた、ある意味典型的なゴシックメタル。そこに加えて彼等ならではのオリジナリティを感じさせている要素は、全体に仄かに漂うアトモスフェリックなKeyが演出する浮遊感と、メインシンガーCHRISTINA SCABBIAの妖艶な歌唱。次作のような明確なアイデンティティが存在するわけでは無いんですが、楽曲スタイルとしては、こっちの方が好みだったりして・・・。男声Voの歌うメロディ聴いてると、本当にPARADISE LOSTっぽいからね。

MIND THE GAP「A ROOM FULL OF CLOUDS」詳細不明ですが、メンバーの名前から判断すると、恐らく北欧のハイテクAOR90年作。柔和なKeyアレンジを施した、まったりとしたAOR。大らかで広がりのあるメロディは、耳あたりは良いものの、全体的には今一つフックに欠ける印象。"EVERYDAY IS A MONDAY"の雄大なサビメロ、"EVERY SINGLE STEP"での軽やかなメロディ等、部分的に光るものは感じられます。

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