HIM「VENUS DOOM」フィンランドの自称LOVE METALの07年6th。ヘヴィな作風になるとの噂を聞いてはいましたが、オープニングの太く重いGtサウンドを聴いて分かる通り、過去最高にヘヴィなアルバムになっています。 タイトルトラック"VENUS DOOM"は、ボトムの効いたヘヴィなGtリフが小気味良くドライヴするアップテンポで、甘美な憂いを帯びたサビメロが極上。中盤でのドゥーミーな展開が印象的であり、このアルバムの作風を物語っているとも言えます。"LOVE IN COLD BLOOD"は、ズ太いGtリフからメロウでディープなヴァースに移行し、キャッチーなサビメロで盛り上げるという彼等お得意の展開を見せる楽曲。アウトロでのヘヴィなGtソロはこれまでに無い展開。"PASSION'S KILLING FLOOR"は、映画「TRANSFORMERS」のサントラに収録された楽曲で、如何にも彼等らしい憂いを帯びつつもキャッチーなサビメロを持ったアップテンポですが、やはり中盤に非常にドゥーミーな雰囲気のブレイクが入ります。 シングルの"THE KISS OF DAWN"は、甘くポップな楽曲かと思ったら、引きずるようなヘヴィなGtリフが飛び出してきます。ヴァースの歌メロはダークでディープですが、サビメロは流石に甘くメロウで、少しだけポジティヴなムードが感じられます。この曲でもアウトロではヘヴィなGtリフが延々と刻まれます。"SLEEPWALKING PAST HOPE"は、10分近くある大作で、物悲しいピアノによるイントロからダークでスローなGtリフをバックに陰鬱な歌メロを乗せたヴァース、冷ややかなKeyと深い憂いを帯びたサビメロへと展開します。長いGtソロとメロウで浮遊感のあるムーディーなパートを経てブレイクし、一気に疾走感を帯びてワイルドなGtソロを披露した後に、メランコリックなサビメロへ帰還し、ラストはスペーシーでスケールの大きなGtフレーズが浮遊しながらエンディングを迎えるという、彼等にしては珍しくドラマティックで複雑な展開を見せる楽曲です。 "DEAD LOVERS' LANE"は、一転して彼等お得意の、小気味良いドライヴ感のあるタイトなGtリフに、甘くメロウでキャッチーな歌メロを乗せたアップテンポ。"SONG OR SUICIDE"は、1分ちょいのアコースティックでエモーショナルな小品バラード。"BLEED WELL"は、求心力のあるスケールの大きなメインリフが印象的で、サビメロの流れも殊更秀逸なアップテンポ。ラストを飾るのは"CYANIDE SUN"で、重くドゥーミーなGtリフと、ゆったりとしたディープでダークな歌メロが全編を支配する、正にこのアルバムのコンセプトを象徴するような楽曲。 コンスタントにクオリティの高いアルバムをリリースしながらも、少しマンネリ化の気配が見えかけていた彼等ですが、今作のヘヴィ&ドゥーミーなアレンジの導入は、良いアクセントとなって機能しています。「RAZORBLADE ROMANCE」が彼等の最高傑作だという認識は変わりませんが、このアルバムでのステップは多大に評価できます。凄く良い。 |